感想:NHK番組「オックスフォード白熱教室【再放送】」第1回「素数の音楽を聴け」(2014年12月5日(金) 放送)

素数の音楽 (新潮文庫)

 NHK番組「オックスフォード白熱教室」(全4回)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

NHK オックスフォード白熱教室
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/oxford/index.html

 NHK Eテレでの視聴です(放送:毎週金曜 23:00〜23:54)(2014年12月5日〜12月26日)
 ※2013年10月4日〜25日の再放送


■概要

英語圏では最古の大学として、900年以上の歴史と伝統を持つイギリス・オックスフォード大学
世界大学ランキングでは常にトップレベルの名門校である。
現職のキャメロン首相や、サッチャー元首相など、イギリス歴代26人の首相を輩出。
27人のノーベル賞受賞者をはじめ、文学や科学など様々なジャンルで卒業生は歴史に名を残してきた。

この大学で現在、最も有名な人物の一人が、マーカス・デュ・ソートイ教授。
トップクラスの現役数学者でありながら、「数学の本当の姿を知ってもらいたい」と、一般市民に向けて数学の魅力を広める活動に力を入れている。
数学は掛け算を解いたり、割合を計算するためのものではない。
デュ・ソートイ教授の講義は、自然や音楽など身近な切り口から、数学の本質を解き明かしていく。

今回は番組のために用意した全4回の特別講義で、数学の美しく神秘的な世界を紹介する。
世紀の難問「リーマン予想」や、現代数学において極めて重要な「群論」など毎回、難解なテーマも登場するが、デュ・ソートイ教授が軽快な語り口で理解へと導く。
私たちの日常生活と最先端の数学が無縁ではないことを実感できるはず。

第1回 素数の音楽を聴け(初回放送:2013年10月4日(金))


■内容

数学の世界の最も基本的な単位であり、“数の原子”ともいわれる「素数」。
基本単位でありながら、素数はなぜてんでんばらばらに並んでいるのか?
その並びには、意味はあるのか?
数々の数学者が挑んでは敗れたこの謎に迫るのが、数学史上最大の難問「リーマン予想」だ。デュ・ソートイ教授が素数の世界を音楽にたとえて、その不思議の国へ誘う。


 数学者は「物のパターンを探す人」だと考えている。さて、以下の数字の並びで次に来る数は?

 1,3,6,10,15,21,28,■

→36。「三角数」(三角形を構成する点の数)。


 1,1,2,3,5,8,13,21,■

→34。「フィボナッチ数」。直前の二つの数を足した数。


 2,9,10,11,13,16,■

→26。これは宝くじの番号さ。どんな並びにでも意味があるわけではないよ(笑い)


 2,3,5,7,11,13,17,19,■

→23。「素数」。まるで宝くじの番号みたいに規則性がないように見えるよね。



 数学者は素数を「数の原子」と呼ぶ。どんな数も素数の掛け合わせた数で表せるから。


 最初に素数を発見したのは誰だと思う? それは「17年ゼミ」さ。このセミは17年間地中で暮らし、17年目に外に出てきてすぐ死ぬ。17は素数だ。もしセミが9年毎に出てきて、天敵が6年毎なら? 公倍数18年毎にぶつかって食べられてしまう。セミが7年毎になれば? 公倍数は42年になりぶつかる年がずっと減る。セミは天敵にぶつからないように試行錯誤で素数周期で地上に出てくるようにしたんじゃないかな。



 素数の一覧表があれば便利だが、実は素数は無限にある。それを証明したのは古代ギリシャユークリッドだ。彼はまず「素数が有限」の場合を仮定した。

1)例えば、素数が、2から43までしか無いとする。
2)全ての素数を掛け合わせ1を足す。
3)この数は2〜43のどの素数でも割り切れない。つまりこの数自身が素数か、またはリストに無い素数で割り切れるかどちらかだ。つまり、素数が2〜43までしかない、という仮定が間違っていた。
4)ではこの数を素数リストに追加すれば良い? 新しいリストの素数全てを掛け合わせた数に1を足した別の数で同じ問題が起きる。つまり、リストをいくら増やしても、ユークリッドはそれに1を足して同じ問題が起きることを示した。つまり最初の仮定が間違っていた。素数は無限に有る。



 素数を見つけるのは簡単ではない。「素数を掛け合わせて1を足せば素数になるだろう」と思うかもしれない。確かに「2×3×5+1」=「31」でこれは素数だ。ところが「2×3×5×7×11×13+1」は「30031」で、これは素数ではない(59×509)。2から13までの間の素数のどれでも割り切れないが、しかし素数ではないのだ。もし素数を求める方法を見つければ君の名は歴史に残るはずだ。



 素数を求める方程式は未だ見つかっていない。18世紀の大数学者ガウスは、15歳の時、素数と対数の乗った本を手に入れた。彼は「素数をどうやって求めるか」を考えるのでは無く、「ある範囲に素数が何個あるか」という傾向を調べてみた。横軸に数字を取り、素数になるたびに縦軸に一個上がる、「ガウス素数階段」というものを考えた。そして

1〜10の間に、素数は4個、割って2.5(N=10の時、N未満の素数の個数が4、N/素数の個数=2.5)という感じで調べ、

N N/素数の個数
10 2,5
100 4.0
1,000 6.0
10,000 8.1
100,000 10.4
1,000,000 12.7
10,000,000 15.0
100,000,000 17.4
1,000,000,000 19.7
10,000,000,000 22.0

 と、N/素数の個数がおよそ2.3ずつ増えていくことを突き止めた。ガウスは対数を使い、「ガウス素数階段」を大まかに表す式を作った。この式で表すグラフで、どの範囲にどれくらいの素数があるか大まかに解るようになった。これを見つけたのはガウス15歳の時だ。



 おおまか、ではなく、精密に素数の個数を求めるにはどうすればいいのか? それをみつけたのは19世紀の数学者リーマンだ。ここで、音楽の話をすると、音の波は「基本振動」というものがあり、それに倍の振動、倍音や三倍音などがあり、それが組み合わさって波は複雑な形になっていく。リーマンはガウス素数階段に「ゼータ関数のグラフ」を重ね合わせることで、音の波が複雑になるように、素数階段をより正確にしていった。それをみると、23から29の間に素数が無い、ということも解る。これはガウスの式からでは解らないことだ。

 またリーマンは(やはり音楽の比喩で)「横軸に音量、縦軸に周波数」のグラフを作り、いくつかの素数をグラフに書いてみると、全て「周波数は異なっても音量は全て同じ」という事を発見した。リーマンは、素数は全て音量は同じでグラフ上で一直線に並ぶと並ぶと予想した。この直線は「リーマンの臨界線」、この予想を「リーマン予想」という。


 さて、素数は実は身近なところで使われている。例えば「9999911」を二つの素数に分けてほしい(答えは307×32573)。実はインターネットで買い物をする時などカード番号など個人情報を暗号化して通信しているが、その時の暗号はある巨大な数が二つの素数の積である点が鍵となっている。素数を求めるには地道に割っていくしかなく、とてつもない時間と手間がかかる。だから暗号になる。



■感想

 お・も・し・ろ・い!! 勉強としての数学は死ぬほど嫌いで脱落しましたが、こういう数学の面白話を見聞きするのは大好きです。初回からいきなりドストライクでした。