感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第11話「カビ」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第11話 カビ EL MUND GIRA

■あらすじ

EP11 カビ
メキシコからの不法入国者の町で、顔面が腐食した女性の変死体が発見。住民は轟音が鳴り響き、黄色い雨が降ってきたといい、伝説の吸血鬼チュパカブラの仕業だと恐れる。

 お題は「未知の細菌」。


 メキシコからの不法移民が暮らす村で、ある日、爆発音や閃光の後に黄色い雨が降り、直後マリアという女性が顔が腐ったような姿で死んでいるのが見つかる。モルダーは宇宙人の犯行と考えて調査にやってくるが、村の住人たちは伝説の怪物「チュパカブラ」の仕業だと噂していた。村ではマリアを巡って兄ソレダットと弟エラディオが三角関係にあり、エラディオは姿をくらましていたため、スカリーは単純な三角関係のもつれによる殺人だと推測する。


 スカリーはマリアの死体を検視し、マリアが無害なはずのコウジカビの異常繁殖で死んだことを突き止める。エラディオの体からは、カビを異常繁殖させる酵素が分泌されており、彼が触れた人間は次々と無害な筈の菌が体中に繁殖して死んでしまうらしい。モルダーは謎の爆発や閃光は隕石のせいで、黄色い雨とは隕石に含まれていた地球外の菌ではないかと考える。エラディオは酵素を生産する菌の保菌者になったものの、酵素を打ち消す体質で本人は死なずにいるらしかった。


 ソレダッドはエラディオをマリア殺しの犯人と信じ、復讐のためエラディオを殺そうとするが、その時にはエラディオはもう人間とは思えない姿に成り果てていた。その後検疫チームが村を隔離し、菌の拡大は防がれたが、二人がその後どうなったのかは解らず、モルダーたちは捜査を打ち切るしかなかった。メキシコ人たちは、二人のその後について嘘とも本当ともわからない話を広めていた。最後、怪物化したエラディオとソレダッドが夜道を歩いているシーンで〆。


監督 : タッカー・ゲイツ
脚本 : ジョン・シバン


■感想

 隕石によって地球にやってきた菌のせいで肉体が変質していく、というB級SFホラーテイスト満載のストーリー。1980年代のオムニバスホラー映画「クリープショー」の一つに似たような話があったのを連想した(ちなみに、映画のこの話は、なんと作家のスティーブン・キングが主演)。


 今回の事実上の主役がメキシコ人青年エラディオ。偶然によって触れる人間を全て殺してしまう力を身につけてしまい、さらに菌のせいで肉体がどんどん怪物化していく、という運命を辿り哀れを誘う。X-ファイルでは、同様の突然変異的な人間たちでも、大抵力を利用して欲望のままに殺人を行なうような連中ばかりなので、エラディオの様なキャラクターはきわめて異色である。


 しかし、スカリーも危惧していたが、地球外の菌の保菌者であるエラディオを野放しにしたままで良いのだろうか。モルダーは「居ても見えない」などと言って捜査終了を正当化していたが、これは人類絶滅の危機レベルの問題だと思うのだが……


 さて、このエピソードは、劇中のメキシコ語で喋るシーンは英語の字幕が入るが、その字幕の日本語翻訳が無いため、英語に弱い視聴者はいちいち画面を止めて自力で読み取る必要があった。会話のためさほど難しい文章では無く「オレは殺していない」「メキシコに戻りたい」程度の内容だったが、それでも日本語訳が無いというのは商品として問題ではなかろうか。


 サブタイトル「EL MUND GIRA」はスペイン語で、英語に直すと「The World Turns」という意味となる。『世界の回転』と翻訳したいが、それでも作品との繋がりが全くわからない難解な題名である。



■一言メモ

 移民帰化局に捕まっていた人間の名前を聞いて、モルダーが全員偽名だというシーンが有るが、元ネタは以下の通り。

ホセ・フェリシアノ→プエルトリコグラミー賞歌手
フアン・バルデスコロンビアコーヒー生産者連合会のイメージキャラクター
セサール・チャベス→メキシコ人プロボクサー
プラシド・ドミンゴ→三大テノール歌手の一人
エリック・エストラーダ→俳優。「白バイ野郎ジョン&パンチ」のパンチ役で有名。