感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第15話「魂のない肉体」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第15話 魂のない肉体 KADDISH


■あらすじ

EP15 魂のない肉体
ユダヤ系男性が射殺された。犯人は現場から監視カメラのテープだけを盗んでいた。犯人の1人と思われる青年の死体が見つかるが、その死体には死んだ男性の指紋があった。

 お題は「ゴーレム」。


 スーパーを経営するユダヤ系のアイザックが三人組の少年たちに殺害された。店のある地区はユダヤ系への偏見が根強く、また店の商品は盗まれていないことから、犯行は人種差別によるものと考えられた。やがて犯行グループの少年の一人が殺されるが、死体にはアイザックの指紋がついていた。モルダーたちはアイザックの幽霊の仕業に見せかけた、身内による復讐だと考え、捜査を開始した。


 続いて、アイザックの墓の側で犯人グループの一人が死体で見つかる。彼らはアイザックが本当に死んだのか死体を確認しに来たらしい。モルダーは墓の中で、ユダヤの神秘的な出来事を記した書物「創世の書」(セフェル・イェスラ)を発見する。


 その後、犯人グループの最後の一人や、犯人たちを扇動したナチスかぶれの反ユダヤ主義者が次々と殺される。しかも監視カメラの映像には、死んだはずのアイザックの姿が映っていた。モルダーは、このアイザックは、ユダヤの魔術により土から作られた人造人間「ゴーレム」だと推測する。何者かが、セフェル・イェスラの中に記されている魔術を使い、アイザックそっくりのゴーレムを作り出したらしかった。


 実はゴーレムを生み出したのは、アイザックの妻アリエルだった。アリエルはアイザックと入籍は済ませていたが、まだ結婚式を行なっておらず、そのためアイザックに再度会いたかっただけだったが、魔術で生み出されたゴーレムにはまともな理性は存在せず、復讐だけのために動いていたのだった。アリエルはゴーレムのアイザックに結婚指輪を渡した後、魔法を解除し土に戻した。



監督 : キム・マナーズ
脚本 : ハワード・ゴードン


■感想

 X-ファイルには珍しい叙情系のエピソード。しかし人種偏見による殺人云々というテーマが重い上に、怪奇や恐怖といった面より悲しみの方が打ち出されており、個人的評価はいま一つ。


 今回のメインキャラクターは、剣と魔法系ゲームの常連モンスター「ゴーレム」。ユダヤのカバラ教信者が土に生命を与えて生み出す人造人間で、知性などを持たない凶暴な怪物。手の甲に三文字(アレフ+メム+タヴ)で「エメット」(真実)と記して命を与えるが、そこから一文字「アレフ」を消して「メット」(死)にすると土に戻る、というあたりは有名だろう。このエピソードでは、何らかの方法により、故人アイザックそっくりの姿を得た存在として描かれている。


 愛する故人に会いたくて、超常の力に頼るものの、そのために恐ろしい事態が発生する、というのは、恐怖物にまま見られるパターンだが、今回の話の結末を見ると、特に「猿の手」が思い出された。


 モルダーは超常現象なら何でも大好き、と思われがちだが、実際は、宇宙人や未知の生物などには即飛びつくのに、宗教や霊の関わる事態については、突然常識人に戻り、はなから信じない場合が多い。今回もエピソード序盤に、死んだアイザックの指紋が死体に残っていたと聞いて、「幽霊が指紋を残すわけ無いよな」と揶揄調だった。もっとも途中からは伝説の存在ゴーレムについてぐいぐい食いついてくるので、対象が手にとって調べられそうな物質的な存在ならばOK、という主義かもしれない。


 アリエルの父ジェイコブ・バイス役の声優は、業界屈指の大ベテランの大木民夫。悲しみの未亡人アリエルを演じたのは、初代マクロスのヒロインで有名な土井美加でした。


■一言メモ

 サブタイトル「KADDISH」(カディッシュ)とは、ユダヤ教で葬式の際に捧げられる追悼の祈りのこと。