感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第19話「凍結」

X-ファイル シーズン4 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第19話 凍結 SYNCHRONY


■あらすじ

EP19 凍結
マサチューセッツ工科大の研究生が交通事故死。現場にいた友人は、見知らぬ老人にこの事故を予告されたと言う。 そして老人を見た警備員が大学構内で不可解な死を遂げる。

 お題は「凍った死体、タイムトラベル」。


 MIT(マサチューセッツ工科大学)の準教授ジェイソンは、ある夜見知らぬ老人から、知人のルーカスが今夜午後11時46分にバスにはねられて死ぬので助けろ、と忠告される。そしてその予言通りルーカスはバスにはねられて死ぬ。ジェイソンはルーカス殺しの容疑で逮捕され、モルダーはその老人を探すが、老人を捕まえた大学の警備員は体がマイナス9度に凍りついた死体で発見される。ジェイソンの研究は低温生物学だったため、彼への疑いはますます強くなる。


 やがて海外からやって来た学者ヨニチが、警備員と同じような凍りついた死体で発見される。二人の体内からは同じ特殊な化合物が発見される。それはジェイソンと同僚のリサが研究している「冷凍促進剤」だが、その完成には最低でもあと5年はかかるはずだった。リサはヨニチを蘇生させようとするが、その途中でヨニチは体温が異常に上昇した挙句、発火して死ぬ。例の化合物は極めて不安定な物質らしい。モルダーたちはヨニチと接触していた謎の老人の行方を追う。


 リサもまた老人に襲われ、謎の薬剤を注射されかけるが、なぜか見逃される。モルダーたちは老人の宿泊しているホテルをつきとめ、そこでジェイソン・リサ・ヨニチの三人が写った写真を見つける。モルダーは謎の老人こそ「未来からタイムトラベルしてきた老いたジェイソン自身」で、冷凍促進剤の完成を防ぐため、関係者を殺していると推理する。タイムトラベルは理論的には「ワームホール」を通過することで可能となるが、その際発生する高熱と重力に人間は耐えられない。しかし冷凍促進剤はそれを可能にする鍵になるのかもしれなかった。


 リサは老人(=老いたジェイソン)と出会い、冷凍促進剤の完成がタイムトラベルに重要な役割を果たしたと言われるが、次の瞬間薬を打たれて凍り付いてしまう。スカリーはリサをなんとか蘇生させる。一方、老ジェイソンは若いジェイソンの研究所に現われ、研究データを削除していた。老ジェイソンは若い自分に、冷凍促進剤の完成が絶望的な世界を作ってしまったと嘆く。やがてもみ合いになるが、老ジェイソンは体が燃え上がってしまい、若いジェイソンも巻き添えとなってしまう。その後、何故か老人の死体は見つからなかった。事件後、生き残ったリサが冷凍促進剤の研究を続けているシーンで〆。


監督 : ジェームズ・チャールストン
脚本 : ハワード・ゴードン&デビッド・グリーンウォルト


■感想

 評価は◎。


 X-ファイルには珍しい、超常現象では無くSF設定をメインに据えたストーリーで、SFスリラーとしてはシーズン1の第10話「イヴ」以来の傑作となった。視聴前に日本語タイトルを見て、『突然変異で冷凍化能力を持った人間が他人を凍らせていく怪奇ストーリー』だと確信していたが、まさかタイムトラベル物だとは思いもよらなかった。


 今回のテーマはSF物の王道の題材の一つタイムトラベルで、しかも時間改変物。『未来の自分が、歴史を改変するため、現在の自分の前に現われる』という展開は特に斬新さは無いが、そこに凍りついた死体という要素を組み入れることで、話を一ひねりして面白くしている。モルダーたちが事件を追ううちに、タイムトラベルという現実離れした真相が明らかになっていく過程は絶品だった。


 本エピソードでは、タイムトラベルの手段は「ワームホール」を使う、という設定になっている。細かいことは語られないが、老ジェイソンの言葉から「光よりも早い粒子タキオンの発見」と「冷凍化技術」が組み合わさることで実用化出来たらしい。タイムトラベルに冷凍化の技術が必要、という設定はなかなか独創的である。


 しかし、ストーリーに気になる点が無くもなく、サラがホテルに老ジェイソンを訪ねてくるシーンは、サラはどうやってホテルの場所を突き止めたのか、とか、警察は老ジェイソンが戻ってくるのを予期してホテルを見張っているはずでは、などが有ったものの、ストーリーの致命的な矛盾というほどでも無いので、評価を下げるには至らなかった。


 スカリーは、いつも異星人だの未知の生物だのといったモルダーの怪しい説明を疑ってかかるが、今回のモルダーのいつもよりさらに突拍子も無い「タイムトラベル」という説明については、意外にもわりとすんなりと受け入れてしまう。一応、スカリーの大学の卒論がアインシュタイン関連だったから、という説明があったが、それとこれとは全くの別物という気もするが、スカリーとしては納得出来る話だったのだろうか。


 ストーリー途中で無残に焼死してしまうヨニチ博士は、名前だけだと何国人か見当もつかないが、演じているのが日本人俳優ヒロ・カナガワであることから考えて「日本人」という設定らしい。スタッフはもう少し日本人の名前を真面目にリサーチして欲しいと思う役名だった。


 事件後、モルダーはスカリーに、理論的に未来は変えられないと説明していた。また、生き残ったリサは冷凍促進剤の研究を続ける場面で締めくくられており、要するに老ジェイソンが予言した破滅的な未来は、老ジェイソンの努力も虚しく到来してしまうことが暗示された。X-ファイルらしい不気味な余韻を残したラストで、非常に気に入った。


 ジェイソン役の声優は、数々のアニメ作品でも活躍する子安武人氏でした。


※2015/11/17全面改稿。


■一言メモ

 サブタイトル「SYNCHRONY」とは「同調性」という意味。しかし翻訳しても、やはり意味が解らない……