感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第20話「スモール・ポテト」

X-ファイル シーズン4 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第20話 スモール・ポテト SMALL POTATOES

■あらすじ

EP20 スモール・ポテト
小さな町でシッポのある赤ん坊が3カ月で5人も誕生しているという。そのうち4人は同じ産婦人科医での人工授精により生まれていたため、モルダーは精子のすり替えを疑う。

 お題は「変身能力」。


 ある小さな街で三ヶ月の間にしっぽの生えた赤ん坊が5人も連続して生まれたため、モルダーたちが調査にやって来た。赤ん坊の遺伝子を調べると、父親が全員同じとわかり、直後モルダーは偶然の助けで、しっぽを切った跡のある男エド・ブラントを捕まえる。遺伝子を調べてみると、赤ん坊の父親はブラントだと判明した。ブラントには変身能力があり、赤ん坊の母親たちの夫に成りすまして関係を持ったらしい。


 ところがブラントを捕まえようとしたモルダーは、逆にブラントに地下室に閉じ込められ、ブラントはモルダーに変身してスカリーと共に街から立ち去ってしまう。偽モルダーはスカリーと一杯飲んで良い雰囲気になるが、そこに本物のモルダーが踏み込んで来て、ブラントは御用になる。刑務所でブラントは面会に来たモルダーに、もっと人生を楽しみなよ、とかアドバイスしておしまい。



監督 : クリフ・ボウル
脚本 : ヴィンス・ギリガン


■感想

 評価は×。


 X-ファイルでは定番の「突然変異による超能力者の犯罪」物だが、珍しくコメディ系のエピソードとなっている。しかしあいにく、笑いがすべり気味でハズレ回だった。シナリオのヴィンス・ギリガンが過去に担当した作品は、第4話「アンルーヘ」と第10話「ペーハーハート」と、どちらも評価が低い作品なので、今回の出来の悪さも納得である。


 今回の主役は、変身能力を持つ男エドワード・バン・ブラント。小太りで髪も寂しい冴えない中年男だが、遺伝による特異体質により、全身の皮膚の筋肉を自在に操れるため、モルダーを初めとしてどんなハンサムにでも自在に変身可能である。こんな超能力があれば、恐ろしい犯罪が実行できそうだが、本人にはそんな野心は無く、掃除夫として地味に働いている。今回しでかした事は複数の女性への乱暴だが、本人に言わせれば「子供のいない夫婦に赤ん坊が生まれるようにしただけ」と、欲望のままに行動したという事でも無いらしい。X-ファイル史上屈指の怖くない相手である。


 そんなブラントを演じたダリン・モーガンは、シナリオライターでもあり、X-ファイルでは、シーズン2の第20話「サーカス」、シーズン3の第4話「休息」、第12話「害虫」、第20話「執筆」を書いている。ヘン系のストーリーが大得意な人物だが。今回のエピソードは自身が面白キャラを演じてくれていた。


 ブラントがかなりとぼけたキャラクターのため、ストーリーの雰囲気もコミカル調で、例えば、モルダーがブラントの父のミイラ化した死体のしっぽを誤って折ってしまい、スカリーに隠そうと必死で誤魔化すシーンなど、普段のエピソードの際には絶対に見られないようなあたふたぶりを見せてくれて、ここは笑ってしまった。また、モルダーに化けたブラントが、オフィスの椅子に座って足を机に乗せた途端ひっくり返りそうになったり、鏡の前で銃を取り出してポーズを決めようとして弾倉を落としたり、と、モルダーなら絶対見せないようなズッコケ仕草のオンパレードだった。


 しかし、全体としての評価はどうかというと「どうでも良い」としか言いようの無いエピソードになっている。モルダーたちが事件に関わるきっかけとなったブラントのしっぽと、彼の変身能力がほぼ関係が無いし、話がコミカルとはいえ、ブラントがしたことは性犯罪であり、手放しに笑い転げられる内容でもなかった。どうせなら、ブラントが早変わりで次々と別人に化けまくり、モルダーたちが振り回される、というような深刻さの無いドタバタ劇の様なものを見たかったところである。


■一言メモ

 サブタイトル「SMALL POTATOES」とは、英語で「取るに足らない人」云々という意味。つまり風采の上がらない地味男ブラントのこと。