感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第8話「狐狩り」

X-ファイル シーズン5 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第8話 狐狩り KITSUNEGARI

■あらすじ


 お題は「暗示能力者」。


 シーズン3の第17話「プッシャー」の続編。

 刑務所からロパート・パトリック・モデールという囚人が脱獄した。モデールは他人の心に暗示をかけて自在に操る超能力を持ち、「プッシャー」と呼ばれていた。モデールはその力で自殺の形で10人以上を殺し、挙句にモルダーに挑戦するものの、頭を撃たれて逮捕されていた。しかも、その超能力は脳内に出来ている腫瘍のせいであり、また脳を撃たれたこともあり、収監直後はこん睡状態だったが、何故か半年前から急に回復していたという。

 すぐさまモルダーの指揮の元にモデールの追跡が始まるが、モデールは何故か以前とは違い、人に暗示をかけて逃走はするものの、殺そうとはしない。さらにモルダーには「ゲームに乗るな」という意味深な言葉を残す。

 やがてモデールを起訴した検察官のボーマンが、大量に青いペンキを飲んで死ぬという異様な死に方をする。明らかにモデールの暗示の影響で、さらに現場には日本語でペンキで『狐狩り』という文字が書き残されていた。「狐狩り=フォックスハント」であり、つまり「フォックス」モルダーへの挑戦状だった。

 ところがモルダーは、モデールが何故かボーマンの妻リンダに執着していること、リンダが夫の死に何も動揺していないこと、リンダがボーマンと結婚したのはほんの二ヶ月前だった、などの理由から、リンダも暗示能力者で、その力で夫を殺したと推理する。やがてモデールはわざとスキナーに撃たれて重傷を負い、病院に来たリンダが暗示でモデールを殺す。

 最後にリンダは暗示でスカリーに成りすまし、モルダーを混乱させて本当のスカリーを射殺させようとするが、スカリーに撃たれて死ぬ。実はリンダはモデールの二卵性の双子であり、同じように脳に腫瘍があった。リンダは生まれた直後にモデールと引き離され、きょうだいのモデールの存在を知ったのは半年前だったという。リンダはモデールの復讐のため、モルダーたちを殺そうと企んでいたらしかった。



監督 : ダニエル・サックハイム
脚本 : ヴィンス・ギリガン&ティム・ミネア

■感想

 評価は△。


 シーズン3の「プッシャー」の続編だが、今回は超能力者との対決は主題では無く、モデールの不可解な行動の謎をモルダーが解き明かす、という推理物仕立てとなっている。もっとも、その試みは成功とは言えず、正直かなり評価の低いエピソードとなった。


 まずリンダがモデールと同じ暗示能力を持っている理由について、リンダの側頭葉に同様の脳腫瘍が出来ているせいだとし、その脳腫瘍が出来た理由は、スカリーに「家系なのかも?」と一言説明させておしまいにしているが、いくらなんでも無茶である。またモデールは「プッシャー」のラストで脳腫瘍が手遅れになって昏睡状態に陥ったという描写が有ったが、今回理由は不明なままにいきなり回復したというのも苦しい設定である。リンダが半年前から刑務所に会いに来ていた、という説明が有ったが、いくら暗示能力があっても進行した腫瘍をどうにかできるものでもあるまい。強引に続編を作るため、無理に無理を重ねているように思えた。


 さらに、モデールは「プッシャー」では、何のためらいも無く暗示で人を殺す冷酷な男だったが、このエピソードでは極力人を殺さないように行動しており、すっかり別人と化してしまっているのが違和感満点である。とどめで、リンダの罪をかばって自分がわざとスキナーに撃たれるに及んでは、何故モデールがこんな心優しい善人になってしまったのかと、首をかしげずにはいられなかった。


 結局のところ、謎が解けるまではミステリアスな展開に思えたが、全ての真相が解ってみると、突っ込みどころ満載の低品質シナリオで、脱力してしまった。


 今回のサブタイトル「狐狩り」は、モデールの(本当はリンダの)モルダーへの挑戦状として書かれた文字だが、何故唐突に日本語が登場したかというと、モデールは日本の武術かぶれという設定だからである。前作「プッシャー」で、モデールは「RONIN(浪人)」という雑誌を愛読したり、「プッシャー」の略称代わりに「OSU(押す)」と名乗ってみたりしていた。しかし、アメリカ人から見ると意味不明の言葉が壁一面に書きつけてあるのはさぞ不気味に見えるのだろうが、日本人視聴者からするとそこら中に「狐狩り」と書かれている光景はかなり間が抜けて見えて、苦笑してしまった。


 最後の最後で「リンダはモデールの双子」という真相が明かされるが、その設定に(本来とは別の意味で)驚愕した。リンダ役のダイアナ・スカーウィッドはこの時43歳だったが、物凄い老けっぷりで、モデールの双子どころか母親に見えるくらいだったからである。このドラマでは「女子高生」役が25歳くらいに見えたりするが、白人女性は日本人感覚からすると老けて見えるものなのだろうか。


 プッシャー/モデール役声優は『プッシャー』と同じくベテラン大塚芳忠氏。リンダ役は「セーラームーン」のセーラーネプチューンでおなじみ勝生真沙子氏でした。