感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第14話「赤と黒」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第14話 赤と黒 THE RED AND THE BLACK

■あらすじ

 お題は「異星人の地球侵略、政府の陰謀」。


 第13話「ペイシェントX」の続編。


 ダム近くで新たな大量の焼死体が発見され、その近くで行方不明だったスカリーが半死半生で見つかった。スカリーは何故そこにいたのかも、何が起きたかについても記憶を失っていたため、催眠療法を受ける。彼女の言葉によれば、集まった人たちの真上に宇宙船が出現し、直後顔の無い男たちが人々を焼き殺していった。ところがさらに別の宇宙船が現われて、男たちを撃ち殺し、カサンドラ・スペンダーを連れ去ったという。モルダーはこの話を聞いても、スカリーが何かのショックを受けて宇宙人話を作り上げてしまっただけ、と全く信じず、スキナーに軍の陰謀説を改めて訴える。


 一方、空軍基地に宇宙船が墜落し、顔の無い男が一人が生け捕りにされた。秘密組織の幹部たちは、顔の無い男たちが「入植者」(=侵略異星人たち)たちと敵対する「エイリアン反乱軍」であることを理解する。ウェル・マニキュアード・マンは、ロシアが開発しクライチェックが持ち込んだブラックオイルのワクチンを手に入れていた。彼はワクチンが有れば入植者に抵抗できるので、反乱軍に加担すべきと主張する。しかし組織の幹部たちは、反乱軍と手を結ぶか、または、あくまで入植者に従うか、で意見が割れる。


 クライチェックが突然モルダーの前に現われ、大量焼死事件について語りだす。いまや異星人同士が戦争を始めており、このままでは人類は滅ぶという。事件の起きたカザフスタンスカイランド・マウンテン、ダムは、三箇所とも異星人の地球侵略の基地となるはずだった場所だと説明する。そして異星人の手がかりがあるという空軍基地の情報を教える。モルダーは半信半疑だが、それでもスカリーとその基地に向かう。同じ頃エイリアンの殺し屋バウンティハンターは、反乱軍の捕虜を基地から連れ出し殺そうとしていた。現場に居合わせたモルダーだったが、そこに謎の光が差し込み、さらなる人影が現われたのを見た途端記憶を失ってしまう。結局事件は謎のまま幕を閉じた。 


 最後、スモーキングマンがカナダの山の中に引きこもっており、またスペンダー捜査官の父親であることが描写される。



監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター&フランク・スポトニッツ



■感想

 評価は◎。


 第13話「ペイシェントX」に引き続いての「異星人の地球侵略+政府の陰謀」話。冒頭の多数の焼死体発見シーンから衝撃の(?)ラストでテンポ良く展開するなかなかのエピソードだった。


 今回ついに大量殺人の犯人が「入植者」と対立する「エイリアン反乱軍」だと判明し、それはそれで盛り上がったが、話が宇宙人同士の戦争とスケールが大きくなりすぎたのは、いささか当惑せざるを得なかった。今まではモルダーたちは「政府の陰謀の証拠を手に入れ、世間に公開すれば勝利」的な目標で活動してきたわけだが、宇宙戦争となると、もう一介のFBI捜査官たちがどうこう出来る話で無くなってしまうわけで、今後政府の陰謀話をどう進める気なのかは気になるところではある。


 秘密組織の幹部が、反乱軍の兵士たちが目も口も塞いでいるのは「ブラックオイルの感染を防ぐため」と推測していたが、入植者とブラックオイルの関係が全くわからないのは混乱させられる。シーズン4・第8話「ツングースカ Part1」では、ロシアに墜落した隕石の中に閉じ込められていた地球外生物という話だったが、今回は「入植者」たちの地球征服用の秘密兵器で、さらに敵対者にも使用する、といった描写になっており、もう何がなんだか解らない。


 中盤に、エイリアン反乱軍の宇宙船がアメリカ空軍の基地に墜落し、乗員の一人が軍の捕虜となるが、展開があまりにもご都合主義で笑ってしまう。まあ、人里離れた山の中に墜落してそれを捕まえに行くというような話にすると時間が足りないだろうが、もう少し考えてもよかったのではないか。


 また登場人物の扱いが結構雑なのも気になった。前回登場したディミトリ少年は、今回重要な役割を果たすのかと思いきや、序盤に「ダムで焼死体で見つかった」であっさり済ませてしまっていたし、またカサンドラ・スペンダーもUFOに誘拐されたといって、そのまま帰ってこない。さらに、前回の終盤、マリタ・コバルービアスがクライチェックと組織を裏切って(?)、ディミトリ少年をモルダーに渡そうとした理由も明かされない。登場人物の行動や意味にもう少し配慮して欲しい回だった。


 第2話「帰還 Part2」で、スカリーが不治と思われていたガンから回復した理由が不明で「病院の治療が効いたのか、はたまた神への祈りが通じたのか」と思わせていたが、実はモルダーが国防総省から盗んできたチップを再度埋め込んだから、という事が今回判明する(モルダーは、スカリーはチップのせいで操られてダムまで連れて行かれた、と推測する)。しかし、チップの埋め込みはいつ誰が行なったのだろうか? モルダーが病院でスカリーの治療の為にチップが必要、と力説した際、家族も病院の医者も全く相手にしていなかったはずなのだが……


■一言メモ

 サブタイトルの「赤と黒」とは、スモーキング・マンが息子ジェフリー・スペンダーに出した手紙の赤い色と、ブラックオイルの黒、を表している。