感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第17話「万霊節」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第17話 万霊節 ALL SOULS

■あらすじ

 お題は「天使」。


 スカリーが教会で懺悔する形で、過去の事件が語られる。


 スカリーは知り合いの神父から、ある信者夫妻の娘が変死した件について、個人的に調査してほしいと頼まれる。死んだ少女ダラは、落雷による感電死と推定されたが、両目が焼け焦げているだけで体には何の異変も無かった。また脊椎の障害で歩けないはずなのに、死の前に自分の足で道路を歩いていたという。ダラは養女で4つ子だと判明するが、彼女の姉妹も同じように頭部が焼けた状況で死んでいく。スカリーは、解剖の結果、彼女たちが全員手足の指が6本ある多肢症であること、また「羽」の様な骨があること、に気が付き、また死んだ娘エミリーの幻を度々見るようになる。


 スカリーは捜査の途中、四つの顔をもち光り輝く男の幻を目撃し、また神父からは天使セラフィムは四つの顔(人間、獅子、ワシ、雄牛)を持っていると聞かされる。セラフィムは、人との間に「ネフィリム」という四人の子どもを作ったが、ネフィリムたちは「堕ちた天使」であり、肉体に障害をもっていたという。そして最後にセラフィムネフィリムを殺して魂を天に返したと伝えられていた。


 スカリーは4つ子の最後の一人ロバータを見つけるが、謎の男が現われ、さらにロバータは突然エミリーの姿に変わりロバータを行かせるようにと頼む。そしてまぶしい光と共にロバータも殺され、男は消えていた。


 最後にスカリーが懺悔室で「愛するものの死を受け入れることが信仰なのですね」とつぶやくシーンで〆。



監督 アレン・コールター
脚本 ビリー・ブローン&ダン・エンジェル


■感想


 評価は×。


 X-ファイルでは珍しい、直球の宗教系エピソードだが、展開が雑すぎる上に、さすがに事件の犯人が天使だった、という展開にはついていけないものが有り、あまりにも受け入れがたいエピソードとなった。


 過去にも、キリスト教要素のあるエピソードとして、シーズン1・第18話「奇跡の人」、シーズン3・第11話「黙示」、が有ったが、それらが控えめに(?)「神の奇跡は存在するのか?」という程度に抑えていたに対し、今回は天使が地上に現われて連続殺人を行なう、という話なのだから、ちょっとX-ファイルの守備範囲を超えていると言えよう。シナリオ執筆は、新顔のビリー・ブローンとダン・エンジェルという二人だが、X-ファイルの作法というかを理解していないようである。


 基本設定の突拍子の無さ以外にも、ゲストキャラのグレゴリー神父の設定もいい加減なことこの上ない。自称「四つ子を悪魔から救おうとして保護しようとしていた」との事で、モルダーとスカリーに思わせぶりな事を語るのだが、真相は四つ子を殺して回っていたのは天使だったのだから、言っていたことは全くの勘違い、またはデタラメだった訳である。謎の男(実はセラフィム)に焼き殺されるという死に様も含めて、視聴者を「今回は天使対悪魔の戦い」とミスリードするためのキャラだったと思われるが、グレゴリー神父がどうやってダラたちの事を知って悪魔が狙っていると思い込んだのか、そのあたりの説明が全く無く、キャラクターの設定が雑すぎであろう。


 今回は、スカリーがしつこく「自分の娘を亡くした」と連呼するが、それは第6話「クリスマス・キャロル」、第7話「エミリー」に登場したエミリーのことで、何故かエミリーは(幻の形で)再登場する。


 今回の事件の真犯人(?)の天使セラフィムは、四つの顔を持っているという事で、スカリーの前に現われた際にその顔を披露するが、それが「まぶしく光り輝く人間の顔の部分がグルグル回転して、獅子とかワシとか牛の顔が現われる」という姿で、神々しいというよりギャグに近く、神秘さも何も有ったものではなかった。キリスト教的な素養があれば、あのようなシーンを見ても「天使様だ」と思う事が可能なのだろうか。


 最後にスカリーは「愛するものの死も受け入れる、それが信仰なのですね」とまとめて、四つ子とエミリーの死をだぶらせているようだったが、そもそもエミリー関連の前後編が別に泣けるような話ではなかったので、どうもスカリーのエミリーへの思い入れが理解しずらいものがあった。


 要するに「基本的な構想が変すぎる上に、細部の練りこみも甘く、イマイチすぎるストーリー」という評価しか出来ない話だった。何故こんなつまらないシナリオが採用されたのか、理解に苦しむところである。


■一言メモ

 サブタイトルの「万霊節(ALL SOULS)」とは、正式には「All souls' day」と書き、カトリックですべての逝去した信者の霊を祀る記念日のこと。毎年11月2日。「死者の記念日」ともいう。