感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第19話「幻妖」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第19話 幻妖 FOLIE A DEUX

■あらすじ

 お題は「怪物」。

 シカゴのラジオ局に匿名の人物から、ビニールライトという会社に人に化けた怪物が居る、という妙な告発テープが届く。モルダーがビニールライト社に調査に行くと、突然ゲーリーという社員が銃を持って立てこもり事件を起こす。ゲーリーによれば、支社長のピンカスは人に化けた怪物で、社員数人をゾンビに変えて操っているという。ゲーリーは「ゾンビ」の一人を撃ち殺した後、突入してきたFBIに射殺されるが、モルダーも一瞬だけピンカスが人以外の何かに見える。

 モルダーは過去のX-ファイルを見直し、過去10年間に「人に化けた怪物を見た」という事件が続発している事を知る。しかも発生場所はビニールライトの支社がある場所ばかりだった。やがて、モルダーはピンカスが社員の家に忍び込み、住人を襲っているシーンを目撃するが、当の住人はそれを否定、逆にモルダーが精神錯乱だと見なされれ、病院送りになる。

 スカリーは、モルダーの頼みでゲーリーが撃ち殺した「ゾンビ」を調べ、首の後ろに何かが噛み付いたような傷を見つける。慌てて病院に向かうと、モルダーが黒い影のようなものに襲われており、銃撃するものの取り逃がしてしまう。事件後、ピンカスや、ピンカスに「ゾンビ」化されたとおぼしき社員たちは皆姿をくらましていた。ゲーリーが殺した「ゾンビ」の体内からは未知の物質が検出されたが、それが何かは不明だった。

 最後、全く別の会社で社員の一人が「怪物が居る」とか怯えているシーンで〆。



監督 : キム・マナーズ
脚本 : ヴィンス・ギリガン

■感想

 評価は○。

 今回のエピソードはモンスターホラー物。「主人公が、人間に変装した宇宙人とか怪物がいると気が付き、それを周囲に訴えるものの、頭がおかしいと見なされ信じてもらえない」というのは、SFサスペンス物では結構よくある展開だが、今回はそれのX-ファイルバージョンである。
 展開には特にひねりは無いが、前半はゲーリーの立てこもりをサスペンス感たっぷりに描き、後半は真実に気が付いたモルダーが、怪物の存在を周囲に信じてもらえず孤立していった末に病院送りとなり、と、それなりに面白いエピソードだった。


 今回の超常現象は「人間に幻覚を見せて擬態する巨大昆虫(的な何か)」が登場という、X-ファイルにしては珍しいB級SFテイスト系である。モルダーたちと「異形のモンスター」との対決というのは、シーズン2・第2話「宿主」以来となる。
 もっとも、今回の怪物は、ぼんやり映る影で「昆虫ぽい」とはわかるものの、殆どその姿を見せず、クライマックスでモルダーの病室の天井を這い回る姿が唯一の全身像が解るシーンという程度である。
 しかし、これは「姿を見せない不気味さ」の演出というより必要に迫られての事だったらしい。モンスターの着ぐるみは、スタッフ見て失笑するレベルの酷さだったそうで、監督は仕方なく影でしか映さなかった、というのが真相だそうである。


 しかし、いくらピンカスに化けている昆虫モンスターが、相手を心理的に操り、自分の姿を人間に見せかけていても、正体があんな巨大な虫なら「触ったらその感触でばれる」と思うのだが……、あんな触覚が付いていたらドアから入るときにひっかかりそうだが、日常生活に困らないのだろうか。
 それ以前の問題として、怪物が何の目的で人間社会に潜り込んでいたのか謎のままで、見終わった後もモヤモヤさせられる。さらに人間をゾンビに変えてどうしようとしていたのか、という疑問も未解決で、よく考えてみると結構いい加減なシナリオである。「モルダーが周囲から狂人扱いされる」というところから組み立てていったために細部は考えていなかったのだろうか。


 とは言え、「怪物ホラードラマ」として、それなりには面白かった。


 病院に放り込まれたモルダーが、見舞いに来たスカリーに「いつかこうなると思っていただろう?」とつぶやくシーンは、モルダーの自虐っぷりが凄くて苦笑ものだった。

■一言メモ

 サブタイトル「FOLIE A DEUX」(フォリアドウ)とは、フランス語で「ふたり狂い」という意味の精神病の症状。ある一人の狂気が、やがて別の人間に「伝染」してしまうという症例のこと。劇中でゲーリーの「狂気」がモルダーに伝染してしまったことを表している。