感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン1」第11話「イヴ」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン1」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン1
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s1/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第11話 イヴ EVE

■あらすじ

EP11 イヴ
コネチカット州カリフォルニア州で、類似殺人事件が発生した。捜査を進めるうちに、被害者の幼い娘は共に体外受精児で年齢も容姿も同じだったことがわかったが・・・。

 お題は「遺伝子操作」。


 コネティカット州で男が首から血を抜かれて殺される事件が発生した。モルダーはアメリカ各地で発生している「家畜が何者かに血を抜かれて殺される事件」と同様にエイリアンの犯行だと考える。しかも被害者の娘ティナは、事件の前に赤い光を見たと証言し、モルダーはますますエイリアンの犯行との思いを強くする。

 直後、カリフォルニア州でも全く同じ手口の殺人が報告され、しかも被害者の娘シンディはティナとそっくりだった。時差を考慮すると、二つの事件は同一時刻に発生した事がわかる。

 モルダーたちは、シンディもティナも体外受精児で、二人とも担当したのはサリー・ケンドリックという医師だった事を突き止める。ケンドリックは優秀だったが倫理面に問題があり、遺伝子操作した受精卵で人体実験を行なった事が発覚して医者の免許を取り上げられ追放されていた。

 直後、モルダーはディープスロートから1950年代の政府の極秘研究「リッチフィールド計画」を教えられる。計画は、ソ連に対抗するために、優れた人間の遺伝子を掛け合わせ超人を生み出すというもので、作られた子供たちは、男性はアダム、女性はイブ、と命名されたという。しかし、彼らは天才だったが成長すると精神に異常をきたす事がわかり、計画は破棄された。モルダーは医療刑務所に監禁されている「イブ6号」と面会し、殆どのアダムとイブは精神異常をきたして自殺した事、今は生きているのはイブ6号および脱走して行方不明のイブ7号・8号だけである事、イブたちの若いころがシンディやティナそっくりであること、を知る。

 やがてシンディとティナがイブ7号ことケンドリックに誘拐される。ケンドリックは以前から実験の成果である二人を観察していた。実は二件の殺人の犯人はそれぞれシンディとティナで、不可思議な能力で互いのことを知っており、面白半分に同時にそれぞれの父親を殺したという。ケンドリックは二人を治療しようというが、ジギタリスの毒を盛られて殺されてしまう。

 シンディとティナはモルダーたちに助け出されると、ケンドリックに自殺を強要されたが逃げたと上手く誤魔化す。さらにモルダーとスカリーにも毒を盛って殺そうとするが、危ないところでモルダーがそれに気がつき難を逃れる。


 最後、イブ6号と同じ刑務所にティナとシンディが「イブ9号・10号」という名前で、収監されていることが示される。そこに医者として何故かイブ8号が現われて、ティナかシンディが「待っていたのよ」と声をかけて〆。


監督 フレッド・ガーバー
脚本 ケネス・ビラー & クリス・ブランカ



■感想

 評価は◎。


 SFサスペンス系の傑作エピソード。序盤はエイリアン関連の話であるかのように視聴者をミスリードしておいて、途中から政府の極秘計画絡みのサスペンスストーリーへとがらっと様相を変えてしまう展開が実に巧み。さらに、そこからも事件の犯人がイブ7号ことサリー・ケンドリックの様に思わせて、実はあどけない少女たちが犯人だった、という衝撃の真相まで引っ張る展開が実に面白かった。


 今回の話の核となるのが「アダム/イヴ」と名付けられた超人たち。普通の人間は染色体が46本だが、彼らは56本もあり、遺伝子が多いため普通の人間を越えた知能と身体能力を有している。しかし、その反動なのか精神が不安定でかつ極めて凶暴。実際、モルダーたちが施設で面会したイブ6号は情緒不安定の極みで、ニヤニヤしながら話しているかと思うと、次の瞬間には何気ない言葉に突然怒りを爆発させるなど、「精神を病んでいる人」のイメージそのままである。(しかし、それでいてイブ6号の語るところによれば、知能指数は265の超天才だそうである)。


 ところで、リッチフィールド計画は、ディープ・スロートの説明によれば、知能や運動能力に優れた人間たちの遺伝子を掛け合わせて優れた人間を作る、というものだったようだが、「染色体が10本も多い人間」となると、もうそれは優れた人間というより別の生物の様な気がする。


 モルダーは、突然カリフォルニアに現われたディーブ・スロートの助けで事件の手がかりを掴むのだが、今回のディープ・スロートの狙いは何だったのだろうか。あとからモルダーを上手くだます時の為に、今回はモルダーを手助けして信頼を得ておこう、という腹だったのかもしれない。


 事件の真犯人であるティナとシンディの描写が実に秀逸。見た目はただの子供で、別に危険そうなところはないのだが、精神的には完全に病んでおり、何のためらいもなく実にあっさりと殺人を犯してしまう。自分たちの力を誇示するようなところはなく、あくまで普通の子供を装いながら、疑われないように巧みに立ち回りつつ殺人を繰り返すところが実に不気味である。


 最後、イブ6号が収監されている医療刑務所にティナとシンディも放り込まれるが、そこに何故かイブ8号がやってきて二人を見つめるシーンでエンドとなる。続編が作れそうな不気味な結末で、最後の最後まで本当に良く練られたシナリオだったと思う。


■一言メモ

 容姿がそっくりのティナとシンディを演じるのは、当然双子の姉妹で、名前は Erika Krievins と Sabrina Krievins。なかなか適切な双子が見つからず、スタッフは最後には一人の女の子をCGで二人に増やす、という事も考えたそうですが、お金と手間がかかりすぎるので、苦労してなんとかクリービンス姉妹を見つけて撮影した、とのこと。