感想:NHK番組「コズミックフロント☆NEXT」「今も進化中?銀河系の奇妙な姿」(2015年9月3日(木)放送)


 NHK番組「コズミックフロント☆NEXT」の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

コズミックフロント☆NEXT | NHK宇宙チャンネル
http://www.nhk.or.jp/space/cfn/

 NHK BSプレミアムでの視聴です(放送:毎週木曜 22:00〜23:00)。

今も進化中?銀河系の奇妙な姿

■今回の内容

9月3日の放送
「今も進化中?銀河系の奇妙な姿」

>夏の夜空の主役、天の川。天の川の正体は、私たちの太陽系が属する銀河系を横から見た姿だ。今回は、銀河系の形についてのミステリー。


>銀河系と言えば、円盤状に渦を巻いた形を思い浮かべる人も多い。しかし、この形は観測によって導き出された想像図でしかない。なぜなら銀河系の大きさは、およそ10万光年にもなり、誰も銀河系を外から見ることはできないからだ。


>現在もその全貌をより正確にとらえようと世界中の研究者が観測を続けている中、銀河系の意外な姿が明らかになってきた。さらにその姿は、銀河系の過去と未来を示していることも分かってきた。

●銀河系は波打っている

 銀河系は「渦を巻いた円盤」として描写されるが、実のところそれは想像図でしかない。なぜなら人類は銀河系の外に出て実際に銀河系の姿を観察したことが無いから。


 昔から夜空に見える星の分布を調べて銀河の形を調べる試みがあった。ハーシェルは「星が多いところ=遠くまで星がある」と考え、初めて銀河系が円盤状だと主張した。そして現在では、概ね「中心部は棒状でそこから五本の腕が伸びて渦巻いている」という事は解っている。


 より詳しく銀河系の形を調べるため、水素ガスが発する電波を調べる研究が行なわれた。電波は光が届かないチリなどを通り抜けることができるから、目で見るよりも正確に観測できる。その結果、銀河系は基本的には渦を巻いた円盤だが、端が跳ね上がっていることがわかった。これは銀河系を包み込むダークマターが、マゼラン銀河の潮汐力の影響を受けて波打ち、その影響を受けていると推測されている。銀河系は不動の存在では無く、何億年単位で(ピザの生地を回転させて伸ばす時のように)端がゆらゆら揺れ動いている。



●銀河を取り巻くリボン

 銀河系の周囲には「矮小銀河」という、大きさが数百光年から一万光年程度の小型銀河が存在する。そのうち「いて座矮小銀河」から星が延びていて、銀河系をグルッと取り巻くリボン状になっていることが解った。これは銀河系が周囲の矮小銀河から星を取り込んでいる姿と判明している。銀河系は、周囲の星々を吸収しながら今も成長し続けている。



●銀河が移動するハイウェイ

 銀河系を取り巻く矮小銀河は、周囲360度に散らばっているのでは無く、マゼラン銀河も含めてある細長い板の様な範囲に収まっている。これはダークマターと関係が有る。宇宙の銀河は謎の物質ダークマターの分布範囲と同じところに集まっている。ダークマターの重力が一種のハイウェイの様な物を作っており、銀河はその中を移動している。ダークマターの「ハイウェイ」は板状なので、銀河系周辺の矮小銀河も板状に配置されていたというわけ。


 銀河系はこのハイウェイに沿って「おとめ座銀河団」の方に移動している。しかし銀河系がそこに到達することは無い。なぜなら宇宙は膨張し続けており、目標が遠ざかっているから。いつの日か宇宙の膨張速度は光速を超える。するとどうなるか? 総ての銀河が銀河系から光よりも早く遠ざかってしまい、遠い未来、銀河系の周りには何も無くなってしまう。宇宙に唯一つの孤独な銀河となる。


 今宇宙が観測できる天文学者は幸運といえる。数百億年後に銀河系に住民がいるとして、彼らには観測できる他の銀河が無いので、宇宙が膨張し続けている、とか、そういう事は何もわからないだろうから。


■感想

 コズミックフロントの得意技・最新宇宙論話。毎回「えっ、そうなの?」という知識が得られて本当にお得です。