感想:特撮「仮面ライダードライブ」総括(全48話):疾走しきれなかったライダー

 特撮「仮面ライダードライブ」(全48話)の感想です。
(※以下、ネタバレにご注意ください)


仮面ライダードライブ Blu-ray COLLECTION 1

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仮面ライダードライブ Blu-ray COLLECTION 3

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こんなお話

 『天才的な科学者クリム・スタインベルトは、意思を持つ機械生命体ロイミュードを開発したが、ロイミュードは反乱を起こして逃亡した。クリムは死の間際に機械に精神を移して生き延びると、ロイミュード全108体を倒すため、刑事「泊進ノ介」に接触し「仮面ライダードライブ」となる様に依頼した……』


仮面ライダードライブ VOL.3 [DVD]

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初の刑事ライダー

 ドライブは仮面ライダーシリーズでは初の「刑事物」という、今までに無いアプローチをしていました。毎回、様々な怪事件が発生し、それを進ノ介たち「特状課」の面々が捜査、結果ロイミュードが犯人だったことが判明し、ドライブがロイミュードを倒す、というのが一連の流れでした。



 こういう基本部分だけを見ると、懐かしい作品を連想します。やはり東映特撮モノの一つで石森章太郎原作の「ロボット刑事」です。「ロボット刑事」は、おそらく史上初の「刑事+ヒーロー物」でしょう。



ロボット刑事

ロボット刑事 Vol.1 [DVD]

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 「ロボット刑事」は、犯罪組織「バドー」のロボットが人間に近づいて犯罪を持ちかけ、契約すると、その能力で人間には実行不可能な犯罪を代行します。そうやって発生した怪事件を、警察に配備されたロボット「K」が解決する、という筋立てでした。



 もっとも「ロボット刑事」は古い作品のため、色々とこなれていない点があった訳ですが、21世紀のヒーロー「ドライブ」はそのあたりどうだったと言えば、かなりスマートに処理していました。基本的に事件の捜査は人間の仕事で、進ノ介が事件の謎をキリの良い所で「つながった」という決め台詞と共に解明し、最後にドライブに変身して犯人のロイミュードを倒して〆、という一連のパターンが確立され、毎回安心して楽しめる作品に仕上がっていました。仮面ライダーが聞き込みをしたりするのでは無く、あくまで最後の人間には手に負えないロイミュード用の秘密兵器、という位置づけだったわけです。



 また、ギミック面でも独自性が打ち出されており、ライダーの変身ベルトには、科学者クリムの精神が宿って「ベルトさん」という一つのキャラクターとなっており、進ノ介との毎回の掛け合いは「ナイトライダー」を思い起こさせるものがありました。戦闘中でも、常に冷静に状況を分析するクリムと、時には無理もいとわない進ノ介との激しい口論など、今までのライダーに無かったシチュエーションを作り出していたのは成功だと思います。





 ドライブの愛車「トライドロン」の扱いも巧みでした。ライダーと怪人の戦いに自動車を持ち出せばライダー側が圧倒的に有利になって、殆ど一方的な展開になってしまう……、これを解決したのが「タイヤコウカーン」という仕組み。トライドロンの前輪はドライブの強化パーツになっており、トライドロンから必要に応じてタイヤを打ち出してもらい、それを交換することで武器を取り替える、というギミックとなっています。トライドロンは「支援用装備」にとどめておき、かつそれなりに活用する、というのは上手いやり方でしたね。


仮面ライダードライブ 三段変形 DXトライドロン

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 また、進ノ介の仲間となる「特状課」の面々もいい味を出していました。ロイミュード絡みの事件は、普通の警官たちからは「キワモノ」と見なされていて、そんな事件を担当する「特状課」は窓際部署扱い。実際、メンバーはやる気の無い昼行灯キャラ本願寺課長(片岡鶴太郎)や、ネットオタク的研究者、など、妙な人たちばかり。しかしいざというときには頼りになる、という定番設定で進ノ介をサポートしてくれていました。



仮面ライダードライブ VOL.4 [DVD]

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敵幹部たち

 ロイミュードたちは組織として活動しているわけではないのですが、彼らのトップと目されるのが最強存在ハート・ロイミュード。ハートは何らかの目的を目指しているようですが、ガツガツしたところが無く、常ににこやかで紳士的。格下のロイミュードたちのことを「友だち」と呼び、その死を嘆くなど、強さを驕るありがちな幹部キャラクターとは対極の存在で、最後まで格好良かった。


 その相棒で参謀役のブレン・ロイミュードは、逆に狡猾で常に陰謀を企んでいる風なのですが、後半になると顔芸が面白いキャラになっていったのは意外でした、というか笑ったわ。


 そしてドライブのライバルとして登場する「魔進(マシン)チェイサー」。黒い仮面ライダーとでも言うべき存在で、バイクを乗り回し、何度もドライブと激突します。ロイミュードたちからも「死神」と呼ばれる孤高の存在は、序盤を盛り上げる重要なキャラクターでした。




仮面ライダードライブ VOL.5 [DVD]

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後半の展開に疾走感は無く……

 しかし、1〜2クール目の「事件を解決→ロイミュードの数を順調に減らす」という展開はそれなりに面白かったものの、3クール目以降はいま一つ低迷した、という感が否めませんでした。3クール目で警察組織内にロイミュードが入り込んでいることが暗示され、それに対抗するために、敢えて世間に「ドライブ=進ノ介」であることを公表するのですが、ドライブの正体が明かされても、物語的に何の影響も無かったのが拍子抜け。正体不明の正義の味方の中身が判明したのならば、もう根本的に作品世界が変わる、くらいのことは起きるのと思ったのに、殆ど何も無しなのですから。



 また警察組織を仕切っていたのは、「国家防衛局長官・真影」であることが描写されますが、真影がその権力で特状課を追い詰めるのか、と思いきや、何もせず。「怪人が警察のトップだった」という衝撃設定がほぼ何も生かされなかったため、このあたりももどかしさの連続でした。また序盤に語られて、その後長らく放置されていた「進ノ介の父親の死」という設定を真影に絡めてきているのですが、これもさほど盛り上がらず。このあたりは、盛り上げるための仕掛けが全て壮絶に失敗していたように映りました。



 終盤、唐突に(?)ロイミュードの生みの親・蛮野博士がクリム同様に生きていたことが明かされ、悪のライダー「ゴルドドライブ」と化してロイミュードを従え、世界征服へと突っ走るわけですが……、スタッフが幕引きの方法を良く考えておらず、最後にようやく蛮野博士をラスボスにしてみました、という感じで、盛り上がらないことおびただしかった。まあ蛮野/ゴルドドライブは、悪党らしいことはちゃんと(?)していましたが、こんな終盤に出てきたキャラがラスボスを名乗られてもなぁ……、という、なんとも納得しがたい感はどうしても振り払えませんでした。しかもゴルドドライブはラス前で剛に倒されてしまい、真のラストのラスボスはシグマサーキュラーが担当、というのではもう何をか言わん……



仮面ライダードライブ VOL.6 [DVD]

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締めくくり方を考えていなかったのか?

 以上の様に、後半から終盤にかけての展開は、ダメではないにせよ、期待していたほどには盛り上がることは有りませんでした。近年のライダーでは「オーズ」や「フォーゼ」が終盤一気に盛り上げって充実の結末を見せてくれたことと比較すると、どうしても下に評価せざるを得ません。


 なんとなくですが、「ドライブ」はどう締めくくるのかを未定のまま走り出してしまい、そのために伏線を上手く使いきれなかったのかも、という気がしています。もっとも、最初からこの構想だったとしたら、もっと悪い気もしますが……、チェイスが味方に転向して『仮面ライダーチェィサー』になる展開は身震いするくらい嬉しかったのですけど、後半良かったのはこれくらいだったし。



 「ドライブ」は、決して失敗作と呼ぶべき作品ではありませんでしたが、もう少しなんとか出来た作品だったような気がします。それが残念です。

公式サイト(テレビ朝日版)
http://www.tv-asahi.co.jp/drive/

公式サイト(東映版)
http://www.toei.co.jp/tv/drive/index.html


仮面ライダードライブ VOL.7 [DVD]

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仮面ライダードライブ VOL.8 [DVD]

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仮面ライダードライブ VOL.9 [DVD]

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