感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第16話(シーズン1 第16話)「科学者の憂鬱」

スパイ大作戦 シーズン1<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 

第16話 科学者の憂鬱 The Reluctant Dragon

 

あらすじ

東側のロケットの権威、ヘルムット・チェロトフ博士。敵国が彼の最新の発明に気づく前に亡命させなければならないのだが、最大の障害は彼の意志だった…。


東西冷戦時代。東側のロケットの権威チェロトフ博士は、妻を西側に亡命させるも本人は捕まってしまう。裏切り者として閑職に追いやられ1年、彼の最新の発明に脅威を感じた西側は、ブリッグス(スティーブン・ヒル)に国の当局が彼の発明に気づく前に亡命させるように指示する。しかしローラン(マーティン・ランドー)が接触して判明したのは、亡命の最大の障害は彼の意志だったこと…。

※DVD版のタイトルは「第三の壁」。


【今回の指令】
 一年前、東側のロケットの権威ヘルムット・チェロトフ博士の妻カレンが西側に亡命したが、博士自身は亡命は果たせずに終り、現在は警察長官ヤンコフスキーの監視下にある。博士は閑職に追いやられたが、にもかかわらず単純かつ高性能のロケット誘導装置を完成させつつある。もし装置が完成すれば東西の軍事バランスは崩壊する。IMFは装置が政府の手に渡らないうちに博士を西側に亡命させなければならない。


【作戦参加メンバー】
 ローラン、バーニー。(※ブリッグスは指令の受領とメンバー選定のみ)


【作戦】
 ローランは東ドイツの警察の副長官という名目でヤンコフスキーの懐に飛び込み、バーニーは留学生という設定でサポートを担当することになった。ところがローランがチェロトフ博士に接触すると、チェロトフはあくまで本国で昔のように研究したいだけで、亡命する意思はさらさら無いという。

 ローランはチェロトフの気持ちを変えさせるため、ヤンコフスキーに対し、反抗的なチェロトフを屈服させるため短期間刑務所に入れるように進言する。チェロトフは刑務所で先輩科学者たちがみじめな暮らしをしていることに衝撃を受ける。さらにIMFの手引きでこっそり入国したカレンがチェロトフを説得し、ついにチェロトフは亡命を決意する。そこにヤンコフスキーが現れ、ローランの企みを見抜いていたと明かすが、ローランは格闘の末ヤンコフスキーを倒し、全員で逃げ出すシーンで〆。


感想

 評価は○。


 事実上ローラン一人が活躍するエピソードで、そのため「スパイ大作戦」というテイストは殆ど無かったが、スパイ・ローランの大冒険、という話だと割り切れば結構面白かった。

 今回のエピソードも(いつものように)前提となる設定がかなり無理があった。チェロトフ博士は、妻の亡命のとばっちりで、閑職に追いやられてしまい、元の地位に戻してほしいと熱望している。ところが、その一方でそんな状況にも拘わらず高性能のロケット誘導装置を開発中である、という事になっている。どう考えても現状と成果が食い違っている。また開発しつつあるとすれば、そのことを政府に訴えれば大喜びで元の地位に戻してくれるはずである(たとえ見張り付きだとしても、ロケット開発の仕事には戻してもらえるだろう)。ということで、チェロトフの達成しつつある成果を政府が知らない、という前提条件がそもそも破たんしているのである。この時点で、かなり白けてしまったことは否めない。

 しかし、そこに目をつぶれば、スパイ物としてなかなか面白い展開ではあった。ローランが敵のボスであるヤンコフスキーの側に飛び込みながら堂々とふるまって見せたり、パーティーで余興の手品を披露するふりをしてパスポートを盗み取ろうとするシーンなど、とにかくローランが大活躍だった。また最後、ヤンコフスキーとの格闘で銃で腹を撃ち抜いた後、倒れたヤンコフスキーを気遣い、止血をしてやるシーンは印象的だった。ローラン/マーティン・ランドーは、シーズン1ではレギュラーではなく、あくまで「特別出演」扱いなのだが、今回は完全に主役を張っていて、出番のほとんどない「主演」のブリッグス/スティーブン・ヒルよりよほど活躍していた。


 ところで今回のサブタイトルは、日本語版/英語版とも難解である。

BSジャパン版日本語タイトル「科学者の憂鬱」
・DVD版日本語タイトル「第三の壁」
・英語タイトル「The Reluctant Dragon」

 BSジャパン版は簡単だが、DVD版タイトル「第三の壁」とはなんだろうか。鉄のカーテンのことを「壁」と表現しているとして、さらに博士の亡命を拒む気持ちも「壁」扱いするとしても、三つめが思いつかない。

 また英語タイトルで「Reluctant」とは「不承不承」という意味なので、母国に愛着がある博士を無理やり亡命させる、というところからきているのかもしれないが、Dragonがどこから来たのかわからない。ちなみに1941年にディズニー映画で「The Reluctant Dragon」という作品があるのだが、それと関係があるのだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 ブリックスが駐車場に車で乗り付け、既に駐車してある別の車に乗り込む。ダッシュボードの中には資料と8トラックカセットテープが入っており、車に積まれている大型の再生機器でテープの指令を聞く。テープの指令は最後に「このテープは処分してくれたまえ」とのことだったので、ブリックスは近くの焼却炉の火の中にテープを放り込む。(※第3話「大量殺戮者」のシーンの使いまわし)


他のエピソードのあらすじ・感想

perry-r.hatenablog.com