感想:映画「大巨獣ガッパ」(1967年:日本)


大巨獣 ガッパ [川地民夫/山本陽子] [レンタル落ち]
放送 NHK BSプレミアム(2015年8月19日(水) 13:00〜14:25)。
【※以下ネタバレ】

南海の孤島に生息する大巨獣ガッパの親子の愛情と日本各地での暴れぶりを描く痛快娯楽巨編。「ゴジラ」シリーズの特撮美術を手がけた名匠・渡辺明が原案および特撮を担当。

雑誌記者の黒崎浩は、カメラマンの小柳糸子らと共に南太平洋キャサリン諸島に探検に出ていた。噴火中のオベリスク島に謎の石像を発見した一行は島へ上陸し、そこでガッパという怪獣の子どもを発見する。彼らは研究のため、ガッパの怒りを恐れる島民の反対を押し切って、子ガッパを日本へ持ち帰ってしまう。親ガッパたちは子どもを取り戻そうと日本に現れ、口から吐き出す熱光線でジェット機を落とし、街を破壊していく…。


【監督】野口晴康,【出演】川地民夫,山本陽子,小高雄二,和田浩治,藤竜也,【原案】渡辺明,【脚本】山崎巌,中西隆三,【音楽】大森盛太郎

https://bh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20150819-10-04093

■あらすじ

 雑誌社プレイメイト社は、プレイメイト誌創刊五周年を記念して、新たに観光事業に乗り出すことを発表する。それは南海の小島をメージしたプレイメイトランドを作り、野性の動物を放って観光地にしようというものだった。社長の命を受けた記者の黒崎たちと大学の調査隊は、動物確保のため南海の小島オベリスク島に上陸すると、その島の住人は守り神ガッパを怖れていた。黒崎たちは地震で現われた洞窟に入り、見たことも無いは虫類の子供を見つけて日本に連れ帰る。

 直後、オベリスク島では洞窟の中からガッパのつがいが現われ、島で大暴れした挙句、子供を求めて日本へと向かった。空を自由に飛びまわり、口から殺人光線を発するガッパには、自衛隊も手も足も出ず、熱海や日光は壊滅し、さらに東京も危機にさらされる。黒崎たちはガッパの子供を空港に運んで解放してやると、親ガッパが現われ、親子三体は飛び去っていった。


■感想

 昨年(2015年)の夏にNHK BSプレミアムで放送された映画をようやく視聴です。「明らかに東宝映画ではないが、一体どこの会社の作品?」と思って調べてみると、なんと日活でした。昭和の日活と聞くとロマン○○○と連想してしまう世代ですが(笑)、会社が傾く前にはこんなモノも作っていたのですね。

 映画が始まると、いきなり乗りの良い「ガッパの歌」が流れ出すのには大笑い、「ガッパ〜、ガッパァァァァァァァ〜」という歌詞を聴いていると、自分は怪獣映画を見ているのか、はたまた間違えて若大将シリーズでも再生してしまったのか、解らなくなってきます(笑)

 一行が南海の孤島に上陸すると、出迎えてくれるのは、体に墨を塗った日本人……、もとい純朴な南海の人々。村長?は日本語がペラペラですが、「中隊長は誰か?」と訪ねる台詞で『この島には太平洋戦争中に日本軍が進駐していて、その時に日本語を学んだのだろう』といったことをさりげなく推測させるのは上手いですね。

 そしてガッパの子供を発見すると、島民が必死で止めるのも聞かず、島から持ち出してしまう主人公たち。まあここで止めたら映画が終わってしまうわけですが、そのとばっちりで村を破壊される島民はたまったものではありません。

 子供ガッパを日本に連れて来ると、プレイメイト社の社長が「検疫を通さずにこっそり国内に持ち込んで、あとから大々的に雑誌記事にする。ゆくゆくはプレイメイトランドの目玉にする」と言い出します。「モスラゴジラ」でもモスラの卵を見世物にしようとする興行主がいましたが、この手の山師的な登場人物は最近はめっきり見なくなりましたな。


 怪獣映画なのですが、意外と光るのが人間ドラマ。学者の殿岡が子供ガッパを研究のため一刻も早く世間に公開すぺきだと主張するのに対し、記者の黒崎が「えらそうな事をいって本当は自分が名誉を得るためだろう」云々と指摘してギスギスした雰囲気になったり。女性カメラマンの小柳は、ガッパを見世物にしようとする会社の方針に批判的で、インテリの殿岡に気が有るような素振りを見せるのですが、後半親ガッパが日本を襲撃した際、殿岡がガッパ攻撃策を自衛隊に指南するのを見て「あんな人とは思わなかった。結局自分の研究が大事なのだわ」と失望する。ところがそこで、敵対していたはずの黒崎が殿岡を弁護し「男だったら自分の選んだ仕事で成功したいと思うものだ」と言ってみたり。

 最後は黒崎たちが、社長に子ガッパ解放を直訴するのですが、当然社長は大反対。幼い娘が「お母さんのところに返してあげて」と懇願するのですが、社長は無視する。それを見た黒崎たちは「アンタそれでも人の親か!」と言い捨て、そのまま一人残らずいなくなってしまう。と、怪獣映画のわりに、何故か社会人のドラマの部分が印象的なのです。


 さて、子供を求めて日本各地を破壊して回るガッパ夫婦。口から火を吐き、しかも空が飛べる、ということで、ゴジララドンの良い所取りという感じのデザインです。実際、空に飛び上がるシーンで、家の瓦が吹き飛ぶシーンがあり、もう『ラドン』そっくりだなぁと。あと、目が怖い。怪獣の目が怖いのは当然ですが、やたらと目の辺りをアップにするシーンが多く、『殺る気満々』という狂気を感じさせます。それにしても、ガッパ夫妻は、子供を助けに来たのに、何故子供のところに直行せずに、熱海とか日光とか関係ない場所ばかり破壊しまくるのか(笑)。

 最後は子ガッパを解放し、ガッパ親子三人は日本を離れてめでたしめでたし。しかもここで小柳は、黒崎・殿岡の二人を見限ったのか、「会社を辞める」と言い残して去ってしまいます。彼女の行動は、男に頼らない女性の自立を示しているのでしょうか。最後まで怪獣映画の枠に留まらない人間ドラマが描かれていて、東宝怪獣物とは本当にノリが違いました。

 結局、面白かったかというとかなりアレな内容だったのですが、ダメと切り捨てられないところもある、なんとも微妙な映画でした。それにしてもガッパの歌はイカス。