感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第13話「アグア・マラ」


X-ファイル シーズン6 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第13話 アグア・マラ AGUA MALA

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP13 アグア・マラ
昔、Xファイルを発掘したデールズからの電話で、モルダーとスカリーはフロリダへ向かう。デールズの話では、彼の友人であるシプリー夫人の夫が、何者かに襲われたと言う。

 お題は「未知の生物」。


 モルダーとスカリーは、元FBI捜査官でX-ファイル担当だったアーサー・デールズからの連絡で、ハリケーンが接近しているフロリダにやって来る。デールズが言うには、近所の知り合いの家からの連絡で、吸盤のついた触手が出現し、家人の首を絞めたという。モルダーたちはその家を訪ねてみるが、住人も怪生物も見つからず、すぐに退散する。

 ところが、二人はハリケーンのせいで身動きが取れなくなり、仕方なく手近のアパートへと避難したところ、未知の生物に首を傷付けられた男を見つける。犠牲者の傷からは寄生虫の様な生物が見つかり、そのあと体が溶けて消えてしまった。モルダーは、ハリケーンのせいで海に住む未知の生物が下水道に入り込み、下水管を徘徊して人間を襲っているらしいと見当をつける。その生物は普段は水状で、襲われると体内に子供を産み付けられ、その生物が成長すると人間の体は溶けてその怪生物そのものになってしまう、と推理する。

 ハリケーンの風雨のせいで建物から出られない中、モルダーもその生物に襲われ、さらに別所にいたスカリーたちにも生物が迫る。しかしスカリーはその生物の幼虫が真水に弱かった事を思い出し、スプリンクラーから水を吹き出させる。

 翌朝、デールズが無事だったモルダーとスカリーをねぎらう。モルダーは偶然から建物の外に飛び出して雨(真水)にうたれたおかげで命拾いしたのだった。デールズが事件を解決したお祝いに祝杯をあげようとして、二人に「酒に水はいるか?」と聞くとモルダーとスカリーが声をそろえて「いえ!」というシーンで〆。

監督 ロブ・ボウマン
脚本 デビッド・アマン


感想

 評価は(かろうじて)○。


 モルダーたちが閉鎖空間に閉じ込められ、未知の寄生生物の恐怖に怯える、というモンスター襲撃パニックホラー系エピソード。この手の話は、以前にも、シーズン1・第8話「」、シーズン2・第9話「地底」といった作品が存在したが、このエピソードは比較するとクオリティが低く、満足度はもう一つだった。


 モルダーたちをフロリダまで呼び寄せたアーサー・デールズとは、前シーズン(シーズン5)の第15話「旅人」で初登場したモルダーたちの大先輩捜査官である。「旅人」ではたまたま担当した事件がX-ファイル系のものだったが、デールズの話を聞くと、どうやらその後X-ファイル専任捜査官になったらしい。「旅人」のときは偏屈な老人というイメージだったが、今回は性格がめっちゃ陽気になった代わりにアル中気味という設定になっており、大分イメージが変わっている。ちなみに演じているのは、X-ファイル製作スタッフが参考にしたという伝説の番組「事件記者コルチャック」で主役コルチャックを演じたダレン・マクギャビンである。

 今回出現した怪生物は、サナダムシとかああいうタイプの、白くて細長くてうねうねした長さ1メートルくらいの生き物である。モルダーの推理では、普段は水そのもののような液体で、人を襲うときだけ実体化して幼虫を生みつけ、それが体内で成長すると人間を溶かしてその生物そのものにしてしまう、というものらしい。途中までは、下水道の排水口やトイレの中から触手が飛び出してきて人間の首を締め上げるシーンが見られたため、イカやタコ的な巨大生物が街の下水道に潜んでおり、そいつが触手を伸ばして人間を襲いまくっているのだと誤解しており、そのため正体がただの寄生虫もどきだと解って、ちょっとガッカリしてしまった。しかし、巨大生物が下水道に潜んでいたら、モルダーとスカリーの二人だけではとても太刀打ちできるはずも無いので、致し方なかったとも思えなくも無い。

 今回の謎の生物は、状況的に下水に繋がっているところからしか襲撃してこれず、そのままだとトイレや水場に近づかなければ怖くもなんともないので、わざわざモルダーたちをアパートに逃げ込ませ、天井を通る下水管からも襲ってくる、というシチュエーションを作り出しているが、やや苦しいという気がしなくも無い。何故なら、濡れるのを覚悟で玄関外に飛び出していれば、それで安心だからである。冒頭、シプリー夫人と息子が謎生物に襲われて必死に防戦している姿が描かれたが、頑張って洗濯機を倒そうとしたりせず、そのまま一直線に家の外に飛び出して排水口から距離をとれば死なずに済んだのは間違いない。ということでちょっと展開が苦しいエピソードだった。

 また、アパートの住人に、妊娠していてかつ物凄く口の悪い女性と、気の弱い内縁の旦那のコンビがいて、女性の方が「このままトイレに行けなかったら、赤ん坊が膀胱でおぼれちまうよ!」とか愚痴ったりするので、恐怖感覚は乏しい話だった。さらに、最後に、デールズがモルダーとスカリーに酒に水がいるかと聞いて、二人が慌てて断ったあと、とぼけた感じの音楽で終わる、というシーンもあることだし、この話はちょっとコメディ寄りに作った話だったのかもしれない。


 ところでデールズはフロリダからワシントンD.C.のモルダーに「X-ファイル的事件が起きているから、ちょっと来ないか」と連絡するのだが、ワシントンD.C.−フロリダ間は1200Kmもあり、ちょっとという距離ではない(ちなみに東京−博多間で約1000Km)。またスカリーはフロリダで問題の家をざっと調べると、気楽に「もう(ワシントンD.C.に)帰りましょう」とかいうのである。確かに飛行機で片道2時間の距離なのだが、ご近所みたいに言っているところを見ると、つくづくアメリカ人の感覚は違うなと思わされる。それと、今回のフライトは明らかに私用なのでチケット代は自腹のはずだが、こんなうさんくさそうな用件にわざわざ同行してくれるスカリーの付き合いの良さには感心せざるを得ない。


一言メモ

 原題「AGUA MALA」はスペイン語。「AGUA」は「水」、「MALA」は「悪」、の意味。