感想:映画「ボディ・スナッチャー 恐怖の街」(1956年:アメリカ)

ボディ・スナッチャー/恐怖の街 [DVD]

映画|NHK BSオンライン http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/
放送 NHK BSプレミアム 2016年6月15日(水)

【※以下ネタバレ】
 

カリフォルニアの小さな町で、見かけは変わらないのに別人になってしまったという報告が相次ぐ。町に戻った医師・マイルズは、宇宙から飛来した植物生命体が、人間そっくりのクローンをつくりあげ、寝ている間に入れ代わってしまうことを突き止め、恋人ベッキーと脱出しようとするが…。ジャック・フィニーのSF小説『盗まれた街』を、名匠ドン・シーゲル監督が映画化した傑作ホラー。サム・ペキンパー監督の出演にも注目。

 

あらすじ

 冒頭、一人の男が半狂乱となっており、精神科医が連れて来られて男から話を聞くシーンからスタート。


 小都市サンタ・ミラで開業医を営むマイルズ・ベネルは、多くの住民たちが家族が別人の様になったと訴えるという奇妙な事態に直面していた。ところが数日後には、当人たちは誰もが思い違いだったと否定してしまう。

 ある夜、マイルズは知人の家で、顔かたちがハッキリせず指紋も無いという奇怪な死体を見つけるが、目を離した隙に死体は消えてしまう。次の夜、マイルズは温室の中に巨大な植物のサヤの様なものがあり、その中から「死体」が転がり出てくるのを目撃する。マイルズはこのサヤが町の住民を複製しており、今の住民はこのサヤ人間が入れ替わったものだと直感する。しかし、気がついたときには、町の住民はマイルズと恋人のベッキー以外は全員サヤ人間に入れ替わっていた。

 サヤ人間はマイルズたちに、サヤは宇宙から来たのだと言い、不要な感情を持たない自分たちの方がオリジナルの人間より優れているという。サヤは人間が寝ている間に人間の精神をコピーしてしまうという。サヤ人間たちはサヤを栽培し、次々と町の外へと運び出そうとしていた。マイルズとベッキーは隙を見て逃走するものの、ベッキーは一瞬眠った隙にサヤ人間に入れ替わってしまう。マイルズは一人で必死で町の外に逃げ出し、警察に保護された。


 話を聞いた警官や精神科医はマイルズの頭がおかしいとみなすが、そこに交通事故の犠牲者が運び込まれてきて、その男が乗っていたトラックはサンタ・ミラから来たもので、妙なサヤを詰んでいたと判明する。警官や精神科医はハッとなって、サンタ・ミラ周辺に非常線を張るように命じ、マイルズがホッと安堵するシーンで〆。

感想

 評価は△。


 SF小説「盗まれた街」の映画化。ちなみにこの小説は2016年時点で計4回も映画化されているが、これが最初の作品となる。

 小さな街の住民が知らない間にどんどん「見た目はそっくりの別人」にすり替わっていき、いつの間にか主人公たち以外まともな人間は誰もいなくなる、というのは、古典的ながら今でも十分通用する、地味に怖い設定である。一番心を許せるはずの家族・肉親が実はニセモノだった、という展開はいつの時代でも体験したくない恐怖ストーリーだろう。


 ただ、1956年公開と60年も前の映画だけに、さすがに今でも面白いという訳には行かず、「記念視聴」以上の存在ではなかった。場面ごとに流れる古い曲調のBGMを聞いていると、ホラーというより「ロイド小劇場」や「キートン小劇場」を連想してしまったくらいだった。さすがにこの時代の映画というのは現代のものとはまるで別物だと痛感させられた。

 またそういう経年的な古さを差し引いても、設定がもう一つ納得できないのも辛かった。宇宙サヤが住民の見かけを真似して体を作り、さらに住民が眠っている間に精神もコピーしてサヤ人間を完成させるとして、コピーされた「オリジナルの人間」はどこに行ってしまうのか? の説明がない。また終盤にはベッキーが一瞬眠った後に起こされると既に別人に変貌している、というシーンが有るが、もうここまでくるとサヤ云々も関係がなくなっており、何がなんだか訳がわからない。

 さらにラストも、警察関係者がマイルズの話を信じて非常線を張ると言い、それを聞いたマイルズが安堵するといきなり「THE END」の文字が出てきてしまうので、余韻もへったくれもあったものではなかった。


 ということで、前述の通り「古典を記念のため視聴した」以上の意味は無かった。


 ところでさすがに1950年代、主人公も含めて全員がキッチリ背広を着ていました。アクションシーンも背広でこなすのだから時代が解ります。

「ボディ・スナッチャー 恐怖の街」 BSプレミアム6月15日(水)午後1:00〜2:21

【製作】
ウォルター・ウェンジャー
【監督】
ドン・シーゲル
【原作】
ジャック・フィニー
【脚本】
ダニエル・メインワーリング
【撮影】
エルスワース・フレデリックス
【音楽】
カーメン・ドラゴン
【出演】
ケビン・マッカーシー、ダナ・ウィンター、キャロリン・ジョーンズサム・ペキンパー ほか

製作国:
アメリカ
製作年:
1956
原題:
INVASION OF THE BODY SNATCHERS
備考:
英語/字幕スーパー/白黒/レターボックス・サイズ

 
 

[参考]その後の「盗まれた街」の映画

二作目:1978年「SF/ボディ・スナッチャー

SF/ボディ・スナッチャー [DVD]
 
 

三作目:1993年「ボディ・スナッチャーズ」(日本未公開)

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四作目:2007年「インベージョン」

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