【NHK番組】感想:NHK番組「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」『ウルトラセブン伝説 傷だらけのヒーロー』

ウルトラセブン Blu-ray BOX I

アナザーストーリーズ 運命の分岐点 http://www4.nhk.or.jp/anotherstories/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】

ダイアナ妃の事故死、ベルリンの壁崩壊、ビートルズ来日...
人々が固唾を飲んで見守った、あの“出来事”。
あの日、あの時、そこに関わった人々は何を考えたのか?
それぞれの人生はその瞬間、大きく転回し、様々なドラマを紡ぎ出していきます。
残された映像や決定的瞬間を捉えた写真を、最新ヴァーチャルで立体的に再構成、
事件の“アナザーストーリー”に迫る、マルチアングルドキュメンタリー。


ナビゲーター 真木よう子
ナレーター 濱田岳

ウルトラセブン伝説 傷だらけのヒーロー (2016年7月6日(水)放送)

内容

http://www4.nhk.or.jp/anotherstories/x/2016-07-06/10/3138/1453029/
数あるウルトラマンシリーズの中でも、“不朽の名作ぞろい”と言われる異色シリーズ「ウルトラセブン」。熱狂的な人気を誇った初代ウルトラマンの後で、「人間こそが侵略者ではないか?」と悩み、傷つくニューヒーローはいかにして生み出されたのか? 心をふるわせるドキュメンタリーのような世界観、“正義”という意味への挑戦。若者たちが情熱を武器にひた走った製作現場、その知られざるアナザーストーリーを追う。

 50年の歴史を持つウルトラシリーズの中でも最高の人気を誇るのがウルトラセブン。未だに大人向けの研究本などが次々と出版されている。

 運命の分岐点は、ウルトラセブン第一話が放送された1967年10月1日午後7時。



・第一の視点 監督 満田かずほ

 1966年に放送された初代ウルトラマンは、最高視聴率42.8パーセントという爆発的人気を誇ったが、39話で終了した。その理由は、一作作るのに脚本7日・撮影10日もかかり、制作が追いつかなくなってしまったからだった。しかしTBSは続編の制作を円谷プロに申し入れ、新企画がスタートした。当初「レッドマン」と呼ばれた新ヒーローは、ウルトラマンを超えるものを目指し、テーマは「宇宙人の侵略」と決まった。企画書を書いたのはウルトラマンの企画も担当した天才脚本家・金城哲夫(きんじょう・てつお)。金城も含めてスタッフは当時20代で熱気にあふれていた。

 新ヒーローのデザインは、彫刻家成田亨により、ウルトラマンとは全く違う甲冑をイメージするものが出来上がった。ところが俳優のキャスティングが難航。主人公モロボシダンは宇宙人という設定でミステリアスさが求められた。そして抜擢されたのが、当時24歳の若手・森次晃嗣。森次によると月給は三万円で一割引かれて手取り二万七千円だったという。森次の最初の仕事は、満田監督と共にセブンの声を作る事だった。ウルトラマンの「シュワッ」に匹敵する声を作り出すため、試行錯誤してついに「ジュアッ」というあの声にたどり着いた。またウルトラ警備隊の制服着用時に股間が目立たないように、女性用下着で締め付けていた、という苦労も有った。

 ヒロイン・アンヌ役も問題が発生した。当初決まっていた豊浦美子が映画の仕事で降板してしまい、急遽若手のひし美ゆり子を起用する事になった。しかし制服が豊浦のサイズで作ってあったので、ひし美が着るとムッチムチになってしまったのだった。また演技力がイマイチのひし美のため、満田監督が撮影前に特訓していたという。

 スタッフは特殊効果にもこだわった。変身シーンで火花がグルグルと回る効果を作るため、板に釘を打ちつけて、そこにねずみ花火をひっかけ、回転するさまを撮影したという。

 ところがそういうこだわりのため、予算がきつくなってきた。わりを食ったのが音楽担当の冬木透で、予算が無くてオーケストラを一日しか雇えないため、2クール分70数曲を一日で録音する羽目になった。録音する横で冬木はまだ作曲していたという。

 そして、第一話放送が1967年10月1日。視聴率は33.7パーセントと好スタートを切った。



・第二の視点 美術デザイナー 池谷仙克(いけや・のりよし)

 後半の宇宙人のデザインを手がけたのは美術デザイナーの池谷仙克ウルトラマンに出てくる怪獣は恐竜など実在の生物をモデルにしていたが、セブンの宇宙人は生き物をモデルにするのは止めようと決めた。デザインのアイデアの元となったのは意外にもファッション雑誌で、当時のサイケ調とかいろいろが参考になったという。

 池谷は一度限りで倒されてしまう宇宙人側に愛着があったという。そんなスタッフの気持ちが現われたのが第26話「超兵器R-1号」というエピソード。地球人が惑星を丸ごと破壊する爆弾R-1号を開発し、テストでギエロン星を破壊するが、その星の生物が怪獣化し、地球に復讐にやってくる、というあらすじである。セブンは勝利するが、元々は地球人側が原因で起きた悲劇だった。セブンは正義とは何かで苦悩し始める。



・第三の視点 脚本家 金城哲夫(きんじょう・てつお)

 そして「正義とは何か」というテーマの頂点が、第42話「ノンマルトの使者」だった。脚本を書いたのは金城哲夫。あらすじは、ノンマルトという種族が海から地上に攻撃を仕掛けてくるが、実はノンマルトが地球の先住民で、人間はノンマルトを海底に追いやった侵略者ではないか、という疑問がつきつけられる。セブンはノンマルトと戦うが、もし人間が侵略者ならセブンもそれを手伝った事になってしまう。放送当時はベトナム戦争真っ只中で、正義とは何かが混沌としていた頃だった。

 しかし、こういった方向に進んだ事で、物語は難解になりすぎ、セブンの視聴率は低下していき、ついに第49話で打ち切られることになった。

 金城哲夫はその後円谷プロを離れ、故郷の沖縄と本土の交流に尽力するが、1976年に事故にあい、37歳で亡くなった。


感想

 「ウルトラセブンとは何か?」を1時間で手堅くまとめた、なかなかの番組で有りました。セブンが、ビートルズ来日だのと同じ歴史上の事件になったのか、とおもうとちょっと感慨深いですね。

 森次晃嗣のギャラって現代換算でどのくらいなのか良くわからないけど、食え無さそうなのは伝わってきました。あと股間のモッコリ対策とかのエピソードとか、冬木透の大忙し録音話とか、ウルトラアイの効果がネズミ花火とか、ちょこちょこ面白かったですよ。