感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン9」第5話「蝿の王」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン9 http://dlife.disney.co.jp/program/drama/xfile_s9.html
放送 Dlife。全20話。

【※以下ネタバレ】
 
※シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ
 

第5話 蝿の王 LORD OF THE FILES

 

あらすじ

 お題は「未知の生物」。


 ドゲットとレイエスは、学生が異常な死に方をしたという事件で呼び出される。学生は左顔面が陥没しており、頭の中には蠅の大群が巣くっていた。スカリーの検死の結果、死因は蠅が脳を食べつくしたためで、その結果頭蓋骨が陥没したと解るが、普通の蠅が何故その様な行動に及んだのかは不明だった。

 レイエスは、死んだ学生と関りがありそうな生徒ディランに事情聴取を行う。ディランの母親は学校の校長で、その事もあり、ディランは死んだ学生の属していたグループの生徒からいじめを受けていた。ところが聴取の最中、ディランの体に大量の蠅がたかり、ドゲットたちを驚かせる。

 調査の結果、ディランの汗からは蠅を引き付けるフェロモンが検出されるが、ディランが特異体質だとしても、蠅に人間を襲わせることが出来るとは考えられず、捜査は難航する。

 やがてディランをいじめていたグループが、ディランを殺人犯だと決めつけ吊るしあげようとするが、逆にディランに叩きのめされる。ディランは普通の人間ではなく、口から糸を吐いて人間を身動きできないようにする能力があると解り、ドゲットたちは行方を探し回るが、ディランの家で糸に包まれて死んだ四つの死体を見つけただけで、結局母子共々取り逃がす。おそらく、ディランと母親は人間と昆虫と中間にある突然変異体だったに違いなかった。

 最後。ディランが好きだった女の子の家の窓の外に飛んでいる蛍が、「I LOVE YOU」という文字を形作るシーンで〆。


監督 キム・マナーズ
脚本 トーマス・シュノーズ


感想

 評価は△。

 サブタイトルが有名な小説「蠅の王」と同じなので、重苦しいホラーストーリーを期待してたら、実際は薄っぺらい内容の凡作でしか無かったので、失望甚だしかった。


 十代の学生たちの話、性格は悪いが人気者のカースト上位の学生たち、そんな連中と付き合う女の子、女の子に好意を寄せているがカースト下位のいじめられっ子、等、既存の学園物で使い古されたような設定ばかりが連発されたため、いきなり序盤から話への興味を維持するのがひどく困難だった。

 また、それでも「いじめられっ子か突如手に入れた超常の力でカースト上位の相手に復讐する」という真相ならまだ面白かった気がするが、結局「ディランたちは人間とは違う未知の生物」という事になり、ディランたちが口から糸を吐いて人間を身動きできなくさせ始めたあたりで、もうまじめに視聴する気力を失ってしまった。いくらなんでも、この展開はあまりにもあんまりすぎたのではなかろうか。

 結末も、実は人間ではなかった隣人が車でどこかへと消えていく、というシーンで締めれば、まだいくらか余韻が残ったと思うが、実際にはディランが好きな女の子にホタルの光で「I LOVE YOU」というメッセージを送るという、ロマンチックというか馬鹿馬鹿しいというかのシーンで〆となってしまい、結局最後まで全くノリきれないエピソードとなってしまった。


 ところで、驚くべきことだが、このエピソードは、アメリカ人にとっては「ユーモア話」という事になっているそうである。アメリカ人の笑いの感覚は、日本人のそれとはかなり違うと痛感させられる。まあ確かに昆虫学者のブロンジーニ博士のキャラクターはユーモラスで、スカリーにしきりに色目を使うシーンは面白かったし、博士とスカリーが「フェロモンが濃くなった」と言って空を見上げている間に、その後ろをディランが自転車で通り過ぎるシーンもちょっとクスッとしたことは認める。しかし全体的に見て、この話を「ユーモア」枠に入れる日本人は、あまりいないような気がする。


 しかしまあ、ディランや母親の口の中に何か黒っぽい物がうごめいている、という描写は、シーズン5・第15話「旅人」に使われたギミックを思い出させる不気味さだったので、そこだけはちょっと評価したい。


シーズン9の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら

「X-ファイル シーズン9」あらすじ・感想まとめ