劇場版 AIR http://www.toei-anim.co.jp/movie/movie_air/
AT-X。2017年4月30日(日)
【※以下ネタバレ】
あらすじ
ある夏。とある海沿いの町に国崎往人(くにさき・ゆきと)という青年がやってきた。往人は不思議な力で人形を動かすことが出来、それを大道芸として披露して小銭を稼ぎながらあちこちを放浪していた。往人は死んだ母親から「空にいる少女を救って」という謎めいた遺言を残されていた。
やがて往人は神尾観鈴という少女に出会い、彼女の夏休みのフィールドワークである町の調査に付き合うことになった。往人は、稼ぎ時と見ていた夏祭りはまだ一週間も先のため弱り果てるが、観鈴の好意で彼女の家の物置を寝床として提供してもらえることになる。
実は観鈴は体が弱く、過去一年一度も学校に行っていなかった。さらに往人は観鈴の母・晴子から、観鈴は原因不明の病気を患っており、一日一日衰弱していっていること、を聞かされる。晴子は観鈴の実の母親ではなく、亡くなった観鈴の実母の姉だった。
その昔。翼を持つ人間「翼人」(よくじん)の女「八百比丘尼」が捕らえられ、身ごもっていた八百比丘尼はやがて娘「神奈」を生む。しかし二人はすぐに引き放され、別々の場所で幽閉された。成長した神奈は「柳也」という若者と愛し合うようになるが、柳也に愛を告白したことで呪いが発動し、全身の激痛に苦しめられるようになった。柳也は神奈を逃がそうとするが殺され、神奈もまた飛び去ろうとして矢で殺される。しかし不思議なことに、こと切れた神奈の遺体は空に浮かんだままだったという。
夏祭り当日。往人は状況にいたたまれなくなり、黙って神尾家を立ち去った。晴子は、急激に病が悪化していく観鈴を見ていられなくなり、観鈴の父親を呼び寄せて都会の病院に入院させようとするが、晴子と別れることを嫌がる観鈴は逃げ出してしまう。都合で町に戻ってきてしまった往人は、晴子と共に観鈴を探し、ようやく見つけて連れ戻す。
改めて入院することになった観鈴は、往人・晴子と共に海岸に行く。そして砂浜で二人を離れたところに立たせて、最後の力を振り絞って二人のところにたどり着き、ゴールしたと言って倒れる。
最後。町を離れる往人が、観鈴からもらった恐竜人形を持っている事を示すシーンで〆。
感想
評価は△。
日本アニメ界の偉人・出﨑統(でざき・おさむ)が、何故か1990年代~ゼロ年代の感動系ゲームの最高峰AIRのアニメ映画の監督をやってしまった作品。そもそも、どのような勢力が、この人にこのアニメの監督をやらせたのか……、あの富野由悠季にハーレム系ライトノベルのアニメの監督を依頼するくらいの場違いっぷりでしょう。
内容は、原作のゲームの本筋である観鈴編を90分にダイジェスト化したもので、概ねのあらすじは同じなのですが……、原作ゲームの「最初は面白おかしいコメディ話なのに、だんだんとシリアス風味になっていって、最後は号泣必至の展開になる」というあのタッチがまるで再現されていないのがなんとも辛い。最初から妙に重苦しいシリアス雰囲気でスタートし、それがラストまで続くのです。あの有名な「国崎最高!」とか「ドロリ濃厚ピーチ味」とかのギャグは全てカット……、なんてこったい!
あらすじは一緒なだけに、雰囲気の違いがとにかく際立ってしまい……、『見せ方』というか『演出』というか、の違いで、あの感動作品がまるで別物になってしまう事をまざまざと見せつけられました。映画はもう最初の15分で辛くなって、あとはひたすら最後まで耐えて……、という苦しい視聴体験となってしまうことに……
久川綾演じる晴子さんの演技は絶品だったし、観鈴ちんがだんだん弱っていって、最後に砂浜でゴールするあのシーンとかは名曲「青空」をきちんと流したりして悪くなかったのですが……、ゲームのAIRもまかり間違えばこんな微妙な感じの作品になっていたのかもしれない……、と思うと身震いしそうです。
原作ゲームファンとしては「こんなパラレルワールド的作品もあったんだな」と把握した以上の意味は感じませんでした……
「昔々あるところに、翼のあるお姫様がおりました。お姫様はひとりぼっちで、ただ一人の友達も持ってはいないのでした…」
海と空が見えるその小さな町には、はるか昔から伝わる物語があった。背に白い翼を持った姫と、彼女を護衛した青年の悲しい恋の物語だ。
姫君は、その異様な姿のために屋敷に閉じ込められ、外の世界を見たことさえなかった。遠くに母親がいるらしいと聞いたことはあっても、会いにいくなど到底無理な話である。
ある時、ひとりぼっちだった姫君の前に一人の青年が現れる。青年は姫君に外の世界の話を聞かせ、喜ばせる。そして姫君と青年はいつしか恋に落ちていく。しかし、翼を持つものには、恋をしてはならない、という呪いがかけられていた…。
少女――神尾観鈴は、一人ぼっちの自分と、物語の姫君を重ね合わせていた。病気がちな観鈴は学校にも行かず、友達もいない。この町から出たこともない。でも、いつか自分にも、姫君と同じような出会いが待っているかもしれない…。
そんな観鈴の前に、一人の青年――国崎往人が現れる。彼は人形芸をしながら旅をしている青年だった。彼には、死んだ母親から伝えられた言葉があった。「空にいる少女を救って」
呪いを受けながらも恋をした翼の姫君と護衛の青年。翼の姫君に自分を重ねる少女。そして「空にいる少女」を救う旅をする青年…。現在と過去が交錯し、思いが時を超えていく。それぞれの恋はどのような結末を迎えるのか…?
<スタッフ>
原作:ビジュアルアーツ/Key
脚本:中村誠
キャラクターデザイン:小林明美
作画監督:窪秀巳
美術監督:行信三
音楽:周防義和
監督:出﨑統
制作:東映アニメーション
<キャスト>
神尾観鈴:川上とも子
神尾晴子:久川綾
国崎往人:緑川光
神奈:西村ちなみ
裏葉:井上喜久子
柳也:神奈延年
橘敬介:三木眞一郎
霧島聖:冬馬由美
ポテト:今野宏美
往人の母:永島由子
八百比丘尼:潘恵子