感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第74話(シーズン3 第21話)「ニトログリセリン」

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【※以下ネタバレ】
 
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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第74話 ニトログリセリン Nitro (シーズン3 第21話)

 

あらすじ

隣国との平和協定締結に反対、自国カラク国王を爆死させて、それを隣国の仕業に見せかけ戦争を画策するゼック将軍。IMFチームは計画阻止のため、人相不明、爆弾のスペシャリストの隣国ハキム大佐という存在を利用、まずはニトログリセリンを奪い出そうとするが、ニトロとは多少のショックでも爆発してしまう爆薬で…。


隣国との平和協定締結に反対のゼック将軍は、隣国の仕業に見せかけ自国のカラク国王を爆死させ、それをきっかけに戦争突入を画策していた。IMFチームは計画阻止のため、人相不明で爆弾のスペシャリストとして名高い、隣国のハキム大佐という存在を利用する。まずは彼の犯行に見せかけニトログリセリンを奪い出そうとするが、ニトロとは多少のショックでも爆発してしまう爆薬で…。


【今回の指令】
 カラク王国(the kingdom of Karak)のサイッド国王(King Said)は、近々隣国アジール共和国(the Republic of Agir)との平和協定を発表する予定である。ところが、協定に反対しているゼック将軍(General Zek)は、軍需工場経営者イズミール・ナジッド(Ismir Najiid)と共謀し、国王を暗殺しようと企んでいる。さらに、ゼックたちは国王暗殺をアジール共和国の仕業だと見せかけることで、両国間で戦争を起こすつもりである。IMFはこの陰謀を防がなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 カラク王国(多分中東の国家)


【作戦】
 ゼック将軍は、部下の工作員スコーラに、爆弾で国王を暗殺する様に指示していた。しかしIMFはスコーラを捕まえて眠らせてしまう。同じころ、フェルプスはゼック将軍たちに、シナモン演じる女性記者は、隣国アジール出身の爆破のプロ「ハキム大佐」とつながりがある、という嘘情報を吹き込む。早速ゼックたちはシナモンを四六時中見張ることにした。

 夜、ローランとウィリーはナジッドの所有する工場に潜入し、ニトログリセリンを盗み出す。さらに眠らせたスコーラに変装マスクをかぶせ、「ハキム大佐」に見せかける。ローランは逆に変装マスクをかぶり、スコーラに成りすます。シナモンは尾行が付いているのを知りつつ「ハキム大佐」のところに出かけ、「ハキム大佐」が心臓麻痺で死んでいるという芝居をする。

 ゼック将軍たちは、シナモンを尋問し、「ハキム大佐」が国王暗殺のため、ニトログリセリンを盗んだ後、リモコン操作のトラックにニトログリセリンを積み込み政府庁舎に突入させるつもりだった、と知る。スコーラに変装したローランは、その計画に便乗しようとゼックたちを説得する。

 翌日、ゼックたちはトラックを国王のいる政府庁舎に突っ込ませようとするが、すぐにローランたちが阻止する。そのあと、ローランはゼックに電話をかけ、爆発音のBGMを背景に、いかにも爆破が成功したように報告する。騙されたゼックは、テレビ放送に出演し国王はアジールに殺されたと発表し、それを見た国王はいぶかしがる。

 一方、政府庁舎内ではIMFがナジッドに麻酔を打ち、喋れるが体は動かない状態にしてしまう。IMFはナジッドから見えるようにリモコントラックを政府庁舎に走らせ始める。それを見たナジッドは爆破に巻き込まれると焦り、「ゼックの陰謀でトラックに爆弾が積んである」と口走る。トラックから「ハキム大佐」が連れてこられるが、マスクをはがすと、素顔は工作員スコーラだった。ナジッドは国王に詰問され、自分は陰謀に関係ないと言い訳するが、もちろんそんな言葉が通じるはずもなかった。

 最後、国王がゼック将軍とナジッドを反逆罪で逮捕するように命じ、IMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: ブルース・ケスラー
脚本: ローレンス・ヒース


感想

 評価はぎりぎりで○。

 シナリオの質はいまいちで、あちこちに色々な粗、あるいは不満点が有り、なんとか視聴に耐えられるというレベルだった。しかしまあ、一応「IMFが計略で悪党を懲らしめる」という基本パターンは守っていたので、ぎりぎりで何とか楽しめた。


 前述の通り、今回の話は突っ込みどころが多く、視聴しつつ気になって仕方なかった。まず一点目は、ゼック将軍たちはシナモンを尾行し、ハキム大佐の死体(本当は眠らされてマスクをかぶせられている工作員スコーラ)を見つけるのだが、実際のところスコーラは薬で眠っているだけであり、ちょっと調べれば生きていることがすぐ判るはずである。しかしそれではIMFの計略が成立しないので、ゼックたちは眠っている人間を死体と思い込むほど無能という事にして、強引に話を進めてしまっている。これはちょっといただけない。

 また、IMFニトログリセリンを盗む際、乗っていたトラックが銃撃されて、ブレーキオイル(?)が漏れ出す描写があるが、追手が垂れたオイルを追いかけてくれば、すぐさまIMFのアジトがばれてしまうはずだが、そういう事態にはならないのは都合が良すぎる気がする。ちなみに、このブレーキオイル漏れは、最後の最後になってリモコントラックのブレーキが効かなくなり、バーニーのコントロールを離れて政府庁舎に突っ込みかける、という事態を引き起こす。スパイ大作戦でこういうアクシデントを盛り込むのは、今一つ番組にそぐわない気がする。


 また粗という訳ではないが、ローランがナジッドの工場からニトログリセリンを盗み出すシーンは、ストーリーの本質とは関係ないにも関わらず、無駄に時間が長く、ちょっと退屈させられた。ローランがニトログリセリンを保管場所から取り出す際に緊張して見せるところとかは特に必要なかった様に思われる。またニトログリセリンを積んだ箱をフォークリフトで運ぼうとしたところバッテリー切れになってしまい、慌てて別の車両からバッテリーを持ってくる展開など、これも本質と関係ないトラブルでいまいち乗りきれなかった。


 とは言え、多少は面白いシーンもあり、終盤にローランがゼックを騙すため、爆発音をテープでBGMとして流しつつ、爆破の惨状を即興で喋るシーンは楽しかった。ローランは感情をこめて、「トラックが政府庁舎に突入します……、爆発しました! ああっ、凄い火の玉だ! 予想はしていましたがこれほどとは! とても見てはいられない、これは酷過ぎる……、これは地獄ですよ!」とか喋りまくっているのが、真相を分かっている視聴者としてはひたすら楽しかった。

 また陰謀の首謀者の一人ナジッドに麻酔を打ち込んで、「喋れるが動けない」状態にしておいてから、ナジッドに見えるようにリモコントラックをじわじわ走らせ、爆発に巻き込まれると焦らせてナジッドを自白に追い込む、という展開もスパイ大作戦らしさが出ている展開であった。

 という事で、粗い部分も多々あったものの、最後はなんとかうまくまとめたので、それなりの満足度にはなったエピソードだった。


 ところで今回バーニーは、ローランたちのニトログリセリンの盗み出しを支援するため、工場のコンピューターのプログラムに細工を行うが、そのシーンがなんとなく「らしい」ので妙に印象的だった。バーニーが工場に乗り込み、バインダーに閉じた資料を開いてそばに置き、それを見つつひたすらキーボードをたたきまくるのだが、資料を見ると「OPRATION」とか「OPERAND」とか書いてあって、それっぽい命令文が記載されているのである。

 さすがに1960年代のメインフレームのプログラム現場にはいなかったので、この作業シーンがどれだけリアルなのか、はたまた大嘘だらけのシーンなのかは判断がつかないが、50年前のコンピューター技術者はこんな風に仕事をしていたのかもしれないな、と、妙に感慨深かった。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが建物の階段を上り、部屋(資料室?)に入る。そして鍵のかかった本棚のガラス扉を開けて、本の間からリールに巻き付けられているフィルムを取り出す。フェルプスはそのフィルムをリーダーに取り付け、ハンドルをぐるぐる回すと、画像と音声が再生され、フェルプスは指令を聞きつつ画像を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、巻き取ったフィルムから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。今君が見ているのはカラク王国のゼック将軍である。このゼック将軍は、隣国アジール共和国との平和協定に反対、軍需工場を経営しているその人物イズミール・ナジッドと共謀して、両国の間に逆に戦争を誘発させようとしている。すなわち、カラク王国の国王サイッドが平和協定を公表する政府庁舎を爆砕し、これを隣国アジール共和国の仕業だと思わせるのが、その具体的計画である。

 そこで君の使命だが、この計画を未然に防ぎ、再び彼らが平和をおびやかすことがないようにすることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ