感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第60話(シーズン3 第7話)「若返った女帝」


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【※以下ネタバレ】
 
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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン3」あらすじ・感想まとめ
 

第60話 若返った女帝 The Elixir (シーズン3 第7話)

 

あらすじ

大統領が急死したサン・コルトバ。大統領夫人が自由選挙を待たずに夫の地位を継ぎ、独裁政権の樹立を計画する。IMFチームは永遠の美への執着も強烈な彼女に、、“10歳若返る手術”でその野望を打ち砕く。


大統領が急死したサン・コルトバ。大統領夫人が選挙を行なわず夫の地位を継ぐと宣言、そのまま独裁政権樹立を計画していた。IMFチームは美への執着も強烈な彼女に、“10歳若返る方法”の存在をわざと知られることで、テレビ会見のタイミングをずらすと共に彼女の野望を打ち砕く。

※DVD版のタイトルは「独裁宣言」。


【今回の指令】
 先日サン・コルドバ(San Cordova)の大統領が死去したが、大統領生存中から同国の政治の実権は夫人のリバ・サンデル(Riva Santel)が握っていた。同国首相代行のトーマス・アビラ(Tomas Avilla)は、近く自由選挙を実施する予定だが、リバ・サンテルはその前にテレビ演説を行い、それをきっかけに一気にサン・コルドバの独裁者になろうと目論んでいる。IMFはリバ・サンデルの野望を粉砕し、サン・コルドバに自由選挙を行わせなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ベルグナー博士(美容整形の名医)


【作戦の舞台】
 サン・コルドバ


【作戦】
 リバ・サンデルは既に軍部と話をつけており、自分のテレビ演説の放送と同時に軍を武装蜂起させ、一気に権力を握る段取りを整えていた。

 IMFはテレビ撮影チームとして大統領官邸に乗り込み、リバ・サンデルに有名な施設の内部を紹介するドキュメンタリーを撮影したいと頼む。そしてこっそり官邸内の歴史書を入れ替えた後、リバ・サンデルがホステス役、シナモンが視聴者代表、という形で撮影を始める。ところがシナモンは歴史書を見るなりいきなり動揺し、さらに調子が悪いのでかかりつけの医者を呼んでほしいと騒ぐ。

 リバ・サンデルは、歴史書の1914年の写真(このエピソードの放送は1968年)に「大使の娘」として今と変わらないシナモンの姿が写っていること、また一瞬シナモンが老いた顔を見せたことから、シナモンは70歳以上なのに30代にしか見えないような驚異的若返り処置を受けていると思い込む。医者役のローランは、シリコン注射・特殊光線の照射・特殊血清を使えば、100年でも若い姿のままで居られると説明する。リバ・サンデルはその話を信じ込み、自分も若返りの処置してほしいと頼み、ローランは10歳は若く出来ると請け合う。

 手術前にリバ・サンデルは国民向けのテレビ演説をビデオに撮影し、テープは金庫にしまい込む。その後、ローランは本物の医者のベルグナー博士を助手という事にして呼び寄せ、リバ・サンデルに本物の手術を行ってもらう。またバーニーは演説の録画されたビデオテープを盗み出すと、内容を編集してから金庫に戻す。

 シナモンはリバ・サンデルに変装して車で国境まで行き、警護役のフェルプスは国境の警備員に「リバ・サンデルは今から国外に出る」と伝えてそのまま立ち去る。

 やがてテレビでリバ・サンデルの演説が放送されるが、内容はリバ・サンデルが全ての公職から身を引くという物に変更されていた。それを知ってアビラたち政府閣僚は、驚くと同時に歓喜する。リバ・サンデルは予想外の事態に狼狽して、慌てて顔の包帯をむしり取るが、顔が整形手術で全くの別人に変えられていた。リバ・サンデルはアビラに自分がリバ・サンデルだと主張するが、アビラは相手にせず警備員に外に放り出せと命じる。それを確認したローランたちが車で立ち去るシーンで〆。


監督: ジョン・フロレア
脚本: マックス・ホッジ


感想

 評価は○。

 IMFが途方もない若返り技術をエサにターゲットを騙すというエピソードで、まずまずの面白さだった。


 今回のエピソードのメインとなるのが、IMFがでっち上げた驚異的な若返り技術である。医師役のローランの説明によれば、簡単なシリコン注射を行った後、ローランが開発した特殊光線を照射すればたちまち若返り、さらにこれまたローラン開発の特殊血清を打てば100年でも若さが維持できる、ということになっている。IMFが相手を騙す内容は、現実味があるよりも突拍子もない大ボラの方が視聴者的には面白いので、今回のようなリアリティ皆無の設定は大歓迎だった。

 このとんでもない話を信じさせるため、IMFはあらかじめニセの歴史書に、「今と同じ姿のシナモンが写っている1914年(54年前)の写真」を載せておき、それがリバ・サンデルの目に留まるようにお芝居をするが、全てが嘘だと解っている視聴者からすると、このあたりの流れは半笑いを浮かべたくなってしまうような楽しさである。

 まあ、「顔だけが30代に若返っても、首から下が70歳に老いてしまったら仕方ないのでは?」とかいう疑問もわいては来たが、この若返り話にリバ・サンデルがグイグイ食いついてくる展開が痛快なので、そういう些細なことは頭から吹っ飛んでしまった。

 今回はバーニーが演説の録画されたビデオテープを編集して、全く別の内容に作り替えてしまうのだが、そのシーンが実に大変そうだった。なにせ、モニター画面でシーンを確認し、ペンでテープに線を引いて印をつけ、鋏で切り取った後、専用のテープ繋ぎ装置にかけ、液体ノリを塗り、接続用テープを貼り付け、という事を延々とやっているのである。今なら素人でもパソコンで手軽に動画編集できるご時世だが、アナログ時代は本当に手間がかかったのだなぁとしみじみしてしまった。

 終盤、シナモンが黒いかつらをかぶってリバ・サンデルに変装し、国境から出国する場面があるが、その際シナモンは黒いベールで顔を覆っており、そもそも誰なのかすらよく解らない状態である。しかも声もシナモンの地声のまま。にもかかわらず、国境警備兵がその姿を見ただけでリバ・サンデルと認めて簡単にいかせてしまうシーンにはちょっと苦笑した。

 最後、リバ・サンデルのテレビ演説の内容が意図とは全く反対の公職引退宣言に作り替えられ、クーデター計画が一気に壊滅してしまう流れは、いかにもスパイ大作戦テイストで面白かった。しかし、視聴者的には「テープの改変だけでクーデターを阻止できたなら、若返り手術云々の作戦は不必要だったのでは?」と思わされた。それだけに、その直後にリバ・サンデルが顔の包帯をむしり取ると、なんと全く別人の顔になっていた、という展開はなかなか衝撃的だった。

 IMFはリバ・サンデルの顔を変えてしまう事で、この世から完全に存在を消すことに成功したわけである。IMFは元の顔を勝手に変えてしまった訳で、結構えげつない事をするなぁとやや引いてしまったが、まあ二目と見られないような顔にはせず、そこそこ美人顔に作り替えただけだったのは、ある種の情けだったのかもしれない。もっとも指紋を調べれば彼女がリバ・サンデルであることは容易に確認できるはずだが、既にクーデター計画は失敗してしまったので、IMFは少しでも時間が稼げれば、あとから指紋で確認されても特に問題はないと判断したのであろうか。


 今回のサブタイトルの原題「The Elixir」とは「不老長寿の薬」といった意味。劇中の若返り術の事を示している。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが薄暗い小部屋に入り、待っていた男に「特別試写に来た」と告げてから椅子に座る。そして椅子の側に置いてあったオープンリール式テープレコーダーのスイッチを入れる。同時に前方の幕が開いて、写真が投影される。フェルプスは指令を聞きつつ投影された画像を確認する。指令は最後に「なお、この録音テープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。この女はリバ・サンテルといって、サン・コルドバの、今は亡き前大統領の未亡人であるが、大統領生存中も政治の実権は彼女が握り、やがては独裁政権を打ち立てるため、サン・コルドバの民衆に崇拝心を植えつけるべく計画的にその名前と顔を売ってきた女傑である。一方、三日後にこの現首相代理トーマス・アビラが自由選挙の声明を行う予定であるが、それに先駆けてリバ・サンテルはテレビ放送を通じて一挙にサン・コルドバの独裁権をその手に収めようとしている。

 そこで君の使命だが、このリバ・サンテルの野心を粉砕し、サン・コルドバの民衆に自由選挙を行わせることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音テープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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