【ドラマ】感想:NHK番組「ルパンからの予告状! 謎とスリルに満ちた伝説の至宝」

怪盗アルセーヌ・ルパン (10歳までに読みたい世界名作)

ルパンからの予告状~謎とスリルに満ちた伝説の至宝~ http://www4.nhk.or.jp/P4542/
放送 NHK BSプレミアム。2017年7月29日(土) 22:00~23:30。

【※以下ネタバレ】
 

内容

怪盗アルセーヌ・ルパンなら、今どんな秘宝を狙うのか?ルパンの予告状をヒントに謎解きへ旅立つ新感覚アートミステリー!最新の科学分析の数々!ルパンの狙いを見破れ!


怪盗アルセーヌ・ルパンなら、今どんな秘宝を狙うのか?ルパンからの予告状をヒントに謎解きへ旅立つ新感覚アートミステリー!世にお宝は数々あれど、ルパンが狙うのは魔力や伝説に彩られ、運命すら狂わせる至宝。そしてそれは確かに実在する!今回の予告は「幻の名画を頂戴する」。イタリアで、イギリスで、日本で、最新の科学分析と知見から、新たに発見されている幻の名画とは?ルパンが狙う宝を、あなたは見破れるか!


【出演】萩原聖人,サマーズ・ローズ,【声】小松由佳,小原雅人,【語り】池田達郎


●ルパンの予告

 7月15日(土) 。怪盗アルセーヌ・ルパンが突如世界中に「7月29日(土) 24時に幻の名画を頂戴する」と予告した。インターポールの美術専門の捜査官・森真白(萩原聖人)と、真白とコンビを組むことになったサラ・クリスティー(サマーズ・ローズ)は、ルパンが狙う名画をまず絞り込もうと調査を開始する。


フェルメールの幻の名画

 真白が第一の候補に挙げたのはフェルメールの「ヴァージナルの前に座る若い女」。20世紀に初めて存在が確認された。フェルメールは現存する作品が30数点しかないため、新作が発見されれば大ニュースで「幻の名画」という名前に相応しい。しかし「サイズが小さい」「色が暗い」「服の描き方が拙い」といった理由から偽物と見なされてきた。

 その後、科学分析により、フェルメール時代の作品ということは確定したものの、フェルメールの作品とはみなされず贋作扱いされていた。ルパンはこの絵が真作だという証拠を見つけたのか?


●徳川家の幻の名画

 悩む真白の元にルパンからヒントが届く。それは「至宝は時に価値が逆転する」という言葉だった。その言葉に真白は、日本の名画「八尾狐図」(やおのきつねず)を思い出し、サラを日本に派遣する。この絵は2015年に発見されたが、当初は大した作品とはみなされていなかった。

 しかし調査の結果、徳川家光が、当時を代表する絵師・狩野探幽に描かせたものであることが解り、存在だけが伝わってきた幻の名画であると確定したのである。まさに「価値が逆転」したのである。


●再び、フェルメールの幻の名画

 「価値の逆転」というキーワードに、真白は「ヴァージナルの前に座る若い女」に新情報があったことを思い出す。まず「絵が暗い」というのは絵が汚れていたせいであり、綺麗にしてみるとフェルメールらしい明るさが蘇った。さらに「服の描き方が拙い」というのも、X線で調べてみると、どうやら別の人物が服の部分だけ描き足したことが判明した。おそらくフェルメールが亡くなった時点で絵は未完成で、誰かが絵を売るために描き足しを行ったらしい。

 こうして「ヴァージナルの前に座る若い女」は、贋作扱いから一転真作として認められたのである。


ダ・ヴィンチの幻の名画

 真白とサラは二作品をルパンのターゲットとして確定した。ところがさらにルパンからビデオメッセージが届き、チアガールが踊る映像が収められていた。真白はこれがホームズの「踊る人形暗号」だと気が付き、メッセージ「CERCA TROVA」だと解読する。これはイタリア語で「探せ されば見つからん」という意味だった。真白はこれが「ダ・ヴィンチの幻の名画」を意味していると察し、サラをイタリアに派遣する。

 「ダ・ヴィンチの幻の名画」とは壁画で、兵士たちが軍旗を奪い合う姿が描かれていると推測されている。ルーベンスの模写やダ・ヴィンチ自身のスケッチもあることから、存在していたことは確実だが、今どこにあるのかは忘れ去られている。

 研究者は、イタリア・フィレンツェの市庁舎として今も使用されているヴェッキオ宮殿にあるはずと語る。現在宮殿内はジョルジョ・ヴァザーリの壁画で埋め尽くされているが、その絵の中に隠しメッセージで「CERCA TROVA」と書かれていたのである。研究者は壁画の後ろに、ダ・ヴィンチの絵が隠されているはずと確信し、小さな穴を開けて調べたところ、確かに後ろに空間と壁があった。さらに、その隠れていた壁からこそぎ取ったサンプルからは、絵の顔料らしきものが確認されたのである。


●エピローグ

 真白とサラは、上記三枚をルパンのターゲットと確信し、厳重な警備を依頼する。そして予告時間、どの絵のところにもルパンは現れなかった。喜ぶ真白とサラだったが、直後ルパンから電話がかかり「対象は幻の絵と言ったはず。私を止めることはできなかったな」と勝利宣言されてしまう。慌てた真白たちがヴァザーリの壁画をよく見ると、隠し文字が「EUREKA Lupin」(見つけた ルパン)に変わってしまっていた。最後、奇岩城でルパンがダ・ヴィンチの壁画を見ながら悦に入っているシーンで〆。


感想

 いやー、めっちゃくちゃ面白かった。何の告知も無く(というか、やっていたとしても気が付かなかった)さらっと放送されたので、まだ美術解説番組かと思っていたら、本格的なミステリードラマ仕立ての番組で堪能しちゃいました。こんなのをさりげなく放送してくるから、NHKは油断がなりません(笑)


 内容はドラマとドキュメンタリーの融合番組。基本的には「怪盗ルパンの盗みを止めるため絵について捜査官が調査を行う」というドラマですが、捜査官が調査のため美術の専門家を訪ねる、という部分がドキュメンタリーとなっています。そして専門家の語る内容を、いかにも捜査官が聞き取りをしている、みたいに見せて、話をうまくつなげています。「どーせルパン云々といっても、タイトルで釣っているだけなのでしょ?」とか侮っていたので、ここまでドラマに寄せた内容とは思わなくて嬉しい驚きでした。

 ちなみに、冒頭でガニマール警視が記者会見をして「ルパンはつかまえてやる」と豪語していると、記者たちのスマホにルパンから「無理だ」メッセージが届く、というくだりは、ドラマ「シャーロック」のパロディでめちゃくちゃ笑いました。こうしてみると、このドラマは「シャーロック」のように、21世紀にルパンがいる世界、という設定みたいですね。

 幻の名画に関するうんちくがこれでもかと語られて、美術ドキュメンタリーとして十分面白かったのですが、ラストでルパンが勝利して、戦利品を奇岩城に持って帰っている、という結末がなんとも嬉しい。なんというかルパン好きのツボが解ってますね。

 楽しい一時間半でした。

([る]1-1)奇巌城 怪盗ルパン全集シリーズ(1) (ポプラ文庫クラシック)