感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第104話(シーズン4 最終話(第26話))「ヤング・パワー」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ

 

第104話 ヤング・パワー The Martyr (シーズン4 第26話)(シーズン4最終話)

 

あらすじ

学生大会に乗じて若者たちを懐柔し、若者の反政府運動を収束させようと企む東側陣営国の首相。彼の策略を白日の下にさらすため、パリス(レナード・ニモイ)がこの国で民主主義に殉じた哲学者の息子に扮し、首相らに接近する。


【今回の指令】
 某国では激しい学生運動に対処するため、首相アントン・ロジェック(Premier Anton Rojek)と、その側近ヨセフ・チャーニー(Josef Czerny)は、特別学生大会を開催することを決定した。しかし、これは中身の無いイベントに終わることは必至である。IMFは大会中に首相たちの欺瞞を世界中に知らしめなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ロキシー


【作戦の舞台】
 カリシシア、あるいは、カリシア人民共和国


【作戦】
 カリシアでは、20年前の政変で、当時の首相で西側に友好的だったエドワード・マリックが殺され、以後マリックは西側帝国主義の傀儡という扱いとなっていた。またマリック夫人のマリアは以後精神病院に監禁されていた。しかし、学生たちの間ではマリックは、死後もカリスマ的な存在として尊敬されていた。

 IMFは20年前に5歳で死んだマリックの息子ピーターを蘇らせる作戦を開始した。そしてまずマリアにこっそり「ピーターが生きていることは大会まで隠す」というメッセージを送り付ける。

 フェルプスはアメリカのスパイという設定でカリシア在住の工作員に接触し、大会に来ているピーターという若者を誘拐しろと依頼し、さらにマリアに手紙を届けろと頼む。しかしその工作員は実はカリシア政府の二重スパイで、手紙はロジェック首相の元に届く。手紙には「スイスから来たピーターという若者は、20年前に死んだはずのあなた(マリア)の息子だが、本人はそれを知らない」と書かれていた。

 ロジェック首相はピーター(パリス)に接近して、それと無く話を聞くと、カリシアの体制を称賛し、逆にエドワード・マリックを西側の手先だと軽蔑していた。ロジェック首相はフェルプスを捕まえて、事情を説明させる。フェルプスは20年の政変の際、当時5際のピーターが政治的に利用されないようにスイスに連れて逃げたが、成長したピーターは父親を殺したカリシア政府を称賛するようになってしまったので、連れ戻しに来たのだという。

 ロジェック首相は、ピーターに自身の素性を教え、明日の大会で演説してカリシアの体制を支持し、マリック元首相を批判するように頼む。

 ところが、その夜、とある医者(実はIMFの協力者)が、ロジェック首相に、20年前にピーターは5歳で肺炎で死んだ、と連絡する。首相たちが死体を調べてみると本物だと解り、ロジェック首相は、全てはアメリカの罠であり、アメリカは明日の大会で偽ピーターにカリシア政府を批判させる演説をさせるに違いないと確信する。ロジェック首相は、それを逆手に取り、その場でピーターが偽物だと明かし、さらにその場にマリアやフェルプスも呼んでおき、三人まとめてアメリカの手先だと糾弾してやろうと企む。

 大会当日。ロジェックの考えとは裏腹に、パリスは演説で父親のマリックを徹底的に攻撃しはじめた。マリアはそれを聞いて、この男は息子ピーターではなく、そもそもピーターは20年前に死んでいるので偽物だと叫ぶ。慌ててロジェック首相はマリアを連れて行かせるが、IMFメンバーのロキシーが「マリアを返せ」と叫び、それにつられて学生たちが大合唱を始めて収拾がつかなくなる。その混乱の中でIMFメンバーがマリアを連れて車で逃げたすシーンで〆。


監督: ヴァージル・ヴォゲル
脚本: ケン・ペットス

感想

 評価は△。

 恐ろしく中身が薄く、IMFの作戦も底が浅く、もうこれはないだろうというレベルの話だった。


 今回は学生運動を扱ったエピソードである。実は、この話が放送された時期(1970年3月)は、フランス五月革命(1968年5月)を始めとして世界的に学生運動が盛り上がっていた頃で、当時の旬のネタを扱った話ということになる。もっともストーリー的には全くイマイチとしか言いようがなかったが……

 そもそも失笑してしまうのが、パリスの設定。パリスは20年前に5歳だった若者ピーターに扮するのだが、放送当時パリス役のレナード・ニモイは39歳だった。ロジェック首相たちは、最初パリスが本物のピーターだと信じ込むが、25歳の若者と39歳の中年の見分けもつかないのかと突っ込みたくなる。

 もうこのパリス/ピーターの設定だけで真面目に見る気が無くなったが、さらにバーニーもいつもの落ち着いた姿ではなく、やたら若作りした格好で学生大会に参加していて、荒っぽい態度で騒ぎを起こし、警官に「最近の若いやつは……」と言われてしまうのだが、バーニー役グレッグ・モリスもこの時既に37歳くらいだった。という具合で、今回は30代後半の俳優たちが学生のふりをして、周囲が若者扱いする、というコントのような展開になっており、居心地の悪さと来たら筆舌に尽くしがたかった。

 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはロキシー Roxy(リン・ケロッグ)。しかし別にミッションに重要な役目を果たすわけでは無く、学生大会でヒッピー風の恰好をして、世界平和を訴える歌をギターで弾き語りしたあと、最後に「マリアを返せ」と叫ぶだけである。ほんのアシスタント的な役割でしかなく、別にエージェントでなくても務まりそうな仕事だった。

 そしてIMFの作戦の底の浅さも酷い物で、50分かけてロジェック首相たちにパリスがマリックの遺児ピーターだと信じ込ませ、次の五分で「実は偽物」と自ら明かすだけ。これでどう収拾をつけるのかと思ったら、最後の五分でロキシーが大会で騒ぎを起こして学生を煽り、収拾がつかなくなるようにする、とそれだけである。IMFが自分からピーターが死んでいるとばらして、ロジェックたちの行動を誘導するというところだけは多少面白かったが、はっきり言って中身が薄い、見ていて徒労感ばかり感じるエピソードだった。

 このエピソードのサブタイトルの原題「The Martyr」とは「殉教者」の意味。学生たちに崇められている故エドワード・マリックを指していると思われる。


 今回の舞台となった国だが、キャラクターたちが「カリシシア」とも「カリシア人民共和国」とも発言するので、どっちなのか全く見当がつかなかった。本当にどっちだったのだろうか。


 さて、今回はおなじみのテープの指令の声に違和感が感じられた。具体的には「おはようフェルプス君」から「懐柔策であることは明らかである。」の部分までが、どうも大平透氏の声に聞こえない。それ以降の「そこで君の使命だが」から最後「成功を祈る」は明らかに大平氏の声なのだが、それ以前の部分は明らかに吹き替えなおしている。これは別人の声なのか、はたまた大平氏の声がめちゃくちゃ変わっていたからなのか、真相が実に気になってしまう……


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが留守の土産物屋(?)に入り、鍵のかかったキャビネを開けて、中から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。熾烈な学生運動に対する緩和策として、首相アントン・ロジェックと、そしてその側近ヨセフ・チャーニーは、特別学生大会を開催することになったが、これが若い世代への懐柔策であることは明らかである。

 そこで君の使命だが、学生のそれを政府御用の骨抜き大会に終わらせず、首相たちの欺瞞を学生たちの前で暴き、全世界に示すことにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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