【TRPG】黎明期のテーブルトークRPG「イメージプレイDO シリーズ」(バンダイ)を研究した

トラベラー・ハンドブック―SFロールプレイング・ゲーム完全入門

 日本のTRPGの歴史は、1984年にツクダの「ローズ・トゥ・ロード」と、HJの「トラベラー」あたりで始まった……、というのが「正史」ですが、実のところそれ以前にもTRPG的な物は有りました……、ということで、世の中にあまり知られていないバンダイのプレTRPG「イメージプレイゲームDo」シリーズについて調べてみました。

日本のTRPG前史

見えざる破壊者―宇宙大作戦 (ハヤカワ文庫 SF 238)

 ローズやトラベラー発売以前の「プレTRPG」は、有名なところでは、1983年にツクダホビーが、当時大ヒットしていた劇場アニメ「クラッシャージョウ」を原作にした「クラッシャージョウ」や、「スタートレック宇宙大作戦」原作の「エンタープライズ」を発売しています。

 どちらも、プレイヤーがキャラクターの役割を果たして冒険を行う、という明確にTRPGではありましたが、いかんせんキャラクターが用意された固定キャラ(いわゆるプレロールドキャラクター)でプレイするタイプだったこともあり、自由度が低いために、あまりウケずに消えてしまいました。

 もっとも、私はエンタープライズTRPGの概念を教えてもらったので、かなり印象深いですね。ゲーム雑誌の広告の、雲をつかむような説明を読んで、よく解らないまま購入したものの、ふたを開けてみて「何だこりゃ……?」。しかしルールブックを読んでみて、「世の中には面白い事を考える人がいるものだ」と感心した記憶もあります。当時は、海外のゲーム文化に詳しい人が、日本にもTRPGを広めようと色々知恵を絞っていたんでしょうね。


バンダイTRPG

 というツクダの正攻法アプローチとは別に、バンダイTRPGを広めようと別の方面からアプローチしていました、というかしていたようです。私は現物を見たことが無いのですが、「イメージプレイゲームDo」という、ボードゲームTRPGを融合させたような何物かを発売していたようなのです。バンダイは当時ボードウォーゲームにも参入して、マニアからは質の低さに失笑を買っていたのですが、1980年代前半はかようにテーブルゲームに力を入れていたようです。

 このシリーズは、内容はゲームボードが有り、同時にプレイヤーは何らかのキャラクターを担当し、ゲームマスターが必要で、用意されたゲームブック的な物を読み上げてゲームを進行させる、という、解るようなわからないようなものだったと伝えられています。

 ラインナップはこちら……、


・Dr.MICRO
・メシアプログラム
笑っていいとも!
・HELP!宝島
源氏物語
・元禄忍者伝
幻魔大戦


 「源氏物語」? 「笑っていいとも!」? というような、この謎過ぎるゲーム群を研究してみました。

Dr.MICRO(ドクター・ミクロ) ファイナルメソッド

ミクロの決死圏 [DVD]

 SF。2015年に人体をミクロ化する技術が開発され、特に医療分野では医療チームを縮小して人体内に送り込み手術するという革命が起きていた。そんなとき政治的に重要な人物が細菌兵器による攻撃を受けたことが判明した。プレイヤーたちは、医療チームのメンバーとして人体内に突入することになった…… という、どう考えても映画「ミクロの決死圏」のパクXです。


 ゲームの様子は、とけねこ先生こと藤浪智之氏のサイトで詳しく紹介されています。めっちゃ面白そう!

300万分の1にミクロ化せよ!
http://www004.upp.so-net.ne.jp/tokeneko/report/reportdrmicro.htm

さて、この『Dr.ミクロ』ですが、これは古典的SF映画『ミクロの決死圏』をイメージしたゲームで、人体を模したマップを用い、パラグラフ(いわばゲームブック型)構成のシナリオをGM(ゲームマスター)が読み上げていくことでゲームが進みます。『ミクロの決死圏』で起きたようなイベントが色々入っており、たとえば、メンバーのなかに「必ずスパイがいる」ことになります。しかも、このスパイ、カードでランダムに決まるため、メンバーはおろか、GMにも誰がスパイなのかわかりません。

「私を信用しろ。前回スパイだった私が再びスパイである確率が最も低いはずだ!」

のちにスパイはパイロットと判明。「妹の治療費が必要なんだ」などととってつけたようなことを言ってましたがあっさり拘束。

 読んでいて死ぬほど笑いました。最高の資料だと思います(笑)


メシアプログラム ギゼ・シティ

ギザの大ピラミッド:5000年の謎を解く (「知の再発見」双書)

 SF。人類が滅びた後の地球を探索するという終末物。

【ゲーム紹介】超懐ゲー・メシアプログラム - パンプキンズ・ギャラリー
http://blog.goo.ne.jp/pumpkinvgz/e/236d6aa455cbe36b06e03845d0eca6a7

基本設定は、戦争か天災かなんらかの原因でかは知らんけど、人類文明崩壊後の世界が舞台で、そこで世界各地に冷凍睡眠されている健康体の少年少女たちを目覚めさせるために、衛星軌道上に設置されている装置から、プレイヤーキャラクターである”メシアメンバー”達が地上に降下し、それぞれのミッションを遂行する、というものなのです。

で、この”ギゼ・シティ”では、名前からわかるかもしれませんが、エジプトに降下したメンバー達の冒険を扱った内容となっています。

ゲームは、付属しているこのマスターブックを元に進行されます。
ここにはキャラクターの説明からアイテム、装備の説明、遭遇する敵やNPCの説明に戦闘やトラブル解決のルールが記載されており、後半部分はシナリオが掲載されています。
シナリオはパラグラフ化されており、それに沿ってGMがメッセージを読み、プレイヤーたちがそれに対処していきます。
この選択次第ではストーリー分岐が発生し、違うルートに突入したりします。

キャラクターは既に設定されており、それが四人で行動することになるのですが、途中はぐれたり色々あったりで、死んじゃったり拉致されたりと様々な事件に遭遇したりします。

また各キャラクターは専門分野が違っていて、あるキャラは重火器が得意だけど、あるキャラは治療ができるなどがあり、さらに特殊能力などもあって、ちょっとしたヒーロー感覚も味わえます(ただこの特殊能力は選択ルール)。

現在の技術からみると、確かにルールは大雑把だし、シナリオは分岐はあるけど基本的には提灯分岐で、最終的には少年少女たちの覚醒で終わる、というものですが(バッドエンドやその他エンドもあります)、これは今でも度々持ち出してはシナリオやカードなどを見返したりしています。

 
 なんとなく劇画な感じの絵が浮かんでくるゲームです。当時としてはなかなかハードな内容ですね。

 こちらの方のサイトも参考になりました。

救世主計画 : 桃色蜥蜴日記
http://polkadot.exblog.jp/3675689/

 
 

笑っていいとも!

タモリの笑っていいとも!―世界にひろげよう友だちの輪ッ (Part2)

 もちろんあのフジテレビのお昼番組の事です。1982年10月スタートですので、発売された1983年頃はまさに旬の番組だったわけですが……、何故これをTRPGにしようとした……

 こちらのサイトでゲーム内容をうかがい知ることが出来ます。

イメージプレイDOシリーズ | ゲームブック日誌 - 楽天ブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/gamebook14/diary/200910250000/

中に入っているのは、マスターブック...所謂ルールブックです。サイコロ...何と八面体です!...そして、LOVE&マネーカード。これは名前を書いたり愛情・金銭等を記入するようになっている事実上のキャラクターシートです!!


後はゲームボード、アルタ・カード、ともだち・バッグ、ネーム・プレート、ルーレット、金銭ボード、愛情ボード、ワッード・チップ等豪華豪華。バッグとありますが只の紙袋でしたけれど、コンポーネントとしてはTRPGの域を少し超えているかも(笑)。
少なくとも、私の所有している作品群ではGMに当たる存在を必要とし、キャラクターシートを必要とし、サイコロを使用し、アドリブ要素が強い...といった部分がTRPG的といえると思うのです。


実際にはこのシリーズ、ルールブックに載っているシナリオに沿って物語を進めていく感じで、読み聞かせるタイプのゲームブックのような、ボードで遊ぶのでボードゲームに分類されるような、でもアドリブ感覚を重要視されるらしいのでTRPG...という実に分類的に困る作品群の様子です(私も全部持っているわけではないから確定的にはかけないけれど)。


しかもTRPGとしては1人がゲームで勝利してしまうというものを目的としているので、厳密なTRPGとはいえないでしょう。バトルロワイヤルTRPGでもあれば別かもしれないけれど。

 勝利条件が知りたい……、SPIのTRPG「ダラス」なみにもっと詳しい内容が知りたくて胸をかきむしりたくなります……


HELP!宝島 ミステリーランド

宝島 (10歳までに読みたい世界名作)

 中古ゲームの商品紹介を見つけました。というか、それしか見つかりませんでした……

[破損品/付属品欠品] Doシリーズ4 HELP!宝島 -ミステリーランド- | 中古 | ボードゲーム | 通販ショップの駿河
http://www.suruga-ya.jp/product/detail/607907110001

商品解説
このゲームを手にした今、君は君で無くなろうとしている。
いかに物語の登場人物になりきるか!それがイメージプレイDO。
箱を開けた時から君は冒険者になる。武器は持ったか?薬は?お金は?・・・。
ゲームの進行は全て、君の演技力、想像力にかかっている。さあ!不思議なミラクルゾーンへ出発だ!


■ゲーム概略■
プレイ人数:1~5人用
デザイナー:あべえ ROAD あきら


<内容物>
取扱説明書(ルールブック・シナリオ・ストーリーブック) 1冊
ゲームボード 1枚
ロードパネル 16枚
イベントカード 29枚
能力シート 1冊

 うん、さっぱりわからん! まあイベントカードとかあるし、各キャラが島の中をうろうろうろつきまわって、イベントに遭遇したりしながら宝を見つける系ゲームじゃないかなぁと想像します。


源氏物語 ゲンジレポート

まんがで読む 源氏物語 (学研まんが日本の古典)

 TRPG源氏物語というのが理解に苦しむのですが、これに関する紹介記事はやはり無し。かろうじて中古ゲームの商品紹介を見つけました。

源氏物語 -ゲンジレポート- イメージプレイゲームDOシリーズ | 中古 | ボードゲーム | 通販ショップの駿河
http://www.suruga-ya.jp/product/detail/607079433001

商品解説

イメージプレイゲームDOシリーズ『源氏物語 -ゲンジレポート-』です。
平アンノン時代の女子寮「自由に人愛」に4人のプレイボーイ貴族が侵入。
将来、出世の道が約束される「契り証明書」を、手に入れるためにおなごの部屋で四苦八苦。
ハチャメチャ和歌づくりや闇のふとんアドベンチャー
イメージがイメージを呼ぶダメージの世界。
これでもうあなたは立派な大人です。
明日の日本を背負う、若い男女におおくりするハッピーセクシーストーリー。

イメージプレイゲームとは、設定された状況の中で、その中の登場人物になりきり、ストーリーを自ら作り上げていくゲームです。


■ゲーム概略■
プレイ人数:1~5人
イラスト:なかどくにひこ


<内容物>
ゲームボード 1枚、部屋カード 14枚、和歌カード 40枚、セクシー乱数表 1枚、能力シート 1部、
コマ 4個、ダイス 3個(8面体ダイス1・おのこサイコロ1・おなごサイコロ1)、ルールブック 1部

 ……、お色気系のパーティーゲームみたいなものでしょうか?


元禄忍者伝 おいろけ作戦の巻

テレビまんが放送開始50周年記念企画第2弾 少年忍者 風のフジ丸 DVD-BOX デジタルリマスター版 BOX1【想い出のアニメライブラリー 第8集】

https://twitter.com/macogame/status/201687157780398082
バンダイのイメージプレイゲームDOシリーズ「元禄忍者伝~おいろけ作戦の巻」。まだTRPGという言葉がなかったころの、TRPG黎明期の怪作。PCの能力値が「精力」だったり、キャラクターシートに性感帯を記入し、コチョコチョ合戦バトルをしたり、今では出せないゲーム。

 はあ、これもアダルト系か……


幻魔大戦

幻魔大戦 [DVD]
bodoge.hoobby.net

アニメ「幻魔大戦」を再現した,サイオニクス戦士とゲンマとの戦いのゲーム

平井和正原作,石ノ森章太郎作画の幻魔大戦大友克洋のキャラクターで映画化し,それをバンダイがゲーム化したもの.DOシリーズの第3作目として作成された.ゲームマスターが進行役となり,プレイヤーはサイオニクス戦士(超能力者)または幻魔を演じる.したがって,全員が参照するルール部と,ゲームマスターのみが参照するシナリオ部がある.

 
 アニメを見たことが有りますから、ゲームもバトル物と予想できます。わりと王道的なTRPGだったのかな。
 
 

総括

 ということで、玉石混合というか、一貫性の無いシリーズだったように見受けられます。ただパラグラフでイベントの描かれた冊子が有り、それとボードのプレイを結びつけるというあたり、SPIの「パンドラ号の航海」とかを連想させる部分もあり、意外と捨てたものではなかったのかも。何にせよ、もっと詳しく知りたいシリーズですが、もうこれ以上は無理かなぁ……


ローズ・トゥ・ロード
ローズ・トゥ・ロード (ログインテーブルトークRPGシリーズ)