【歴史】感想:NHK番組「風雲!大歴史実験」『池田屋事件~新選組マジックの謎を暴く~』

時空旅人ベストシリーズ 新撰組 その始まりと終わり (SAN-EI MOOK 時空旅人ベストシリーズ)

風雲!大歴史実験 http://www4.nhk.or.jp/P3924/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
  

池田屋事件新選組マジックの謎を暴く~ (2017年12月28日(木)放送)

 

内容

12月28日木曜
NHKBSプレミアム 午後8時00分~ 午後9時00分
風雲!大歴史実験「池田屋事件新選組マジックの謎を暴く~」


新選組を有名にした池田屋事件近藤勇らわずか4名はなぜ20名もの勤王の志士に勝てたのか。池田屋の内部を忠実に再現。近藤、沖田の必殺剣を交えて4対20の大実験。


幕末、新選組の名を世間にとどろかせた池田屋事件。謀議をはかる勤王の志士たちを捕えようと池田屋に踏み込んだ新選組。20名を超える志士を破ったのは近藤勇沖田総司らわずか4人だった。なぜ4人で20人に勝てたのか?番組では斬りあいとなった池田屋の1階を忠実に再現し4対20の大実験。さらに近藤勇の剣法を使って2対20へ。そして沖田総司の必殺剣、三段突きの正体とは?新選組は意外にも近代的な警察集団だった!?


【出演】伊吹吾郎,小日向えり,本郷和人,【司会】徳田章

 
 日本史での有名イベントを実際に検証してみる番組。今回のお題は「池田屋事件」。


池田屋事件とは?

 幕末。天皇のおひざ元の京都には、尊王攘夷・討幕を目指す志士たちが集まり、治安は悪化していた。1862年、幕府は江戸で「浪士組」を組織し京都に送り込んだ。その中に、のちに新選組のメンバーとなる近藤勇たちがいた。

 元治元年(1864年)6月5日、志士たちは天皇を長州へ連れ去る陰謀を企てており、それを阻止すべく新選組は、近藤隊(10人)・土方隊(24人)に分かれて志士捜索を開始した。そして近藤隊は旅館・池田屋に志士がいることを突き止め、近藤は土方隊の到着を待たずに突入を決意する。

 10人のうち、6人が池田屋の外を取り込み、四人(近藤勇沖田総司永倉新八藤堂平助)が池田屋に突入し20人相手に戦った。そして、遅れて土方隊も到着し、最終的に新選組は志士9人を討ち取り、4人を捕えた。この事件は新選組の名前を一気に有名にした。

 しかし、新選組は何故わずか4人で20人に勝利できたのだろうか?



●4人対20人の戦い

 実験1。体育館の中に池田屋の一階を再現したセットを作るとともに、大学生の剣道部員24人を集め、池田屋の戦いを再現してもらう。実際に真剣でどこかを斬られたら即座に戦闘不能になるので、それを再現するため、剣道の防具の上に「衝撃を受けると光るボール」を付けてもらい、それが光ったら戦闘不能になったという事にする。

 そして実験開始。20人が狭い部屋で待ち構えているところに4人が突入するが、部屋が狭すぎて、互いに3名ずつくらいしか戦えず、他の人間は後ろで待機状態。そして新選組側は4人が全滅し、その時点での志士の損害は6人。

 史実とは逆に新選組があっさり壊滅してしまった。



●天然理心流

 何故史実とは異なる結果になったのか? 実験では新選組役・志士役とも同レベルの腕前の剣道部員だった。しかし新選組の剣術は志士たちとは違いがあったのでは?

 実は池田屋に突入した近藤たち四人は全員「天然理心流」の使い手だった。天然理心流は徹底的に実戦を想定した流派で、1対多の戦いを普段から稽古していた。

 そこで実験2。天然理心流の師範クラスの人一人に大学の剣道部員3人がかりで戦ってもらう。結果は天然理心流側の勝利。最初から一対多を想定して、相手の意表をつく動きをする・常に移動する・複数の相手を均等に見る、等のテクニックを使う天然理心流に剣道部員たちは対応しきれなかった。

 また天然理心流は、相手の刀をたたき折る技や、壁や塀の陰に隠れた相手を攻撃する型もあった。そういった技が有効だったと思われる。

 ちなみに有名な沖田の「三段突き」。天然理心流にはそういう名前の技は無いが、館主によれば、刀を横に寝かせて相手の首を突く技ではなかったかとの推測。刀を寝かせると命中しなくても頸動脈を斬ることになり実戦的だから。



●真剣への慣れ

 また新選組は京都では刃を潰した真剣による稽古を行っていたという。真剣は竹刀や木刀よりはるかに重く、普段竹刀で稽古している者が、いきなり真剣を持っても使いこなせるものではない。

 実験3。天然理心流の館主(真剣に慣れている)と、初めて持つ人に、それぞれ巻き藁を切ってもらう。館主は一刀両断だったが、初めての人は刃が途中で止まって斬り切れなかった。これは真剣に慣れていないと切り付けた瞬間に刃がぶれてしまい、上手く力を伝えきれないため。当然実戦でも、真剣に慣れていない志士たちは不利だったと思われる。

 また真剣は意外にもろく、峰(刃の反対側)の方が弱い。そこで実験4。館主に刀の峰に刀で切り付けてもらうと、切り付けられた刀はぼっきり折れてしまった。池田屋でも真剣に慣れていない志士たちは、自らの刀を折られてしまったものが何人もいたのではないか。



●再度池田屋での実験

 史実では突入した新選組四人のうち、沖田は病で動けなくなり、また藤堂も負傷して戦線離脱となったため、近藤と永倉のみが戦ったという。

 そこで実験5。改めて池田屋のセットで実験を実施。今度は天然理心流の館主と師範が近藤と永倉役になり、大学生剣道部員20人と対決した。新選組サイドは2人が全滅するまでに志士サイド12名を斬った。また永倉役の人は自分で自分のボールをたたいて光らせたことが解り、敵に切られたわけではなかったので、まだ戦えたことになる。

 詳しく見てみると、新選組側は、袈裟切りを多用して鴨居に刀が引っかからないようにする、片手付きで障子に裏に隠れている相手を突く、大声で威嚇する、といったテクニックを使い、剣道部員たちを圧倒して人数差を克服していた。

 この結果から、新選組が4対20で勝利したのも十分あり得たことが解った。新選組の強さは天然理心流と真剣への慣れへに有ったようである。


感想

 超有名な池田屋事件を再現してみるという、歴史好きなら飛びつきそうな面白企画でした。新選組側の勝因を、実戦志向の天然理心流の技と、真剣への慣れ、と予想し、本物の天然理心流に参加してもらって再現実験をやるという事で見ていて楽しくて仕方なかったです。

 ちなみに天然理心流は剣術だけではなく組み打ちも行う流派なので、館主たちが竹刀を振るって切り付けながら、さらに足で蹴り飛ばしていたのにはちょっと苦笑。大学生の方もびっくりしたろうなぁ。
 

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幕末の志士 龍馬とその時代 第7巻 “新撰組躍動” 池田屋事件 (【図説】日本の歴史)