【科学】感想:NHK番組「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」第2回「動物のコトバ、ヒトの言語」

若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密” http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/
放送 NHK Eテレ。全12回。金曜22:00~22:30。

【※以下ネタバレ】
 

世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』で知られる進化生物学者ジャレド・ダイアモンド博士が、アメリカ・ロサンゼルスで、若者向けに行った特別授業を12回にわたって放送。ヒトと動物の違いと共通点に注目し、言語やアートの本質、夫婦の不思議、そして、なぜ人間の間で格差が拡がってしまったのかを考える事によって、環境破壊や、戦争と大量虐殺など人間が抱えている問題について、解き明かしていく。

 

第2回 動物のコトバ、ヒトの言語 (2018年1月12日(金)放送)

 

内容

第2回「動物のコトバ、ヒトの言語」


ダイアモンド博士は、「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した進化生物学者。人間の進化によって現代社会を考察する博士の特別授業を12回にわたって放送する。


第2回は、ヒトが作り出した最も古くて重要な「言語」について。ヒトは進化の過程で言語を手に入れ、高度の文明を築くことができた。では、動物には言語は無かったのか。ヒトは、どのようにして複雑な言語を獲得したのか。ユニークな発想で生物の進化を見つめるジャレド・ダイアモンド博士が、この疑問を解き明かす。


【出演】進化生物学者ジャレド・ダイアモンド,【声】糸博

 
 今回は言語がテーマ。

 動物にも言葉が有るのか? 有る。例えばベルベットモンキーは、天敵のワシやヒョウやニシキヘビが接近してきたとき、それぞれ別の鳴き声を発する。それを録音して「ヒョウ」の時の鳴き声を聞かせると、モンキーはヒョウを避けるように木に登った。

 またプレーリードッグも同様に敵のコヨーテを意味する単語を持っているだけでなく、色も区別する言葉を持っていることが解った。これらの動物は名詞だけの言葉を使っていると思われる。

 人間の言葉は単純な物から複雑な物に進化したはず。博士は言語の進化を調べるため、まず単純な言葉を探し求め、「ピジン語」を見つけ出した。ピジン語とは、異なる国の商人たちが意思疎通のために作り出した言語で、極めて単純で、単語数は少なく、単語の順番を変えても意味は一緒。そのため複雑な意味を伝えることはできない。

 異なる国から来た移民がピジン語で意思疎通し、やがて結婚したとすると、二人は互いの国の言葉をそれぞれ話せないので、家庭でもピジン語で話すしかない。しかし、この両親から生まれた子供たちは単純なピジン語では自分の想いを満足に伝えられないので、それを発展させた独自の言語を作っていった。それを「クレオール語」という。

 クレオール語は世界中で自然発生し、そのうちのいくつかは今では公用語になっているものもある。ハイチのハイチ・クレオールパプアニューギニアのトク・ピシン、インドネシアのバハサ、等。

 クレオール語は互いに文法がよく似ている。これはクレオール語が、人間の脳の中の遺伝的プログラムから生まれたことを示唆している。言語学者ノーム・チョムスキーは、人間の脳内には「普遍文法」というものがある、つまり生まれながらに文法を持っている、という考えを提唱している。

 まとめると、言語は以下のように進化したと思われる。

1)動物が使っているような「名詞だけ」の言語
2)ピジン語のような、形容詞・副詞が加わる
3)クレオール語のような、単語の順番は任意、代名詞が追加
4)現在使われている言語


 現在地球には7000種類の言語があるが、その数は減りつつある。というのも英語・中国語・アラビア語のような、仕事で使うような言語が学ばれ、先祖代々のマイナーな言語を子供たちが学ばなくなっていくから。そのため言葉は老人たちの間でしか話されなくなり、やがて消えてしまう。60年後くらいには、言語の内6800種類は消滅すると推測されている。

感想

 ピジン語とかクレオール語とか初めて知ることばかりで、今回も中々面白かったです。
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」内容・感想まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)