NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム 2017年12月31日(日)
【※以下ネタバレ】
【※以下、相当辛辣な感想ですので、当作品が好きな方はご注意ください】
市役所の市民課長・渡辺は、勤勉にみえながら無気力な日々を送っていたが、ある日、自分がガンで、余命わずかなことを知り、がく然とする。自暴自棄になるが、希望に燃える若い女性事務員の姿に、自分も生きがいを見つけようと感じた渡辺は、さまざまな困難に立ち向かい、市民から要望されていた、清潔で新しい児童公園を作ろうと奔走するが…。黒澤明監督の代表作であり、志村喬のこん身の演技が胸を打つヒューマンドラマの名作。
あらすじ
市役所の市民課長・渡辺は長い間の役所勤めで、もう惰性で仕事をしているだけだった。ところが、ある日胃の調子が悪いため医者にかかると、医者からは「軽い胃潰瘍」で何もする必要は無いと言われ、そのことで逆に自分が手遅れの胃ガンで余命半年だと悟ってしまう。
ショックを受けた渡辺は市役所を欠勤し、ふらふらと街をさまようが、自分でも何をどうして良いのかわからない。そして息子に病気のことを告げようとするが、息子は父親の金の事しか頭になく、渡辺の言葉を聞かずに一方的に口ぎたなくののしるだけだった。
やがて渡辺は市役所の元部下の小田切に胃ガンのことを打ち明け、生きた証に何かを作ればいいとアドバイスされる。翌日渡辺は市役所に出勤し、役所内でたらいまわしになっている公園建設の仕事を進めるように指示を出す。
五か月後。渡辺は死に、彼の通夜には助役以下が出席していた。そこに新聞記者たちが現れ、助役に公園を建設できたのは渡辺の尽力のせいではないかと質問するが、助役は笑い飛ばす。そして助役や課長たちは、自分こそが公園建設の功労者で、渡辺など何もしなかったと口々にバカにする。
しかし渡辺の部下がそれを否定し、涙ながらに渡辺こそ真の功労者だと言い、渡辺の働きぶりを思い出させる。やがて課長たちも、渡辺は病気や余命のことを知っていて、そのためにあの働きぶりだったのではないかと思い始める。そして自分たちも渡辺の様に一生懸命働こうと言いあう。
しかしその後、新しい市民課長は相変わらず仕事をたらいまわしにしているだけだった。おしまい。
感想
【※以下、相当辛辣な感想ですので、当作品が好きな方はご注意ください】
評価は×。
ヒューマンドラマだと聞いていたので、難病物としてさぞ泣けるのかと期待していたら、もうこれが腹が立って腹が立って仕方ない映画でした。世界の黒澤の映画でなかったら絶対最後まで見なかった。「世界の黒澤の作品の勉強」のために我慢して最後まで粘りましたが、シナリオへの怒りで血管が切れそうでしたよ。
内容は大体こんな感じでして。
1~30分
渡辺が医者から胃潰瘍を宣告されてガンだと悟り絶望。しかし息子は父親の退職金の事しか頭になく「退職金ガー、退職金デー、退職金ヲー」とそればかり。さらにその嫁は、義父を害虫の如く忌み嫌い、それを隠そうともしない悪女。そしてそういう描写が延々続く鬱展開。
31~60分
渡辺、たまたま知り合った作家に連れられて夜の街を延々とさまよう。退屈の一言。
61~90分
渡辺、元部下の小田切と共に街をさまよう。渡辺息子は父親に向かい、若い女に財産をやる気かと父親を口汚くののしり、金への執着をいかんなく発揮。怒りのメーターがクライマックスに到達。
91~120分
いきなり渡辺の通夜。市役所の助役たちはほぼ全員で、「公園を作ったのは俺たちであって、渡辺は何もしていなかった」と口汚く罵倒三昧。渡辺息子は息子で「父は自分が胃ガンだとは知らなかったでしょう。だって知っていたら息子の私に話してくれていたはずですからね」(ドヤ顔)。見ていて怒りで画面をけり倒してやりたくなるくらい腹が立った時間帯。
121~143分
市役所の面々が「やはり渡辺はガンであることや死期を悟っていたのでは」と思い直し、これからは渡辺の様に頑張って働こう、と盛り上がるが、すぐにそれを忘れるという、トホホにも程が有る〆。
いやー、参った参った。二時間半ひたすら耐えただけだったわ。私は今までは「黒澤映画って噂程面白くないなぁ」とか思っていましたが、この映画に比べたら何だって相対的には面白いと解りました。今後はそういう視点で黒澤映画を見ていくことにします。
年越し映画マラソン 生きる
BSプレミアム12月31日(日)午後1時02分~3時26分
【製作】
本木荘二郎
【監督・脚本】
黒澤明
【脚本】
橋本忍、小国英雄
【撮影】
中井朝一
【音楽】
早坂文雄
【出演】
志村喬、日守新一、田中春男、千秋実、小田切みき、左ト全 ほか
製作国:
日本
製作年:
1952
備考:
白黒/スタンダード・サイズ