感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第145話(シーズン6 第18話)「隔離室で何が起こったか?」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン6」あらすじ・感想まとめ

 

第145話 隔離室で何が起こったか? Committed (シーズン6 第18話)

 

あらすじ

殺人容疑で審理中の地下組織ボスのアリバイを、協力者である汚職副知事が偽証していた。検察側は目撃者である副知事部下の妻に真実を証言させようとするが、それを恐れたボス一派は彼女を精神科病院に入院させ、薬物を投与、患者に見せかけ隔離室に入れる。IMFメンバーは侵入困難な病院から彼女を救い出し、正常な状態で法廷に立たせるべく作戦を実行する。

 
【今回の指令】
 暗黒街のボス・チャンドラー(Leon Chandler)は、現在殺人容疑で審理中だが、彼の傀儡である副知事ハリソン(Harve Harrison)が証人としてチャンドラーのアリバイを保証している。IMFは犯行の目撃者であるノーラ・ドーソン(Nora Dawson)を裁判に出廷させ、真実を明らかにしなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、バーニー、ケイシー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 冒頭。ノーラ・ドーソンは精神科病院に監禁され、院長たちに薬物を投与されて前後不覚の状態にさせられていた。

 フェルプスがテープで指令を受け取る。

 ノーラが捕らわれている精神科病院は元州立刑務所を流用したもので、警戒が厳重である。IMFは検察官のウィルソンの協力の元作戦を実行することする。

 フェルプスとケイシーは叔父と姪という設定で病院を訪問し、フェルプスはケイシーを診察してほしいと頼み込む。ケイシーは精神の病と診断されて入院することになるが、刃物を持って暴れたため、隔離室に収容される。

 フェルプスは心臓発作を装ってベッドに寝かされると、すぐさま抜け出して隔離室のケイシーと合流し、ケイシーはノーラに変装し、フェルプスは隔離室の壁に穴をあける。やがて隣の部屋に本物のノーラが連れてこられると、ケイシーはノーラにすり替わり、フェルプスは本物のノーラを連れて逃げ出す。

 フェルプスは排水溝から侵入してボイラー室で待機していたバーニーにノーラを引き渡し、バーニーたちは排水溝を通って海辺に出ると、ボートで迎えに来たウィリーと共に脱出する。

 ケイシーは本物のノーラとして裁判に連れていかれる。裁判では、ハリソン副知事が、死んだ議員は事故で死んだので、チャンドラーは事件とは関係無いと証言する。ケイシーは最初は錯乱したふりをしてチャンドラーたちを安心させるが、ウィルソン検察官はこれは本物のノーラではないと言ってケイシーの変装マスクをはがし、法廷は大騒ぎになる。さらにウィルソン検察官は本物のノーラを呼び入れ、ノーラはチャンドラーが議員を殺し、ハリソンもそれを横で見ていた、と証言する。それを見届けたIMFメンバーが法廷のドアから出ていくシーンで〆。


原案: ローレンス・ヒース
脚本: アーサー・ウェイズ
監督: レザ・S・バディイ


感想

 評価は○。

 今回はIMFが、厳重な警戒の中を、捕らわれた重要人物を救出するタイプの脱出系のエピソードで、細かく組み立てられた段取りが見ていて楽しい、なかなかの好エピソードだった・

 本エピソードの様な要人救出系の話は、シーズン1~4の頃までは「東側の研究所から研究者を救い出し亡命させる」云々という内容で頻繁に作られていたが、シーズン6でIMFの敵がシンジケートになってしまってからすっかり縁が遠くなってしまったので、それだけに見ていて実に懐かしかった。

 今回のミッションで舞台となるのは精神科の病院で、救出対象となる人物が、よりにもよってそこの医者によって精神を破壊されつつある、という設定が非常にギリギリというか危ない事になっている。実際BSジャパン版では、21世紀の観点で見てNGなところを手直しした模様で、冒頭にテロップで『放送上不適切な表現がありますが、一部修正のうえ、放送します。』と告知している。いったいどこをどう直したのか知りたいものである。

 舞台や設定がこの調子なので、序盤は「やつれ切って表情が虚ろなノーラが、意味の通らない単語をひたすら口走っているシーン」が展開されたり、「ケイシーが病院に潜入するためにおかしなふるまいを延々続けたり」と、憂鬱な気持ちになる場面がやたら多く、沈んだ気持ちにさせられてしまった。

 もっともそこを通り過ぎて、IMFの作戦が順調に動き出すと、一転話はグッと面白くなる。特に

1 フェルプスがハンカチにしみこませた薬を唇に塗って発作を装い、ベッドに運び込まれる
2 バーニーが海に面した排水溝から侵入してボイラー室に仕掛けをする
3 フェルプスがノーラを隔離室から連れ出す
4 バーニーが仕掛けでボイラーを暴走させる
5 フェルプスが修理屋のふりをしてボイラー室から人を遠ざけておき、ノーラをバーニーに引き渡す
6 バーニーが排水溝を抜け、海に面したところで待機する
7 フェルプスが海を監視している監視員を眠らせる
8 ウィリーが海からボートでバーニーとノーラを迎えに来る

という展開が流れるように進み、バーニーがボイラー室で色々やっていたのはこの時のためだったのか、と膝を打ちそうになる展開など、伏線が良く機能していた。こういうIMFメンバー間の細かい連係プレイで作戦が滑らかに進んでいくのを見るのは、非常に気持ちが良くて、これこそスパイ大作戦、という気持ちにさせられた。

 また終盤は「救出物」から一転「法廷物」のノリになるのも、なかなか新鮮で面白かった。いつまで経ってもすり替わったケイシーが変装を解いて逃げ出さないので、どういうオチを付けるのかと興味津々で見ていると、なんとケイシーはノーラの変装のまま法廷にまで連れ出されてしまう。

 しかし、検察官がおもむろにノーラ(=ケイシー)のマスクをはがして別人であることを明かして、法廷が騒然となる中、続いてすっかり正気に戻った本物のノーラが入ってきて、チャンドラーとハリソンの犯行の模様を証言する。まさに法廷物の醍醐味である「ピンチ状態からの大逆転勝利」が見事に展開され、胸のすくような痛快さだった。そしておなじみのBGMが流れる中、任務達成を見届けたIMFメンバーが法廷を後にしていく、というオチが実に気持ち良かった。

 今回の話は、序盤が暗い展開で評価が落ち気味になっていただけに、後半から結末に大いに盛り上がったことで、余計に満足度が高かった。久々にスパイ大作戦のオチで痛快さを楽しませてもらったのもポイントが高かった。

 今回のサブタイトルの原題「Committed」は「傾倒している、約束済みで」といった意味なのだが、正直言って今回の内容との繋がりが全く見当がつかない……


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが子供向け遊戯施設のような場所に行き、子供を馬に乗せる係の男に、甥が弁当箱を忘れていったと言う。そして係から手提げの弁当箱を受け取ると、周囲に人のいないベンチに座り、弁当箱の中から大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーを取り出す。その後、フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」と言い、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。副知事ハリソンは、目下殺人容疑で審理中の暗黒街のボス・チャンドラーによって操られる傀儡政治家であり、チャンドラーのアリバイはこの副知事によって約束されている。

 そこで君の使命だが、明日チャンドラーの犯行の目撃者ノーラ・ドーソンを正常な状態で出廷させ、チャンドラーの犯行を証言させることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 
 

シーズン6(128~149話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のリンクからどうぞ

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