【映画】感想:映画「ソイレント・グリーン」(1973年:アメリカ)

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NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム 2018年7月11日(水)

【※以下ネタバレ】
 

2022年、ニューヨーク。人口の増加と大気汚染により、人々は極度の食糧不足に苦しんでいたが、ソイレント社が開発した合成食品によって問題は解決しようとしていた。刑事ソーンは、ソイレント社の取締役の殺害事件を追ううちに、新製品「ソイレント・グリーン」の恐るべき秘密を知ってしまう…。名匠R・フライシャー監督、C・ヘストン主演の傑作SFサスペンス。これが遺作となった名優E・G・ロビンソンの存在感も光る。

 

あらすじ

 2022年。ニューヨーク市の人口は4000万人に達し、住む処の無い人間たちが街のいたるところに溢れかえっていた。また環境汚染や地球温暖化により、肉や野菜・果物といった自然の食料品は一部の特権階級しか口にできなくなり、大半の人間は「ソイレント社」が大豆などから作り出す合成食料の配給で生き延びていた。ソイレント社の新製品「ソイレント・グリーン」は、プランクトンを元に合成されていた。

 刑事のソーンは、富裕層の一人サイモンソンが自宅で殺害された事件の捜査を担当することになった。やがてソーンはこれが強盗殺人に見せかけた暗殺だと直感し、サイモンソンの背後を調べ始め、サイモンソンがソイレント社の幹部だったと知る。しかし、ソーンには、上層部から捜査を中止するように圧力がかかる。

 ソーンの同居人で元教授のソルは、人脈を駆使して事件調査に協力するが、やがて真実を知ってしまう。絶望したソルは「ホーム」と呼ばれる安楽死用の施設に向かい、駆け付けたソーンに自分の知ったことを伝えてから息絶える。

 ソーンは遺体を運ぶトラックに隠れて乗り込み、遺体の処理施設に潜入する。そして、ソイレント・グリーンが実は「人間の死体」から作られていることを知る。ソーンはソイレント社の放った男たちに殺されかけれるが、同僚たちに助けられる。ソーンは、周囲に、ソイレント・グリーンの原料が死体であることや、このままでは食料生産のため人間を飼育し始めると叫びながら担ぎ出されていく。


感想

 評価は○。

 有名なSF映画。数十年前に一度見たきりでしたが、衝撃のオチだけは強く印象に残っていました。

 ただし、ストーリーは極めて淡白。演出が上手いのか、テンポ良く進む話に引き込まれて特に退屈さはありませんでしたが、中身が薄すぎて全97分の映画を見たような気がしませんでした……

 また、色々な設定が説明不足で、よくわからないところもちらほらでした。例えばソーン刑事と同居している元教授の老人ソルは「本」と呼ばれていますが、どういう立ち位置なのか全く説明がありません。

 さらに「最高交換所」という場所は、図書館のように本がたくさん収納されており、ソルと同じような「本」の老人たちが何人もいましたが、この場所についての説明もありません。「本」たちは、ソイレント社のやっていることを詳しく知っていましたが、どうやってその情報を手に入れたのかも不明です。最後にソーンは、ソイレント・グリーンの原料が死体であることを交換所に伝えてくれとしきりに訴えていましたが、その意味も不明でしたしね。

 結局、「配給食糧の原料は実は死体だった」というオチだけで一点突破した映画でした。


 ということでストーリーは殆ど記憶に残りませんでしたが、悪夢的な作品世界の設定の方は恐ろしく印象的でした。人口の爆発的増加と環境破壊が同時進行し、貧富の格差もすさまじいくらいに拡大した社会。

 温暖化のため見るからに蒸し暑そうな空気の中、多くの人間は住む家が無く、主人公のソーンが暮らすアパートでも階段に虫か何かのように雑魚寝の人間があふれて上り下りもままならない有様。ソーンは幸運にも自分の部屋を持っていますが、水は配給されるものを一々もらいに行かねばならず、また電気は自分で自転車のペダルをこいで発電せねばならない。肉や野菜といった食量はもう貴重品で、大半の人間が口にできるのは合成食料のソイレント・グリーン等のみですが、見た目はプラスチックの板にしか見えず、しかも味も無いらしい。また不況も進行しているのか、機械を製造した会社が倒産して、修理ができないという描写もありました。一般大衆には何の希望も抱けない、まさしくディストピアです。

 その一方で一部の富裕層は広々とした個室に暮らし、冷房を利かせ放題、水を使い放題、さらに肉や野菜といった食量を豊富に所有し、若い美人の女性を「家具」という名目で囲う、等好き放題の暮らしをしています。


 約50年前には「こんな世の中が来たら嫌だ」という作品だったのでしょうが、温暖化による猛暑や貧富の格差のとめどない拡大など、かなりの部分で現実が追いついてきてしまっているのには暗い気持ちにさせられます……、そういう意味では結構未来を正確に予想した映画だったのかもしれません……
 
 

ソイレント・グリーン
BSプレミアム7月11日(水)午後1時00分~2時38分


【製作】
ウォルター・セルツァー、ラッセル・サッチャー
【監督】
リチャード・フライシャー
【原作】
ハリー・ハリソン
【脚本】
スタンリー・R・グリーンバーグ
【撮影】
リチャード・H・クライン
【音楽】
フレッド・マイロー
【出演】
チャールトン・ヘストンエドワード・G・ロビンソン、リー・テイラー・ヤング ほか


製作国:
アメリ
製作年:
1973
原題:
SOYLENT GREEN
備考:
英語/字幕スーパー/カラー/レターボックス・サイズ

 

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