【ゲーム】感想「タイムトラベラーズ」(2012年:レベルファイブ)

タイムトラベラーズ - PSP

TIME TRAVELERS(タイムトラベラーズ
https://www.timetravelers.jp/

【以下ネタバレ】
 

概要

 2012年にレベルファイブから発売されたアドベンチャーゲーム。PS Vita版・ニンテンドー3DS版・PSP版、の三機種向けがほぼに同時発売された。タイトル通り、時間移動をテーマとしたSF系AVG
※プレイはPSP版。

あらすじ

 2013年。東京で突如謎の爆発が起こり、周囲に重大な被害をもたらした。人々はその爆発を「ロストホール」と呼んだ。それから18年後の2031年。五人の男女が、それぞれトラブルに巻き込まれ……


ゲームジャンル/システムなど

 ゲームジャンルはアドベンチャーゲーム。ただし、ゲームパッケージに「プレイングシネマ」と書いてある通り、殆どのシーンで3D-CGで描かれたキャラクターや背景がアニメーションするため、映像作品の要素が極めて強い。

 本ゲームは、五人のキャラクターの物語が同じ時間に並行して進行している、という設定のため、五人のシナリオを切り替えながら進行させる。この切り替えは、ゲームの前半はシステムが自動で行うため選択の自由は無いが、後半になるとプレイヤーが好きなキャラクターを選択できるようになる。

 各キャラクターでのプレイは、プレイヤーは大半の時間はメッセージを読んでいるだけの受け身の状態だが、時折二種類の操作を要求される。一つ目は選択肢の選択で、二択か三択の選択肢の中からいずれか一つを選択する。この選択には時間制限があり、何もしないままだと意図しない選択肢が選ばれてしまうので注意が必要である。

 もう一つは「プレイングシネマイベント(PCE)」というアクション操作で、ストーリーの途中で突然「悪党が殴りかかって来た。△ボタンを押下して避けろ」というような指示が表示されるので、△ボタンを押して対応する、という操作を行う。PCEは時間内に操作しないと失敗したことになり、そのままゲームオーバーになるが、難易度は低く、また簡単にやり直しができるため、PCEがクリアできないのでストーリーが先に進めない、という事態はまず発生しない。

 プレイしていると、キャラクターAのシナリオではどうしても先に進めない、という場面に遭遇する。その際に、例えばキャラクターBのシナリオに切り替えると、キャラクターBがAに対して何らかの行動を行い、その結果Aのシナリオが先に進めるようになる、という形で行き詰まりが解消される。このように五人のキャラクターのシナリオを交互に切り替えることでゲームを進行させる。


ストーリー

 2013年4月28日。大学の研究施設「シリンダーラボ」で機械の暴走による爆発が発生し、周囲に甚大な被害を齎した。その際、上空に穴が開いたように見えたことから、この事故は「ロストホール」と呼ばれるようになった。

 18年後。2031年4月28日。五人の男女、刑事「神谷壮馬」、女子アナ「伏見雛」、男子高校生「深瀬有理」、科学者「新道究悟」、自称ヒーロー「ルサンチ☆マン」(本名:犬山かける)は、それぞれあるトラブルに巻き込まれる。彼らには全員18年前のロストホールの際にシリンダーラボにいたという共通点があった。

 彼らの前には、何故か同時に複数の場所に存在する少女「新道みこと」が現れ、手助けをしたり頼みごとをしてくる。みことは父親の究悟からは、二人は血がつながっておらず、またみことはやがて今日の11時に時間移動する事を知らされる。究悟はロストホール時の実験の当事者で、事故の際に現れた謎の女性に助けられたが、女性はやがて怪我をして意識不明になり、女児を出産した後意識不明のまま死んだ。その女児がみことだった。

 やがて、「スケルトン」なる男に率いられたテロ組織が同時多発テロを敢行し、一味はシリンダーラボへと押し入る。スケルトンは、シリンダーラボの地下には「クォンタム・エネルギー」という危険なエネルギーが存在し、政府や経済界の人間は秘密裏にそのエネルギーを利用して暴利をむさぼっていると告発する。そしてシリンダーラボを破壊し、東京を消滅させると宣言する。

 五人はそれぞれ別の目的でシリンダーラボへと集まる。スケルトンの正体は雛の恋人の甲斐駿介だった。甲斐は18年前の実験の責任者で、ロストホールの後、同僚を全員失いながらもなんとか後処理を終えた。しかし政府は危険なクォンタム・エネルギーの利用に走り、邪魔な甲斐を殺そうとした。甲斐はマスコミに情報をリークするものの握りつぶされ、憎しみからテロに走ったのだった。

 五人は甲斐を止めるためシリンダーラボの地下に向かうが、神谷・有理・かけるは死に、新道と雛のみが甲斐の元にたどり着く。実は甲斐の真の目的はテロではなかった。18年前のロストホールは、2013年と2031年が時間的につながり、未来から過去にエネルギーが流れ込んだために発生した。そしてそれ以降世界は2013年から2031年までの間を果てしなく繰り返しており、2031年以降は存在しなかった。甲斐はクォンタム・エネルギーを消すことでロストホールの発生を食い止めるつもりだった。

 しかし甲斐は新道からあることを聞かされ、その計画を中止し、雛を過去に送る。直後特殊部隊の乱入でその場にいた者は殺され、みことはその日の11時に舞い戻る。

 みことは18年前に現れた謎の女性が雛で、つまり甲斐と雛が自分の両親だったことを知る。甲斐はみことが娘だと知り、娘の存在を消さないため計画を取りやめたのだった。やがてみことの前にアービターという謎の美女が現れ、みことの行動を助ける。みことの行動で2031年のクォンタム・エネルギーは打ち消され、みことが母親(雛)から受け継いだ腕時計だけが2013年に届く。

 2013年にはロストホールは発生せず、それ以降の世界は全く別の物となった。2049年。甲斐と新道は科学者として活躍しており、甲斐と雛の間に生まれた娘の美命(みこと)は、科学者を目指していた。そこにアービターが現れ、未来の美命が自分を作ったと挨拶する。そして美命が持っている腕時計(2013年に甲斐が拾った)を持って過去に飛び、2013年に倒れている雛の腕に時計を付ける。かくして時間の輪が閉じた。


感想

 評価は○(まずまず)。プレイ時間は11時間15分。

 予想以上の内容で満足度高し。

 ゲームは基本的に、プレイヤーが能動的に動いて話を進めていくのではなく、受け身の姿勢でストーリーが勝手に進行するのを見守るというタイプのため、プレイしていて主人公たちと一体化するような感覚は皆無だった。また、たまに出てくる選択肢も、選択次第でストーリーが細かく分岐するのではなく、誤った選択をすればゲームオーバー、正しければそのまま話が進行する、という程度の物なので殆ど意味が無かった。

 また、ウリであるキャラクター切り替えも、キャラクターAのプレイで行き詰れば、すぐにヒントに従い別のキャラのシナリオに切り替えれば即座に問題解決、となるため、あまりに簡単すぎて拍子抜けな代物でしか無かった(まあ最終盤はちょっとだけ考えさせられたが)。

 さらに本作は映像面にかなり力を入れており、3D-CGによるアニメーションが動きまくり、有名声優たち(沢城みゆき平田広明東地宏樹細谷佳正新谷良子、他)がしゃべりまくるため、ほとんど3D-CGの映像作品状態だった。

 以上の事から、本作のプレイは「ゲームをプレイしている」というより「映画や連続ドラマなどの映像作品を視聴している」という感覚の方が強く、「アドベンチャーゲーム」としてはあまり評価は出来ないものだった。「プレイングシネマ」とはよく言ったもので、確かにゲームというよりは操作できる映画という感覚である。


 しかし、そういうゲーム性の弱さを補って余りあるのがシナリオの面白さだった。神谷編はいきなり妻子が何者かに誘拐されているという緊迫したシーンから始まり、以後の展開もとにかくサスペンス感覚満載のハードな物で引き込まれるようだったし、また雛のシナリオはスクープを追ううちテロリストたちの計画にたどり着くなど、神谷編に負けない緊迫感があった。

 また新道のシナリオはとぼけた新道のキャラクターが面白いうえに、冷酷な悪党と思われた円城の意外な過去が明かされるなど、読みごたえがあった。ふざけたシナリオとしか思えなかった「ルサンチ☆マン」編ですら、後半はヒーロー道を貫いたたけるが暗黒面に堕ちていた本間の心を溶かすなど結構グッとくる展開で、どの話も充実していてハズレが無かった。

 さらに、終盤のシリンダーラボでの展開は、甲斐からこの世界がループしている云々という説明が行われ、それまでのテロリスト相手のサスペンスアクションストーリーが一気にSFにシフトしてきてゾクゾクさせられたし、みことが世界を救ったあと、各キャラの人生が全く別のものになる展開などは、それなりに感動的だった。

 ラストで美女アンドロイド・アービターペトロニウスドラえもんのパロディ)が登場し、みことと共に過去に行き、雛の手に腕時計をはめて時間のループを閉じる、とか、細かい所の仕掛けも良くできており、プレイし終わった後の満足感は抜群だった。

 複数のキャラクターを切り替えるという構成や、世界全体がループしているという設定など、使われている設定や展開は今まで他のアニメや漫画などで見たようなものばかりで、特に独創的では無かったが、それらを巧みに組み合わせてしっかりとした面白い話として完成させていたのは好評価だった。

 全クリアするまでの所要時間は約11時間のため、小粒な作品のように様に見えるが、前述の通り、ゲームというより「映像作品」という要素が強いため、連続ドラマを11時間視聴したという感覚に近く、物足り無さなどは全く無縁だった。

 以上、「ゲーム」的な要素は薄かったものの、一つの賞品としては十分に満足できた。SF好きなら満足できる一作であると評価したい。
 

参考:2018年にプレイしたゲームの感想の一覧は以下のページでどうぞ

2018年にプレイしたゲームの感想一覧

perry-r.hatenablog.com
 
 
TIME TRAVELERS オリジナルサウンドトラック