【深読み読書会】感想:NHK番組「シリーズ深読み読書会」『乱歩ワールドの神髄! 『孤島の鬼』』

孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

シリーズ 深読み読書会 http://www4.nhk.or.jp/P4207/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

シリーズ深読み読書会「江戸川乱歩“孤島の鬼”
[BSプレミアム] 2018年12月30日(日) 午後10:30~午後11:30(60分)


江戸川乱歩の知られざる傑作長編「孤島の鬼」を文学探偵たちが深読み。本格推理に怪奇譚、ボーイズラブに宝探しの冒険活劇まで、乱歩の魅力「全部盛り」の作品世界に心酔!


必読の作家・作品の魅力に迫る文学エンターテインメント、今回は日本ミステリーの父・江戸川乱歩の知られざる傑作長編「孤島の鬼」。密室殺人に群衆の中での殺人、実行犯の殺害と息もつかせぬ本格推理が展開したかと思えば、怪奇小説風の「手記」がさらなる謎を呼び、孤島の地下迷宮を舞台にした宝探しの冒険活劇に突入していく。「乱歩の全てがある」「今こそ読むべき作品」という4人の文学探偵たちが、あらゆる角度から深読み。

【出演】佐野史郎綾辻行人高橋源一郎鹿島茂,【語り】久保田祐佳

 

内容

 お題となった一冊の本を、集まった「文学探偵」たちが色々と読み解いていくという趣旨の番組。今回は第15回。

参加者は
佐野史郎 … 俳優
綾辻行人 … 推理作家
高橋源一郎 … 小説家
鹿島茂 … フランス文学者

 作品の内容を、イラストをふんだんに使いながら完全ネタバレで紹介しつつ、その内容に「文学探偵」たちが色々と考察したり意見を述べていく、という構成。

 今回のお題は「孤島の鬼」(1929~1930)


(※以下、小説のオチまで完全ネタバレ)

 主人公・蓑浦(みのうら)の婚約者が密室で殺害される。箕浦は私立探偵に調査を依頼するが、探偵もまた衆人環視の海水浴場で何者かに殺される。箕浦の友人・諸戸は独自の推理により、二件の殺しの犯人が少年であることを突き止める。しかし少年は彼らの目の前で射殺される。

 箕浦は死んだ探偵から一冊の手記を託されていた。それはシャム双子の女性がどこかの孤島の土蔵に監禁されているという内容だった。そしてどうやらその島は諸戸の故郷の紀伊の離れ小島らしい。

 二人は島に行き、隠されているらしい財宝を求めてさまよったりしているうちに、諸戸の父・丈五郎の恐ろしい計画を知る。丈五郎は自分の体が不自由のため、日本の人間全てを同じようにしてやろうとしており、手記を書いたシャム双子の女性も人工的に手術でそうされたものだった。

 しかし丈五郎は財宝を見つけたもののそのまま死んでしまい、諸戸は丈五郎の実の子では無いと解り、最後に警察が駆け付けて丈五郎一味は逮捕される。諸戸はシャム双子の女性を切り離してやり、箕浦は女性と結婚する。諸戸は実の親のところに帰ったものの、病で死んでエンド。


 文学探偵の考察。

・殺人事件がなんとなくクイーンの「Xの悲劇」「Yの悲劇」に似てなくも無いが、両クイーン作品は1932年発売なので乱歩が真似たわけではない。

・蓑浦と諸戸が楽しそうに謎解きしているのは「少年探偵団」の原型では?

・丈五郎の発想は当時大流行だった優生思想の裏返しか?

・「体の不自由な人間を大量に生み出す」というのは戦争の暗喩? 乱歩はこの作品と同じ時期に、戦争で手足を失った人間が主人公の「芋虫」を書いている。「孤島の鬼」と対になる作品ではないか。

・孤島の鬼とは誰か? 素直に考えると丈五郎だが、実は主人公・箕浦だという説もある。
 
 

感想

 NHKが定期的に放送している「深読み読書会」の新作。今回のお題は乱歩の「孤島の鬼」。

 今回も、いつものごとく「文学探偵」たちが、小説を朗読しては、この部分はああだこうだと、適当に(?)思いついたことをしゃべり倒しているだけの内容でしたが、まあ「原作の内容を、イラスト付きで、オチまで完全に紹介してくれる番組に、ついでとしてゲストたちのよく解らんトークが付いてきた」程度に捉えればそこそこ楽しめました。


 今回の「孤島の鬼」は、前半の第一部は密室殺人とか白昼堂々の殺人とか正統派ミステリなのに、後半の第二部は孤島を舞台にして恐るべき野望を持つ悪の組織の目をかいくぐり財宝を探す(あとBL要素付き)という、テーマが何が何だか分からないごった煮小説ですが、なんとなく引き付けられる物が有りますな。

 あと不思議なのは、小説を読んだことが無い筈なのに何故か内容を知っていることで、「一体何故なんだ……?」と頭を悩ませています……
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

「シリーズ深読み読書会」内容まとめ

perry-r.hatenablog.com
 
 
江戸川乱歩傑作集 (1) 孤島の鬼
江戸川乱歩傑作集 孤島の鬼 (ぶんか社コミックス)
孤島の鬼(1) (KCx)