【推理小説】感想:小説「生首に聞いてみろ」(法月綸太郎/2004年)

生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

http://www.amazon.co.jp/dp/4043803028
文庫: 551ページ
出版社: 角川書店 (2007/10/1)
発売日: 2007/10/1

【※以下ネタバレ】
 

首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する―著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は―!?幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。

 
 

あらすじ

 高名な彫刻家・川島伊作は一人娘・江知佳(えちか)をモデルにした石膏像を作成していたが、伊作は病気で亡くなってしまう。しかも残された石膏像からは首から上が切り取られて無くなっていた。周囲はこれを江知佳に対する殺害予告と考えて危惧し、小説家・法月綸太郎に調査を依頼する。

 伊作は16年前に妻・律子の妹で人妻の結子と不倫関係に陥り、その結果結子は自殺、律子は伊作と離婚し、結子の夫・各務と再婚していた。その後、律子は実の娘の江知佳とも16年も会っていなかった。

 綸太郎は江知佳をストーキングしていた男を怪しいと睨んで調査するものの、決定的な手掛かりが得られないうちに、江知佳が行方不明になり、やがて江知佳の首だけが郵便物として送られてくる。綸太郎は江知佳に対する凶行を食い止められなかったことに後悔しつつ、父・法月警部と共に調査を行い、真相にたどり着く。

 そもそも16年前に死んだのは結子ではなく、川島律子で、律子は保険金詐欺を企んだ結子とその夫各務に殺害されていた。そのあと結子は律子のふりをして各務と再婚し、他人に顔を合わせないようにして正体がばれるのを防いでいた。

 彫刻の首を切ったのは江知佳自身で、理由は彫刻の体は自分がモデルだったが、頭の部分は死んだ母親・律子のデスマスクだと気が付いたためだった。母親が死んでいる、つまり今各務と結婚しているのは母律子ではなく結子だと気が付いたため、まず世間的にそれが発覚しないように首を切り取った後、各務夫妻のところに乗り込んだ。しかし各務夫妻に口封じのため殺され、各務夫妻は石膏像の首が切り取られていることを知り、殺人の予告だったように誤魔化そうと江知佳の首を切り落としたのだった。

 各務夫妻は逮捕され、江知佳の胴体も見つかった。
 
 

感想

 評価は○(ぎりぎり)

 賞を受賞した作品という事で期待して読んだのですが……、悪くはなかったけど、それほどの満足感も無し。

 500ページ超の大作ですが、前半は「彫刻の首が無い」だけで延々引っ張り、半分すぎたころにようやく殺人事件が起きるのですが、そのあと特に起伏も無いまままた延々と引っ張って、最後に各務夫妻がいきなり逮捕されるのでビックリというか。

 彫刻の首が無いことについて、途中で色々推理が開陳されるのですが、結局「あれは全部勘違いでした」で終わるし、16年前に死んだ人間が別人だったという話も設定をひねり過ぎて凝り過ぎという感じしかしないし。そもそもの話、川島伊作が遺書で「16年前死んだのは結子ではなく妻・律子で殺されました。犯人の各務夫妻を捕まえてください」とか書き記して警察に送れば、今回の事件は起きなかったのではないのかと思うのですが。


 あと主人公が作者と同じ名前の小説家で、父親が警察関係者、というのがエラリィ・クイーンそのまますぎて何とも言えない心持になりました……

 駄目では無いにしても、さほど感銘を受ける作品ではありませんでしたね。
 

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生首に聞いてみろ