【推理小説】感想:小説「新・世界の七不思議」(鯨統一郎/2005年):大ボラ歴史ミステリー第二弾

新・世界の七不思議 (創元推理文庫)

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新・世界の七不思議 (創元推理文庫) 文庫 2005/2/24
鯨 統一郎 (著)
文庫: 327ページ
出版社: 東京創元社 (2005/2/24)
発売日: 2005/2/24

【※以下ネタバレ】
 

東洋の寂れたバーの片隅で、過去幾たりもの歴史学者を悩ませてきた謎がいともあっさり解明されてしまうとは。在野の研究家以上には見えない宮田六郎が、本職の静香を向こうに廻して一歩も引かないどころか、相手から得たばかりのデータを基に連夜の歴史バトルで勝利を収めていく。宮田の説に耳を傾けながら、歴史に興味を持ち始めた若い頃のようにワクワクするジョゼフであった。


来日中のペンシルベニア大学教授ジョゼフ・ハートマンは、古代史の世界的権威。同じく歴史学者である早乙女静香と京都へ旅行しようとしてはキャンセルの憂き目に遭い、毎晩うらぶれたバーで飲むことに。しかし、バーテンダー松永の供する酒肴に舌鼓を打ちつつ聴く宮田六郎と静香の歴史検証バトルは、不満を補って余りある面白さであった。奇想天外なデビュー作品集『邪馬台国はどこですか?』の姉妹編が登場!

 

あらすじ

 ユーモア歴史推理物「邪馬台国はどこですか?」のキャラクターたちが登場するシリーズ第二弾。

 来日中の歴史学の教授ジョゼフ・ハートマンは、同業の早乙女静香と一緒に京都観光を楽しもうと計画していたが、何故か毎日様々な事情により予定は翌日に延期となり、結局毎晩静香の行きつけのうらぶれたバー「スリーバレー」で飲むことになってしまう。

 そこで毎晩繰り広げられるのは、静香と客の宮田六郎による歴史論争。本職の静香と、歴史の知識が殆ど無いように見える宮田の論争は、当初は静香が一方的に押しまくるものの、最後には宮田が歴史の意外な真実(のように思えるもの)を指摘するのだった。



◆「アトランティス大陸の不思議」

 伝説のアトランティス大陸は何処に有ったのか?

 宮田の結論:アトランティスの事を本に書き記したのは哲学者のプラトンアトランティスとはプラトンが師であるソクラテスのことを大陸になぞらえて書き残したもの。「アテナイソクラテス」を縮めれば「アトランティス」になる。



◆「ストーンヘンジの不思議」

 イギリスのストーンヘンジは何のために作られた?

 宮田の結論:一番有名な三石塔(トリリトン)は、先史ブリテン人が空が落ちて来るのを恐れて、空を支えるために作った。ちなみにそれが日本に伝わり「鳥居」(トリイ)となった。三つの石の組み合わせた形も名前もよく似ている。



◆「ピラミッドの不思議」

 エジプトのピラミッドは何のために作られた?

 宮田の結論:大河ナイルを制御するため。山が河川を制御するというイメージから、巨大な山のメタファーとして作られた。また、その発想が日本に伝わり、ナイルは「三途の川」となった。またピラミッド型が水を制御する、という考えが「≪水≫商売は店の前に≪ピラミッド≫型の盛り塩をする」という風習に変化した。



◆「ノアの方舟の不思議」

 ノアの箱舟は実在したのか?

 宮田の結論:箱舟は無かったが、大洪水は有った。そして残された土地に、ノアに代表される僅かな人間と生き延びた動物が大集合した。それが「箱舟でノアたちと動物が生き残った」という形に変化した。

 またこの出来事は日本に伝わり「桃太郎」の話になった。桃太郎が桃でどんぶらこと流され、動物の犬・猿・キジを従えた、というのは洪水伝説そのもの。またノアたちが避難先にいた先住民を追い出したに違いなく、それが「桃太郎は鬼を殺した」という形で伝わった。



◆「始皇帝の不思議」

 秦の始皇帝とは恐るべき独裁者だったのか?

 宮田の結論:違う。焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)は本当に始皇帝がやった事なのか怪しく、司馬遷によるでっちあげの可能性大。度量衡の統一、貨幣の統一、などは明らかに大きな功績。万里の長城の建設は雇用の確保。兵馬俑は殉死の廃止。と、素晴らしい事しかやっていない。名君。

 さらに始皇帝は徐福という名前で日本に渡った。秦氏は「秦」の始皇帝の子孫という意味。



◆「ナスカの地上絵の不思議」

 ペルー・ナスカの地上絵は何のために作られたのか?

 宮田の結論:地上絵は「死んで天に昇った祖先が地上に戻ってくるときに目印」として作られた。さらにこの風習が日本に伝わり、「ナス」カの地上絵が「ナス」で動物を作るお盆の風習になった。



◆「モアイ像の不思議」

 イースター島のモアイ像は何のために作られたのか?

 宮田の結論:イースター島の住民の祖先はポリネシア人で、祖国から追放された罪人と看守。彼らが故国を想ってモアイ像を作った。だから大半のモアイ像は海の方を向いている。ちなみに同じポリネシア系の日本人は、同時期に奈良や鎌倉の大仏を作っている。

 そしてもしかすると、鳥居とか盛り塩とか桃太郎とかは、海外から日本に様々な伝承が伝わったのではなく、逆に日本が発祥の物が世界に拡散していったのでは?


感想

 評価は○。

 歴史推理物(?)「邪馬台国はどこですか?」に続くシリーズ二作目。今回もまた静香と宮田が有名な歴史ネタについて論争、というか口げんかを行うものの、最後には宮田があっと驚く真実(かもしれない)を指摘して終わるという、基本的に大ボラというか「んなわきゃない!」というタイプの連作短編集です。

 名前が似ているから、とか、形が似ているから、とかで、海外の何かと日本の物を強引に結びつけたりするのは、これオカルトの手法なのですが(笑)、別に真面目に主張している訳ではなくて半分笑い話として提示されているので、まあ軽く楽しく読めました。
 
 

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