【科学】感想:科学番組「超常現象」「第1集 さまよえる魂の行方」(初回放送:2014年1月11日)

NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

超常現象 NHK https://www4.nhk.or.jp/P2995/
放送 NHK BSプレミアム。全2回。

【※以下ネタバレ】
 

https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2019-05-25&ch=10&eid=13730&f=2995
超常現象 第1集「さまよえる魂の行方」
[BSプレミアム] 2019年5月25日(土) 午後6:00~午後7:30(90分)


幽霊、生まれ変わり、透視、テレパシー…。超常現象を、科学的に解明しようという試みが、急速に進んでいる。死後の世界や魂の謎を解明しようという科学者たちに迫る。


幽霊、生まれ変わり、透視、テレパシー…。超常現象を、科学的に解明しようという試みが、急速に進んでいる。第1集は、死後の世界や魂の謎を解明しようという科学者たちに迫る。イギリスで行われた幽霊城の大規模調査。電磁波や低周波音測定器などの最新機器が異常な数値を捉えた。その分析からは、心霊現象の意外な正体が明らかに。さらに、子どもたちが語る前世の記憶や、臨死体験の証言を、科学的に分析する試みを追う。


【出演】阿部寛,【語り】小林千恵

 

第1集 さまよえる魂の行方 (2014年1月11日初回放送)

 

内容

 阿部寛と謎の人物の対話という形で、「超常現象」に対する研究について紹介していく番組。オカルト紹介ではなく、完全に科学の研究分野として「人が幽霊を見てしまう、というのはどんな理由なのか」といった観点での様々な超常現象研究について扱っている。


◆幽霊

 幽霊を見たという話は多いが、「世界で一番幽霊に取りつかれた城」として有名なのがイギリス・ウェールズのマーガム城。ポルターガイスト現象、奇妙な金属音の様な音が聞こえる、男の幽霊を見た、謎の光を見た、などの怪現象を体験する人が後を絶たない。この城は今は住民はいないが、120年前に侵入者に人が惨殺されたという事実がある。

 イギリスにはケンブリッジ大学の研究者による霊的な現象の研究組織「心霊研究協会 SPR(Society for Psychical Research)」が存在する。SPRは最新機器を使用してマーガム城の調査を行った。

 するとすぐに「寒気を感じた」という報告があり、さらに部屋の中では最大3.3ボルトという電磁波が検出された。しかし室温の体かは記録されていなかった。


 この城の「心霊現象」は以下の様な説明がつけられる。


・寒気
 実験室でネズミにヘビの匂いをかがせると、体表面の温度が急低下する。特に背中の辺りの温度低下が顕著で、いわゆる「背筋が凍る」という状態である。これは本能的に体温を下げることで敵に見つかりにくくしている生存本能のせいである。人間が寒気を感じたというのは、本能が何らかの危険があると判断し、体温を下げたせいではないか。


・幽霊
 「パレイドリア効果」という、何でもないモノが人の顔に見える脳の錯覚のせいではないか。人は点が三つあればそれが「両目と口」に見えてしまう。これは人類の祖先が、生きていくために他の人間の表情を読む必要性があったために発達した本能。それが壁のシミなどを人の顔に見間違えたのでは。


・謎の光
 脳が電磁波を受信しているための錯覚の可能性大。医学的な治療のため、脳に電磁波を浴びせて見た場合、患者は「光の玉が見えた」という事を言うことが多い。人間の脳は電磁波を受信するとありもしない光が見えてしまうらしい。城に発生している電磁波が脳に影響を与えて「謎の光」を見せたのではないか。もっとも電線が無い城の中で何故電磁波が流れたのかは、それはそれで謎ではある。




臨死体験

 死にかけた人の臨死体験の証言はほぼ共通しており、人種・宗教に関わらず「暗いトンネルを潜り抜けると明るい場所に出た。そこはとても美しい場所で幸せな気持ちになった。」という内容となっている。

 ネズミで死の瞬間を調べたところ、心臓が停止し呼吸が止まっても、脳はその後30秒間は生きていて、しかもそれまでより激しく活動していることが分かった。臨死体験というのは、死を目前にした脳が「死」という究極の恐怖から人間を救うために見せている光景なのではないか。


 しかしそれでは説明できないのが体脱体験、つまり死の瞬間肉体から精神が離れ、自分の体を離れたところから見ていた、という証言である。しかしながら、これも脳の情報処理エラーのせいと説明が付く。人は普通なら自分の体がどこにあるかという事を間違えることは無いが、死という状況を前にして、脳が混乱し、体が別の場所にあるように錯覚してしまったと考えられる。

 しかしそれでも説明のつかないことはある。精神が肉体から離れた後、別の場所の光景を見てきたといい、しかもその光景が正しかったという場合。それは錯覚では説明不可能。




◆生まれ変わり

 幼い子供が、自分の前世について語る「生まれ変わり」。大体2~3歳の子供が話し始め、6~7歳で話すのをやめる。

 この現象について研究しているのがバージニア大学の医学部知覚研究室で、イアン・スティーブンソン教授は世界中に「生まれ変わり」現象が起きていることを知って、情報を集めた。実際のところ、この現象は南極を除く他の大陸全てに見られる。現在はスティーブンソンの弟子のジム・タッカーが研究を引き継いでいる。

 「生まれ変わり」の大半は「幼児期健忘」だと思われる。幼児はまだうまく物事を記憶することが出来ず、人から言われたことなどを実際にあったことと思い込んでしまう。親は自分が子供に何を話したとか、子供がテレビでどんなものを見たとか、そういう内容を殆ど把握していない。大半の「生まれ変わり」はこれで説明が付く。

 しかし、まれにそれでは説明できない驚くべきケースも存在する。ある少年は自分の前世が俳優だったといい、研究者がその人物を突き止めて生涯を調べてみると、肉親、仕事、家、結婚、その他の事項で50件も子供の証言通りだったという。


感想

 評価は○。

 2014年に放送された番組の再放送で、多分過去に見たことがあるはずなのですが、記録に残していなかったので再視聴したところ、いやはや面白かった。

 内容は、オカルト科学者が「幽霊はいる!」とか叫んでいる怪しい番組ではなく、最先端科学が超常現象と言われるものをどう解明していくか、を追ったれっきとしたサイエンス番組です。番組タイトルがちょっと挑戦的すぎるかもね。

 阿部寛が謎の超常現象研究家と対話して、そのやり取りから様々なテーマにつなげていく、という構成。「日食は原理が解っているから現代人は驚かないが、古代人にとってはまさに超常現象だったはず。ということは、現代の超常現象も未来人には説明できる、そういうものなのではないか」云々という台詞がなかなか印象的でした。なるほどねぇ。


 それにしても阿部寛が超常現象に懐疑的な役を演じるとは……、昔「トリック」というテレビドラマで阿部寛が上田教授というまさにアンチ超常現象のキャラを演じていたのですが、これはそういう繋がりでのオファーなのかなぁ?
 
 
超常現象: 科学者たちの挑戦 (新潮文庫)