感想:オカルト系番組「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」『File-25 ファティマ第三の秘密&口裂け女の謎』

ファティマ 第三の予言

ダークサイドミステリー http://www4.nhk.or.jp/darkside/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 
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d.hatena.ne.jp
 

『File-25 ファティマ第三の秘密&口裂け女の謎』 (2019年5月9日(木))

 

内容

https://www4.nhk.or.jp/darkside/x/2019-05-09/10/30184/1623645/
5月9日木曜
NHKBSプレミアム 午後9時00分~ 午後10時00分
ダークサイドミステリー「口裂け女の謎&究極予言ファティマ第3の秘密」


「幻解!超常ファイル」新作!究極予言「ファティマ第3の秘密」とは封印された人類破滅予言か?日本最強都市伝説・口裂け女の真実。陰謀機関?HAARP(ハープ)潜入!


「幻解!超常ファイル」完全新作!謎ドキドキと解明ワクワクの魅力全開。▽人類を超えた究極予言!「ファティマ第3の秘密」。聖母が3人の子どもに見せた秘密=恐怖の未来とは?ローマ教皇が封印した第3の秘密とは人類の破滅?真相は?▽日本史上最強の都市伝説・口裂け女。インターネットもない時代、なぜウワサは壮絶な速度で広まった?▽大地震や気象災害を起こす?陰謀論疑惑のアメリカ研究機関HAARP(ハープ)に潜入!

 

●1. ファティマ第三の秘密

 「ファティマ第三の秘密」とは、1917年に聖母マリアポルトガルの小村ファティマに現れた際に残した人類の未来に関する予言。その内容は長らく封印されており、1981年5月2日には、元修道士が旅客機をハイジャックし、時のローマ教皇ヨハネ・パウロ二世に「ファティマ第三の秘密」の内容を公開するように要求するという事件を引き起こしている。また、あるローマ教皇は予言の内容を知り、恐怖で失神したという噂すらある


 1917年5月13日、ファティマ村の三人の子供の羊飼いの前に、「光をまとった貴婦人」が現れ、自分は天国から来たといい、重要なことを伝えるので今後毎月13日に同じ場所に来るように告げた。そして三回目の7月13日に、貴婦人は三つの予言をした。マリア出現の噂はすぐに広まり、7回目の10月13日には七万人の人間が集まったという。この日を最後にマリア出現は終わる。その後、カトリックはファティマの聖母マリア出現を正式に認定し、バチカンもファティマを巡礼地に指定した。


 聖母マリアが伝えた内容はどういうものだったのか。それは羊飼いの一人で後に修道女となったルチアが、1941年に第一・第二の予言の内容を発表している。

第一の秘密
 イメージ。地獄のビジョン。

第二の秘密
 マリアの言葉によるお告げ。「戦争はもうすぐ終わる。ただし人々が神に背くことを止めないならビオ11世が教皇である間に再び戦争が起きる。それを防ぎたいならロシアを改宗させること」


 素直に読めば「1918年の第一次世界大戦終結」「1939年の第二次世界大戦勃発」「ソビエトの台頭」を的中させたことになる。その後ルチアは1944年に第三の秘密を記したものの、聖母からの言いつけで1960年までは公開しないようにと指示していた。そして1960年になってもバチカンは内容を公開せず、世間はバチカンに非難を浴びせた。


 さて、この一連のファティマ予言話について、全てにバチカンの政治的思惑が働いている、という説がある。実は聖母出現は世界中で2000件以上観測されているのだが、それがバチカンに認められたのは数十件にすぎない。バチカンは1930年にはファティマを聖地認定したが、それは何故か。

 その頃ヨーロッパは、宗教を否定する共産主義国ソビエトの台頭や、その他の独裁国家の出現により、宗教の地位が揺らいでいた。そんな時、ファティマの聖母を正式認定し、また予言の内容を公開することで、人々に神に祈ることの重要性を再認識させたかったという説がある。

 同じ理由でバチカンは第三の秘密の公開も先延ばしにした。それは第二次大戦以降は東西冷戦に突入し、核戦争による人類滅亡が現実のものになっていた。バチカンはあえて第三の秘密を公開しないことで、人々に平和のために祈るように促した、とも考えられる。

 西暦2000年5月13日、バチカンはついに第三の秘密の内容を明らかにした。それはビジョンで、「教皇たちが兵士に殺される光景」であり、1983年5月13日の、当時の教皇ヨハネ・パウロ2世暗殺未遂事件を現しているとされた。もっとも先の二つが戦争に関わる物なのに、最後の秘密が暗殺未遂事件ではあまりにもスケールが違い過ぎるとして、『バチカンは予言を完全公開しておらず内容を隠蔽している』と主張する者も多い。

 結局のところ、第三の秘密については未だ謎という他はない。



●2. アメリカ研究機関HAARP(ハープ)潜入

 ハープHAARPとは「高周波活性オーロラ調査プログラム High Frequency Active Auroral Research Program」の略で、アラスカにある研究施設。アラスカ大学の他、海空軍・国防総省が出資しているため、陰謀論のネタにされている。

 1995年に「天使たちはHAARPを奏でない」という本が出版され、この施設が高周波を上空200キロの電離層に照射することで、気象を操作し狙った場所に台風や豪雨を起こしたり、地下水を刺激することで人工地震を起こしたり、さらに高周波で人間の精神に影響を与えてたり、と、つまり世界征服を企む悪の陰謀の施設だ、と指摘された。

 ところがこの「HAARP」、実は年に一度施設が一般公開されており、2018年8月に取材班が内部を潜入調査した。HAARPがやっているのは、電離層に電波を照射してオーロラなどを発生させその様子を観察する研究で、陰謀どころか電離層を詳しく調査しているだけである。

 そもそもHAARPの施設が使用する電力は13メガワットで、雷が90万メガワットであることと比較するとあまりにも小さい。そのため電離層に届く電波はわずかであり、さらに地上に反射してくる電波はもっと微弱となり、とても人工地震を起こせるようなものではない。

 また2015年に軍が施設への参加を取りやめ、今はアラスカ大学のみが運営している。そしてそれを機会に世間の変な誤解を解こうと一般公開を始めたとのことである。陰謀論は単なる無責任な話に過ぎなかったというオチでした。



●3. 口裂け女

 日本のホラー系都市伝説の怪人としては、古くは「怪人赤マント」、近年では「八尺様」がいる。赤マントは昭和初期の怪人で、赤いマントを翻し校舎内に潜み少女を攫って行くという。また八尺様は平成20年(2008年)にネット掲示板で語られたキャラクターで、八尺=2.4メートルという長身の女で、語り手は田舎で八尺様と遭遇し、命を狙われ、命からがら都会に逃げ帰ったという。

 だがこの両者よりも圧倒的に高い知名度を持つのが「口裂け女」。夕方、下校中の子供の前に、大きなマスクを付けた若い女性が現れ「私、綺麗?」と聞いてくる。「綺麗」と答えると、女はマスクを外しながら「これでもか!!」と叫び、マスクの下は口が大きく裂けていて「お前たちも同じ顔にしてやる」といい、後を追いかけてくる。しかも口裂け女は100メートルを数秒で駆け抜ける俊足で、子供たちは逃げることもできない。

 しかし上記の基本的な部分以外は、地域によって様々なバリエーションがある。手に持っているのは、カマ・包丁・手斧・ナイフの他「編み棒」という場合も。また撃退法も「ポマード」と三回唱えると怯えて逃げていく、べっこうあめが好物で与えるとおとなしくなる、など、全国に多数のバージョンが存在する。

 口裂け女は昭和53年(1978年)10月頃に岐阜県で噂になったのが最初で、一か月で岐阜県中に拡散、そのあと数か月で子供の口コミだけで日本中に広まった。メディアを経由せずに何故これほど早く広域に拡散したのか? それは学習塾。この頃子供たちは学習塾によく通っており、学校の枠を超えたネットワークが成立していた。

 「噂の公式」として「噂の流布量=重要性×曖昧さ」というものがある(Rumor = inportance × ambigurity (R = i×a))

 これは噂を聞いた人間にとってそれが重要と感じ、かつ内容があいまい・不確かであるほど、噂は大きく拡散する、という事を意味する。何が重要かといえば、自分の命に関わる物事程重要な物はない。口裂け女は、子供が「自分の命を狙われる」という重要度、かつ相手の事がほとんど分からないという曖昧さ、この二点を理由に爆発的に拡散したのである。

 だが、このような噂の拡散は現代でも起こりうる。ネットで「誰それが子供に危害を加えた」というあいまいな噂を信じ込み、誰かを確証も無くリンチする、等という事は現代でも十分ありうる。命の危険に関するうわさは、誰もが重要だと思うので拡散しやすい。曖昧なデマの拡散に加担しないため、情報は内容をきちんと確認する。そうして曖昧さをゼロにすれば、公式通り噂は消えてなくなる。



感想

 去年(2018年)5月の放送以来、ほぼ一年ぶりに新作回の登場です。打ち切りになって無くて良かった。


 ファティマ第三の予言は、全編が「カトリックの総本山バチカンの陰謀じゃないの?」と主張する人の説を思いっきり推しており、ちょっと偏向気味?という感じでした。一応「有力な説の一つ」と断ってはいましたけど、普段は「世の中にはこんな風に伝わっているが真相はこんなもんでした」とさらっと流すのですけどねぇ……

 HAARPはムーで何度も紹介される陰謀の拠点的施設ですが、一般公開されていたとは……、そして見物客の一人のオカルトマニアは「中を見てますます怪しいと確信しましたよ」とか言っているのを見て思わず苦笑しましたよ。信じない人は何を見ても陰謀論から抜け出せないのね。

 口裂け女話は、放送時間の制約か、いまいち踏み込んだ内容になっていなくて物足りなかったです。もっと当時の子供たちのパニックぶりとかそういうのを時間をかけてやって欲しかった。


 ……、ちなみにこの回、再放送がいきなり中止になった他、NHKアーカイブからも削除されているとかで、封印回になった模様……、うーん、やっぱり「カトリックの陰謀」説を連呼しすぎてマジにクレームが来たんですかねぇ?
 
 

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番組概要

http://www4.nhk.or.jp/darkside/26/
UFO、ネッシー、雪男、予言&占い、心霊現象、超古代文明、妖怪、吸血鬼、魔女…。闇の魅力がもつ妖しげな幻に対して、「今、何がどこまでわかっているのか?」を徹底検証!そこから浮かぶのは、自然の神秘、私たちの脳や心の不思議なメカニズム、社会のからくり、昔の人の驚くべき技術と想像力…。ダークサイドの向こうの“本物の不思議”をワクワクしながら楽しんでいただく、NHKならではの超常現象ガチンコ検証番組!


出演者 栗山千明 (くりやまちあき)

テーマ曲: 志方あきこ
オープニング曲“Arcadiaアルカディア)”
エンディング曲“Leyre(レイレ)”
アルバム名/ “Turaida(トゥライダ)”

語り: 中田譲治(声優、俳優、ナレーター)
代表作 『巌窟王』(モンテ・クリスト伯爵)、『ケロロ軍曹』(ギロロ伍長)、『HELLSING』(アーカード)、『Fate/Zero』(言峰綺礼)、『劇場版 空の境界』(荒耶宗蓮)など

 
 
恐怖の地震兵器HAARP (ムー・スーパーミステリー・ブックス)
NHK 幻解! 超常ファイル ダークサイド・ミステリー
NHK 幻解! 超常ファイル ダークサイド・ミステリー (教養・文化シリーズ)