【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」『“怪しい歴史”禁断の魔力 あなたもだまされる!?』(2019年6月13日(木)放送)

幕末 維新の暗号

ダークサイドミステリー NHK https://www4.nhk.or.jp/darkside/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史…。こうした事件の数々を徹底再検証!


人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」を拡大スピンオフ!今度は人間や自然が生み出した謎と恐怖に満ちた事件・伝説の正体に、栗山千明志方あきこ中田譲治のダークなトライアングルで引き続き迫ります。

 

“怪しい歴史”禁断の魔力 あなたもだまされる!? (2019年6月13日(木)放送)

 

内容

https://www4.nhk.or.jp/darkside/x/2019-06-13/10/21482/2292006/
6月13日木曜
NHKBSプレミアム 午後9時00分~ 午後10時00分
ダークサイドミステリー「“怪しい歴史”禁断の魔力 あなたもだまされる!?」


あなたは信じてませんか?幕末夢のオールスター集合写真!?源義経は大陸に渡りチンギス・ハンに!?東北に幻の古代王朝が実在!?怪しい歴史を徹底検証!謎の真相に迫る。


私たちの常識は間違いだった?お宝・夢の幕末オールスター集合写真は、坂本龍馬西郷隆盛たちの陰謀会議!?牛若丸=源義経はモンゴル皇帝チンギス・ハンと同一人物!?日本古代史がひっくり返る、東北に幻の古代王朝が実在した!?そんなロマンと魅力あふれる、でも危険で怪しい闇の歴史を、徹底検証!なぜ人は怪しい歴史にだまされるのか?誰がニセ歴史を創るのか?話題の歴史研究者・呉座勇一さんも緊急参戦!真実は見えるか?

 
 今回のテーマは「ニセ歴史」

●1.幕末志士オールスター大集合写真が存在する?!

幕末維新おもしろミステリー50

 幕末の志士が勢ぞろいした「オールスター大集合写真」が存在する! 慶応元年(1865年)に長崎の上野彦馬という写真家のスタジオで撮影されたとされており、44人の男性が写っている。そしてこの写真に写っているのは、明治維新頃に活躍した超有名人たち、坂本龍馬高杉晋作西郷隆盛桂小五郎中岡慎太郎伊藤博文大隈重信に加えて、なんと幕府側の勝海舟までが収まっているのである。つまり明治維新とは幕府側と志士側が裏で手を組んでいた、一種のお芝居だったのか?!


 と言いたいところだが、この写真に写っているのは坂本龍馬たちでないことは既に確定している。この写真は、明治元年(1968年)に、日本で英語などを教えていた宣教師フルベッキが、彼の教え子の佐賀藩士たちと共に写した写真、通称「フルベッキ写真」と言われるものである。藩士の子孫が持っていた物なのだから間違いない。

 ではなぜその写真が「幕末志士オールスター大集合写真」などと言われるようになったのか? その始まりは昭和49年(1974年)に肖像画家・島田隆資氏が雑誌「日本歴史」に、肖像画などを元にしてこの写真に有名志士が写っていると載せたのが始まり。島田氏は最終的に23人の有名志士が写っていると断定し、その中には写真が一枚も残っていないとされる西郷隆盛も写っていると主張したのである。

 時は流れて昭和55年(1980年)、大隈重信たちの故郷の佐賀県の新聞でこの写真が「幕末志士オールスター大集合写真」として紹介された。また昭和60年(1985年)には鹿児島出身の政治家・二階堂進がこの写真を当時の中曽根首相に見せるシーンがニュースになっている。

 古写真の研究者は、すぐにこれは佐賀藩士たちが写っているもの、として偽物だと発表したものの、平成13年(2001年)にはまた佐賀でこの写真が「幕末志士オールスター大集合写真」として有田焼に焼き込まれて100万円で発売された。しかもその写真では44人全員の名前が「特定」されていた。この時もすぐに偽物と否定されたものの、以後、何度否定されても、この写真は「幕末志士オールスター大集合写真」として蘇ってきてしまい、未だに陰謀論の元ネタにされたりしている。


◆「歴史学者・呉座勇一 ニセ歴史を斬る!」その1「おもしろいものは疑え!」

 幕末の有名人が勢ぞろいした写真が有ったら凄く面白い。面白いが「そんな都合の良い話が本当にありうるのか?」と疑うべき。


●2.東北に幻の古代王朝が存在した?!

東日流外三郡誌〈1〉古代篇(上)

 史実では東北は7世紀にヤマト王朝に征服されたと伝えられていた。しかし実は東北にはアラハバキ族による王朝が存在し、ヤマト政権すら従え、貿易でインドやアラビアと交流していたのである!!

 という「事実」を伝えるのは「東日流外三郡誌」(つがるそとさんぐんし)という文書。昭和22年(1947年)に青森県に住む和田喜八郎氏が、屋根裏から転落してきたながもちの中で見つけたとされ、その中には前述の古代東北王朝について記されていた。この幻の古代東北王朝は、一時期大ブームを巻き起こしたものの、現在では「戦後最大の偽書事件」と言われている。


 昭和47年(1972年)頃、和田氏は津軽の役場に東日流外三郡誌のコピーを持ち込み、役場は内容に疑問を持ちつつも、「真偽はともかくこういう物が存在します」という事で昭和50年(1975年)に本にして出版した。最初は無視されたものの、著名な古代史研究家・古田武彦氏が東日流外三郡誌の内容を熱烈に支持したため、一気に有名になった。和田氏はその後も屋根裏から多数の古文書を発見、それらは「和田家文書(-もんじょ)」と呼ばれるようになった。

 この古代王朝の話に地元の人々は大喜びし、荒羽吐(アラハバキ)神をまつる祠や、神のお告げをする祭りなどが次々と誕生した。

 しかし1990年代に入ると、東日流外三郡誌の内容に疑いの目が向けられるようになった。何故なら、江戸時代に書かれた文書の筈なのに、「惑星」「一光年」「洗脳」「仕掛人」「アダムとイブ」といった現代でないと使われていないような言葉が多数書かれていたからである。また書物の筆跡は和田氏のそれと同じで、しかも誤字の間違え方まで一緒だった。結局平成17年(2005年)には青森県ですら公文書に「偽書とみられる」という言葉を載せている。

 和田氏は平成11年(1999年)に73歳で死去。その三年後、2002年に和田氏の家を調べたところ、そもそもこの家には「屋根裏」という物が存在せず、ゆえにそこから文書が落ちてくることもあり得ないと判明した。また和田氏のイトコの女性は、はっきり文書は和田氏が捏造した物と語っている。


◆「歴史学者・呉座勇一 ニセ歴史を斬る!」その2「”歴史の真実”には要注意!」

 歴史という物は色々な資料を色々とつなぎ合わせることでようやく浮かび上がって来るもの。「これが真実だ!」とズバリ解るような資料が出てきたら、それは疑ってかかれ。


●3.源義経とチンギス・ハンは同一人物だった?!

成吉思汗は義経なり

 源義経は1189年に31歳で死んだ事になっている。しかし! 実は義経は生き延びて大陸に渡り、チンギス・ハンと名前を変え、大帝国を建設したのだ!!

 という「源義経=チンギス・ハン」説を唱えた「成吉思汗ハ源義経也」という本が大正13年1924年)に発売され大ベストセラーとなった。著者は小谷部全一郎(おやべ・ぜんいちろう)という人物で、義経とチンギス・ハンは家紋・旗印、なにより馬を使った戦い方などが共通するとして、両者は同一人物だとした。

 もっともこの説は明確な証拠ゼロの珍説に過ぎない。なによりモンゴル側にはそんな話は全く無いし、そもそもチンギス・ハンはいつ生まれて親は誰で、ということがはっきり記録されているからである。


 この「源義経=チンギス・ハン」説は小谷部がいきなり唱えたのではなく、それまでの300年間の日本人の願いが作り出したものだった。


義経願望伝説第1段階:義経は生きのび北海道へ!

 東北には義経は本当は死んでなくて生き延びた、という言い伝えがあちこちに残っている。徳川光圀あたりも「義経蝦夷に落ちのびた」云々という事を書きしるしている。もっともこれは義経に限った話では無く、民衆の願望として「不慮の死を遂げた英雄は実は死んでいなかった」と語られることは世界中に見られる。


義経願望伝説第2段階:義経の子孫が大陸ですごいことに!?

 1800年頃、蝦夷地調査のため派遣された間宮林蔵は、さらに樺太を経て大陸に渡り、現地人から「義経がこの地に来た。そのあと彼の子孫が中国の皇帝になった」云々という話を聞いたと言う。


義経願望伝説第3段階:もし義経がチンギス・ハンであれば……!

 明治の外交官・末松謙澄は「源義経=チンギス・ハン」説を主張した。なぜならば、当時の日本はヨーロッパから東洋の弱小国と小馬鹿にされていたが、もしチンギス・ハンが日本人なら、日本人が興したモンゴル帝国がヨーロッパの国々を脅かしたことになり、ヨーロッパの国々を見返すことができるからである。


 やがて日本は日清・日露戦争の勝利のおかげで、大陸に進出していくようになった。そんなとき、小田部の「成吉思汗ハ源義経也」が出版される。日本人の義経が大陸で大活躍した、という話は日本人の心をとらえるものだった。もっとも当時の学会はこの説を完全否定。証拠が無いと切り捨てたが、小田部は「学者は証拠にこだわり過ぎる」と全く話がかみ合わなかった。

 その後大陸に進出を続けた日本は泥沼の満州事変・日中戦争へと突入していくのである……


◆「歴史学者・呉座勇一 ニセ歴史を斬る!」その3「”歴史のロマン”では許されない」

 「歴史のロマンを楽しんでいるだけだから、面白おかしく消費できれば良いじゃん?」とはならない。東日流外三郡誌にしても源義経=チンギス・ハン説にしても、ブームになると現実の社会を動かしてしまう。しかも偽の歴史、つまりウソだから、間違った方向に社会を動かしてしまう。それが問題。きちんと真実を知るのが大前提。


感想

 今回は偽史ネタ三連発。とり上げられたどの話も内容が凄く濃くて、見ていて非常に楽しめました。東日流外三郡誌については「何故この内容で騙される……?」という感じですが、当時のマスコミも「面白ければそれでいいじゃん?」というノリだったんだろうなぁと予想。
 
 

他の回の内容・感想は以下のリンクからどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 

出演者
栗山千明 (くりやま ちあき)
BIRTHDAY 1984年10月10日
BLOOD TYPE A型


ゲストトーク司会: 片山千恵子アナウンサー


テーマ曲: 志方あきこ
オープニング曲“Arcadiaアルカディア)”
エンディング曲“Leyre(レイレ)”
アルバム名/ “Turaida(トゥライダ)”


語り: 中田譲治(声優、俳優、ナレーター)
代表作 『ゴールデンカムイ』(土方歳三)、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(タンクジョウ)、『宝石の国』(金剛先生)、『巌窟王』(モンテ・クリスト伯爵)、『ケロロ軍曹』(ギロロ伍長)、『HELLSING』(アーカード)、『Fateシリーズ』(言峰綺礼

 
 
偽書「東日流外三郡誌」事件 (新人物文庫 さ 1-1)
義経はジンギスカンになった!  その6つの根拠