【SF小説】感想「エピクロス症候群」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 585巻)(2019年1月22日発売)

エピクロス症候群 (宇宙英雄ローダン・シリーズ585)

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エピクロス症候群 (宇宙英雄ローダン・シリーズ585) (日本語) 文庫 2019/1/10
クルト・マール (著), 若松 宣子 (翻訳)
文庫: 256ページ
出版社: 早川書房 (2019/1/10)
発売日: 2019/1/10

【※以下ネタバレ】
 

ローダンとアルマダ王子ら銀河系船団の一行は、アルマダ第一艦隊の座標にたどりつく。だが、そこにあるのは謎めいた障壁だった!?


アルマダ王子のナコールとともにローランドレをめざす銀河系船団は、いよいよ目的地に近づいていた。ところがそのとき、一種の壁のような構造物が宇宙空間にあらわれる。その構造や性質は、探知分析によってもまったく不明だ。同時に《バジス》に警報が鳴りひびき、船内に未知者が侵入したことがわかった。船載コンピュータのハミラー・チューブが推測するには、異人からローランドレを守る者ではないかというのだが……

 

あらすじ

◇1169話 エピクロス症候群(クルト・マール)(訳者:若松 宣子)

 ローランドレを目指す銀河系船団の前に巨大な壁が現れ、さらに《バジス》に「ローランドレの門番」を名乗る存在「クメキル」が侵入した。クメキルは「ローランドレの前庭」までには四つの関門があり、通過にはそれぞれ合言葉が必要だと教える。やがて船団の乗員のうち、アルマダ炎を持たない者たちが謎の力で強烈な食欲に襲われ、宴会に没頭し任務を放棄してしまう。しかし、この「エピクロス症候群」は、超現実学者アンブッシュ・サトーの活躍で消滅した。またナコールが第一の合言葉を思い出したことで壁は消えた。しかし、その先に第二の壁が出現した。(時期:NGZ427年3月23日とその前後)

※初出キーワード=ローランドレの門番、クメキル、エピクロス症候群



◇1170話 ブラックホールの深淵(クルト・マール)(訳者:若松 宣子)

 銀河系船団は第二の壁の前で立ち往生するが、そこにまたクメキルが現れ「十字の巡行者」について触れる。やがて《バジス》の前に宇宙船団が出現し、その乗員「スウィ」たちは、伝説に基づき、「星の精」の“自由”と“正義”を見つけ出して解放するため延々旅をしていると解る。この謎の状況も、アンブッシュ・サトーによって突破され、またナコールが第二の合言葉を思い出したため、壁は消滅した。(時期:不明。NGZ427年3月~4月頃)

※初出キーワード=十字の巡行者、十字の探索者、王冠の従者


あとがきにかえて

 犬にかまれてけがをした話。


感想

 前半エピソード … いよいよローランドレに接近した事を思わせるエピソード。このサイクルは連続ドラマ風にこれといった切れ目がないまま延々話が進んで来たので、昔のサイクルと比較してイマイチ量をこなした感が無いのですが、一応クライマックスに近づいてきているようです。

 しかし、故郷を遠く離れた全く別の銀河で課される試練が、キリスト教七つの大罪が元ネタっぽい「暴飲暴食」というのはちょっと……、日本人読者としては違和感あります。まあ本国ドイツでは常識レベルの話で全くOK、なのかもしれませんけど……

 今回から登場した新キャラクター「アンブッシュ・サトー」が面白すぎです。2000年後の未来に東洋思想を持ち出して、「気」とか「チャクラ」とかの用語でローダンたちを困惑させておいて、しかし結局彼のいうことが正しい、という「謎の東洋人」を凝縮したような人物(笑) 今後活躍するのか目が離せません。ちなみにドイツ語では「サトー・アンブッシュ(Sato Ambush)」と書かれているのですが、何故姓名を逆にしたのかな。やはりサトー=佐藤と解釈して、日本人の名前ぽく整えたという事でしょうか。翻訳のやり過ぎって気もしますけど。

 ローランドレの門番クメキルのキャラクターも面白い。最初はただの暴れ者のようにふるまっておいて、実は思慮深いキャラクターだったというのが結構響きます。



 後半エピソード … 前半に続き、第二の関門の前で課された試練のエピソード。しかしマールが話を凝り過ぎで、ジェン・サリクが夢か現実か解らないまま謎の中国人とたびたび遭遇したり、「「星の精」の“自由”と“正義”」だの「ハイエナ「褐色のガルド」と「グレイのガルド」」など、設定がややこしすぎて、この話はどこに着地するのか最後の最後まで分かりませんでした。

 しかも結末は「何それ……」みたいな意味不明のオチでしたし……、これもキリスト教的な「十字軍」ネタをやりたかっただけなのでしょうか……? まあアンブッシュ・サトーのキャラが相変わらず面白かったのでそこそこ良かったですけど。
 
 

550巻~600巻(「無限アルマダ」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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