【映画】感想:映画「頭上の敵機」(1949年:アメリカ)

世界名作映画全集80 頭上の敵機 [DVD]

NHK BSシネマ http://www.nhk.or.jp/bscinema/
放送 NHK BSプレミアム。2020年7月29日(水)

【※以下ネタバレ】
 

主演グレゴリー・ペック第2次大戦下、対独戦略爆撃の任務を受けたアメリカ軍部隊の実話を映画化、部隊の士気を高揚させようと孤軍奮闘する指揮官を描く戦争ドラマ。


第2次大戦下、対独戦略爆撃の任務を受けたアメリカ軍部隊の実話を映画化した戦争ドラマ。イギリスに基地を置くアメリカ陸軍航空軍第918部隊は、作戦に失敗し、大量の犠牲者を出す。サベージ准将が新しい指揮官となるが、厳格な規律と猛特訓で、隊員たちは不満を募らせていく…。グレゴリー・ペックが、部隊の士気高揚のため孤軍奮闘するサベージ准将を熱演、ディーン・ジャガーがアカデミー助演男優賞、録音賞に輝いた名作。

 

あらすじ

 1949年。ロンドン。ストーバルという男が、店頭で壊れた人型のビアジョッキを見つけ、それを買い取ると、アーチベリーに向かい、空港跡地で物思いにふける。


 1942年。アメリカ軍の爆撃機部隊「第918航空群」は、イギリスのアーチベリーにある基地からヨーロッパのドイツ軍の爆撃に出撃していたが、損害ばかり大きく、成果は殆ど挙げられていなかった。参謀総長補佐のサベッジ准将は、第918航空群司令で友人でもあるダベンポート大佐に問題があり、彼が兵士に近すぎると指摘する。そしてダベンポートは解任され、代わりにサベッジが指令として着任する。

 サベッジはすぐさま基地内のバーの閉鎖や、規律違反に対する降格などを実施し、また初の訓示では兵士たちに、生き残ろうと思わず死んだつもりで戦えと厳命する。兵士たちは反発し、すぐさま全員が移動願を提出するが、サベッジは副官のストーバルに頼み、書類の処理を10日間かけるようにさせて、時間を稼ごうとする。

 サベッジは訓練を重ねて全機が密集して飛行するようにさせ、さらに脱落した僚機は見捨てて無事な僚機を守るように徹底させる。こうした積み重ねで少しずつ爆撃の際の犠牲は減り、成果が出始めた。ある出撃で、サベッジは爆撃中止命令が出たものの命令を無視して飛行し、無事に爆撃を成功させたあと、「無線機の故障で中止が解らなかった」と報告する。そして兵士たちをねぎらうため、サベッジはついにバーを解放する。そして部下たちは全員移動願を撤回した。

 第918航空群はいよいよドイツ本土への爆撃を実施し、これも成果を上げる。帰還後、サベッジは本来の乗員ではないストーバルや従軍神父なども爆撃に参加していたと知り驚く。

 やがて、ドイツ奥地にある工業施設への長距離爆撃が立案された。サベッジの上司はサベッジに早く第918航空群での仕事を切り上げ、自分の元に帰ってくるようにせかすが、サベッジはまだ指揮官が育っていないと拒絶する。しかし、上司からはかつてのダベンポートと同じように部下に近くなりすぎていると注意されてしまう。

 ドイツ奥地への最初の爆撃は大戦果を挙げるものの、サベッジが目をかけていたコップ少佐は戦死してしまった。翌日、サベッジは再度出撃しようとするものの、体に力が入らず、ストーバルたちに出撃を阻止され、錯乱してわめき散らした挙句、放心状態に陥ってしまう。そのまま微動だにしなかったサベッジだったが、爆撃機部隊の帰還と共に正気を取り戻す。部下たちはサベッジ抜きでも見事に任務を達成していた。安堵したサベッジはベッドで休息を取り始める。


 再び1949年。ストーバルが基地跡から自転車で走り去るシーンで〆。

感想

 評価は○。

 予想していたような「戦争映画」とは全然違うものでしたが、これはこれで面白い映画でした。

 第二次大戦中のアメリカ軍の爆撃機部隊をテーマにした映画、とくれば、もうすさまじい戦いまた戦いの戦争映画だと思ってしまうのですが、視聴してこれがビックリ。殆どのシーンは基地での人間ドラマで、戦闘シーンは全2時間13分の映画で1時間40分過ぎまで出てきません。


 ではそれまで何をやっているかというと、「リーダーとして、成果の上がらない組織をいかに立て直していくか」という組織の再構築のドラマです。

 前任者が部下を大事にしすぎたために却って効率が上がらない状況だったところに後任として乗り込み、部下たちに「疲れているとか甘えるな」「命を惜しまず死んだつもりで戦え」云々と言ってのけ、唯一の娯楽のバーもすぐに閉鎖し、問題点を洗い出すため猛訓練を敢行する。当然部下たちは反発する訳ですが、ここからどうやって部隊を立て直していくか、の物語。

 サベッジは「傷ついた僚機は見捨てて、無事な編隊を守れ」といった非情な指示を出したりして部隊の雰囲気は最悪なわけですが、サベッジの指示通りにするとだんだん犠牲は減少し、代わりに戦果が上がってくる。組織は立ち直り始めるわけです。

 しかし、それでいきなり部下たちの心が掴めるわけでもなく、サベッジが優秀な兵士の一人を呼び出して「成果が上がったのに嬉しくないのか」と聞いても部下から「よく解らない」とか言われてしまい、困惑しきりになったりする。でもまあ、成功するとやはり人望が出てくるもので、終盤は専門の航空兵でもない者が勝手に爆撃機に乗り込んで銃を撃っていたりして、基地全体がやる気になっていることが描写され、サベッジ改革の成果が出てきた、と解らせる描写は実に上手かった。

 最後は、リーダーが突然ぶっ倒れるものの、いつの間にか部下は成長していて無事に上司の代役を果たせました、と絵にかいたようなハッピーエンドで、後味も良し。


 「戦争映画」としては拍子抜けにも程がありましたが、組織改革物というか、そういうジャンルの作品としては凄く面白かったです。あと、グレゴリー・ペックってハンサムだよなぁ。


おまけ

 唯一の戦闘シーンは、アメリカとドイツの軍隊が撮影した本物の映像を使用したそうで、当然リアリティ抜群でした。白黒映画なので何の違和感も無く使えてましたね。
 
 

頭上の敵機
[BSプレミアム]2020年7月29日(水) 午後1:00~午後3:13(133分)



【製作】
ダリル・F・ザナック
【監督】
ヘンリー・キング
【原作・脚本】
サイ・バートレット、べアーン・レイ・ジュニア
【撮影】
レオン・シャムロイ
【音楽】
アルフレッド・ニューマン
【出演】
グレゴリー・ペック、ディーン・ジャガーヒュー・マーロウ ほか



製作国:
アメリ
製作年:
1949
原題:
TWELVE O’CLOCK HIGH
備考:
英語/字幕スーパー/白黒/スタンダード・サイズ

 
 

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