【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」(2020年版)『「ひかりごけ」の衝撃 ~現代の私たちの物語~』(2020年9月3日(木)放送)

ひかりごけ (新潮文庫)

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇
背筋がザワザワ、心がドキドキ、怖いからこそ…見たくなる!
世界はそんなミステリーに満ちている。
未解決の事件、自然の脅威、不思議な伝説、怪しい歴史など、謎と恐怖の正体に迫ります!

 

ひかりごけ」の衝撃 ~現代の私たちの物語~ (2020年9月3日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー「“ひかりごけ”の衝撃~現代の私たちの物語~」
[BSプレミアム]2020年9月3日(木) 午後9:00~午後10:00(60分)


極限状況を生き残るためには、人は誰かを犠牲にするしかないのか?映画・舞台化で有名な、戦後文学の問題作「ひかりごけ」(作・武田泰淳)を通して、人間の心の闇に迫る。


あなたは極限状況で生き延びるため、他人を犠牲にしますか?それとも他人を生かすため、犠牲になりますか?映画化・舞台化などで有名な、戦後文学の問題作「ひかりごけ」(作・武田泰淳)。遭難し洞窟に閉じ込められた4人の男。飢餓のなかで迫られる究極の選択とは?またこの作品と似た状況が発生した、「アンデスの奇蹟(きせき)」事件とは?不安に囲まれる現代社会、人間が生き延びようとすることで背負う罪と、心の闇に迫る。


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】島薗進檜垣立哉,【インタビュー】阿刀田高,【語り】中田譲治,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「他人を犠牲にして生き延びる事」


●「ひかりごけ

 「ひかりごけ」は昭和29年に発表された「武田泰淳」の短編小説。戯曲形式で第一幕と第二幕の二部構成。

 まず、食べ物の無い所に他人と閉じ込められたとき、一番罪深いのは以下のどれかを問いかける。

1.単なる殺人
2.人肉を食う目的の殺人
3.食う目的で人を殺し、肉は食わない
4.食う目的で人を殺し、肉を食う
5.殺人はせず、自然死した人肉を食う


 第一幕。昭和19年冬、海難事故で四人の生存者「船長」「西川」「八蔵」「五助」が洞窟に閉じ込められ、飢えに苦しんでいた。やがて弱っていた五助が餓死し、船長と西川はその肉を食うが、八蔵は五助に死体は食わないでくれと頼まれていたので、食うことを拒む。

 衰弱した八蔵は、西川に対し、頭の後ろに死体を食った人間の印であるヒカリゴケの様な光の輪が見えると言い、西川は慟哭する。やがて八蔵も餓死し、船長と西川は八蔵の死体も食べる。

 西川は船長に、食べるために自分が死ぬのを待っているだろうと言い、それはただ殺すよりなお悪いと非難し、死体を食われないように海で死んでやると言う。二人は言い争いとなり、船長は西川を殺す。


 第二幕。半年後。船長は裁判にかけられるが、船長は「自分は人肉を食べた者か、食べられた者のみに裁かれたい」といい、さらに「自分は我慢している」という奇妙な言葉を繰り返す。船長は自分に光の輪が見えるはずだと言うが、周囲の誰にも見えない。逆に、裁判長・検事・弁護人・傍聴人の方に光の輪が現れる。船長は光の輪が見えるように、もっと真剣に自分を見ろと叫ぶ。終わり。



●モデルとなった事件

 武田泰淳が「ひかりごけ」を書くに際し、モデルとした現実の事件が存在した。昭和18年12月に知床で船が遭難し、船長と若者の二人が生き残り、無人の漁師小屋にたどり着いた。二人は残された味噌と昆布で味噌汁を作って食べ続けるが、昭和19年1月青年は衰弱死した。船長によれば、半ば朦朧とした状態で青年の死体を食べたという。

 2月3日、船長は遭難から二ヵ月後に救助され、「奇跡の神兵」と呼ばれた。しかし漁師小屋から血痕と人骨が発見され、6月に逮捕された。船長は死体損壊罪で有罪となり、一年の刑となった。船長はその後、人肉を食したことを悔い続け、自殺未遂を繰り返した。そして1989年に亡くなった。



アンデスの奇跡

 1972年10月13日にウルグアイラグビーチームの選手たちが、首都モンテビデオからチリの首都サンティアゴに飛行機で移動していたが、飛行機はアンデス山脈に墜落してしまった。死者16名、重軽傷者29名。食料は乏しく、生存者たちは必死に救助を待ったが、10月21日、ラジオの放送で救助隊は飛行機が見つけられず捜索を断念してしまった事を知った。

 生存者たちは自力で下山し助けを求めようとするが、人がいるところまで100キロあり、体力のない状態ではとてもたどり着けない。彼らは死体を食べるかどうかを議論し、反対派は死体を傷つけることは神が許さないだろうと言い、賛成派は生きることを放棄する事こそ神が許さないと言った。結局、賛成派の意見が通った。

 12月12日、体力が回復した代表者が下山を開始し、9日後に人里にたどり着き、残りの生存者もすぐに救出された。生存者は計16名。

 救助後、一部マスコミが、生存者たちがどうやって生き延びていたかをセンセーショナルに書き立てたが、カトリック教会は「生きていることが一番大事」との見解で生存者たちを全面支持した。


感想

 なんかこう微妙な回でした……、「人肉食」というテーマの事件を取り上げる……、のではなく、それを元にしたフィクション「ひかりごけ」の内容を論じる、という、なんか文学系番組みたいなノリになってしまい、あんまり歴史の闇という感じでは無かったな、と……

 武田泰淳の従軍体験とか、モデルとなった事件の当時の日本の「人を食って生き延びるなんて最低、国のために死ぬべきだった」という価値観とか、現代人は「勝ち組」は他人を犠牲にして生きている、とか、戦争で生き延びた者は他人を犠牲にして生きた、とか、人は他人を犠牲にして生きている=原罪を抱えている、とか、色々語ってはいたのですが、どうもゴチャゴチャしていて、腑に落ちる内容では無かったなぁ……
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

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