【特撮】感想:特撮「ウルトラセブン 4Kリマスター版」第24話「北へ還れ!」

ウルトラセブン Vol.1 [DVD]

ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。

 

第24話 北へ還れ!

 

あらすじ

ウルトラセブン 4Kリマスター版(24)「北へ還れ!」
[BS4K] 2021年09月05日 午前8:00 ~ 午前8:26 (26分)


北極圏で地球防衛軍のパトロール機が民間航空機と衝突する事故が発生。調査に出動したフルハシのウルトラホーク3号も操縦不能に。すべてカナン星人の仕業だった!


1967年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の4K化・国内初放送!母親が病気だといううその知らせを受けたフルハシが北海道に帰郷する最中、北極圏で地球防衛軍のパトロール機が民間航空機と衝突する事故が発生。帰還したフルハシが調査のために出動するが、彼のウルトラホーク3号が操縦不能に陥る。北極圏占拠を狙うカナン星人が、特殊な光線でメカの機能を狂わせ、航空事故を引き起こしたのだ!


【出演】中山昭二森次晃嗣ひし美ゆり子毒蝮三太夫阿知波信介古谷敏

 
登場 … オーロラ怪人 カナン星人、カプセル怪獣 ウインダム

 フルハシは母親が病気との知らせを受け、実家のある北海道に帰省した。ところが、出迎えた妹から、病気というのは嘘で、母親が実家の牧場を継がせるために呼び戻したのだと聞かされ、すぐにUターンして帰ってしまう。


 北極上空を飛行していた地球防衛軍のパトロール機が操縦不能に陥り、民間の旅客機と正面衝突するという大事故が発生した。タケナカ参謀はキリヤマに事故の徹底調査を命じ、フルハシがウルトラホーク3号で北極まで調査に向かうことになった。ところが出発直前、フルハシの母親から基地に電話が入り、母親がフルハシを連れ戻すため上京したと解る。フルハシは母親の相手をアンヌに任せて、自分は調査に向かった。

 北極を目指すフルハシのホーク3号だったが、操縦桿が動かなくなりまっすぐにしか飛行できなくなったうえ、同様に操縦不能となった旅客機との衝突コースに入ってしまう。キリヤマはダンをホーク1号で北極に向かわせる一方、フルハシには自爆装置を起動したあとに脱出するように命じるが、脱出装置も機能しないことが判明する。

 例え自爆装置を停止させても、結局はホーク3号は旅客機と衝突することになるため、キリヤマは旅客機の乗員300人の命を救うため、フルハシにそのまま自爆するように命じる。そして基地のふもとのホテルで待っていたフルハシの母親を急遽基地内に呼び寄せ、通信でフルハシに呼びかけさせる。フルハシは自爆の時間が迫っていることを隠し、母親と最期の会話をする。

 一方、北極圏では、カナン星人が北極を自らの勢力圏と見なし、接近してくる航空機を灯台型の基地からコントロールして事故を起こしていた。ダンは怪しげな灯台を見つけ、緊急着陸してウィンダムを差し向けるが、ウィンダムはカナン星人に操られダンに襲い掛かってくる。ダンはセブンに変身するとウインダムを正気に戻し、逃走したカナン星人の灯台型宇宙船を破壊した。

 フルハシは、ホーク3号の衝突直前で機体のコントロールを取り戻し、衝突を回避すると自爆装置を停止させたた。無事基地に帰還したフルハシは、母親が北海道に帰ってしまったと知らされる。キリヤマはフルハシに北海道へのパトロールを命じ、フルハシは故郷の上空を飛びながら母親に思いをはせるのだった。


脚本:市川森一
監督:満田かずほ
特殊技術:高野宏一


感想

 評価は○(バトルシーンがちょっと……)

 フルハシ隊員のキャラクターの掘り下げをメインにした回で、人間ドラマパートが母子の関係を描いた実にいい出来だったにもかかわらず、その後のセブンの戦闘シーンがふざけた展開だったため、傑作になり損ねた、実にもったいないエピソードでした。

 人間ドラマパートは、フルハシ隊員の母親が、息子(名前はシゲル)に実家の仕事を継がせるため、今の仕事を辞めさせようと北海道から上京してくる、と、一般のドラマでもおかしくないような展開で、ほぼ子供視聴者の事を意識していないような内容でなかなかの面白さ。さらに、自爆まで残り数分という段階で、フルハシ隊員が何も知らない母親に対し、最期となるだろう親子の会話を努めて明るく行うシーンなどは、実に泣かせました。ここまでならこの回は傑作と呼ばれたのでしょうが……


 しかし、その後、ダンが怪しい灯台(カナン星人の宇宙船)に、意味も無くウィンダムを差し向ける辺りから話がおかしくなってきます。カプセル怪獣はセブンが変身できないときのための非常手段だという認識でしたが、この時点でダンは変身に何の支障もありませんから、この時点で違和感が凄いのですが……

 ウィンダムがカナン星人にコントロールされてセブンと対峙し、ここでセブン対ウィンダムの夢の対決が実現!と喜んだのもつかの間、戦闘シーンがかなりふざけた内容で

・セブンが腕を組んで、向かってくるウィンダムににらみを利かせる
とか
・セブンがウィンダムと二人で同じところをぐるぐる回転し、そのあとセブンがサッと回転から抜けてもウィンダムは足が止まらず、結局疲れてばったり倒れてしまう
とか

 などシリアスさの欠片もありません。それまでの人間ドラマで涙を誘ったのが台無しでした。

 
 この回を見てようやく察したのですが、脚本は戦闘シーンについては詳細は書かれておらず(多分「セブンが色々あって宇宙人を倒す」程度)で、具体的な戦闘シーンの内容は監督に一任されていたのだと思われます。おそらく、本エピソードを担当した満田監督が、人間ドラマパートの雰囲気を全くくみ取らずに、コントみたいな戦闘シーンの演出にしてしまったのでしょう。何故よりにもよって今回のような泣かせ系の回にこんな戦闘シーンを演出してしまったのか……、理解に苦しみます。本当にもったいない話でした。


 人間ドラマパートに尺を取られて殆ど存在感のないカナン星人ですが、「昆虫系の顔」「女性の声」「自分では巨大化して戦ったりはしない」「最後に宇宙船で逃走するが追跡してきたセブンにあっさり始末される」等々、第3話「湖のひみつ」に登場したピット星人とやたら共通するものを感じさせます。しかし、子飼いの怪獣をセブンに差し向けて見せ場を作ったりできなかったので、存在感は天地の差ではありました。


 フルハシがいじり回していたホーク3号の「操縦桿」ですが……、どうみてもバルブか何かであって、飛行機を操縦するための物には見えません。民間の旅客機の方はちゃんとそれらしい操縦桿だったのに、何なのでしょうか。あと自爆装置完備の戦闘メカというのはちょっと怖い。今回以外のどういうシチュエーションのために時限式自爆装置を積んでいるのか知りたいです(笑)
 
 
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