【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリー」シーズン3(2021年版)「鬼 人はなぜ鬼になるのか? ~日本人の闇・1500年物語~」(2021年4月15日(木)放送)

定本 酒呑童子の誕生――もうひとつの日本文化 (岩波現代文庫)

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇


背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。こうした事件・出来事を徹底再検証!
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」を拡大スピンオフ!今度は人間や自然が生み出した謎と恐怖に満ちた事件・伝説の正体に、栗山千明志方あきこ中田譲治のダークなトライアングルで引き続き迫ります。

 

鬼 人はなぜ鬼になるのか? ~日本人の闇・1500年物語~ (2021年4月15日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー▽人はなぜ鬼になるのか?~日本人の闇・1500年物語~
[BS4K] 2021年04月15日 午後9:00 ~ 午後10:00 (60分)


鬼を知れば日本人がわかる!大江山の酒呑(てん)童子は悲運の子ども?鬼婆の包丁が実在?愛ゆえに鬼に変化した女性?人が恐れ敬い続けた強大な力・鬼の正体に迫る決定版!


日本人が常に恐れ続けた「鬼」の正体をさぐる決定版登場!それは「桃太郎」イメージとは大違い。「え?これが?」と驚くほどユニークで不思議な姿の鬼。天皇をただじっと見ている鬼?鬼のルーツは世界遺産に?有名な「大江山の酒呑(てん)童子」は身長3mの巨大な子ども?人から鬼へ、愛と哀しみから生まれた鬼?鬼婆が使った包丁が実在?神様になった鬼がいる?さまざまな鬼を通して、古代から現代まで、日本人のこころに迫る。


【ナビゲーター】栗山千明,【ゲスト】国際日本文化研究センター所長…小松和彦甲南大学 教授…田中貴子,【語り】中田譲治,【司会】青井実

 
 今回のテーマは「鬼」。


●鬼の起源

 最近漫画・アニメ「鬼滅の刃」のおかげで鬼が大人気。しかし作品内に出て来る鬼が、我々が知るものと違っていると疑問に思う事は無いか?

 鬼とは古代中国から伝わってきた概念だが、そもそも中国で言う鬼とは日本のそれとはまったく違う。映画「チャイニーズゴーストストーリー」にでてきた美女が中国の鬼で、生きている人間の生気を吸い取ってしまう。日本で言う「幽霊」のことで、特に女の鬼が多い。


 日本初の歴史書日本書紀の中に鬼についての記述がある。斉明天皇崩御した際、その葬列を朝倉山から笠をかぶった鬼か見送ったという。この鬼については姿かたちの描写が一切なく、また時代の目撃者とでもいうべき感じで、現代人が考える鬼とはまるで違う。

 また、当時は鬼と書いて「おに・もの」と読み、「鬼神」を「かみ」と読むなど、「おに」「かみ」「もの」の区別はあいまいだった。


 奈良時代になると、出雲の「阿用里」(あよのさと)で一つ目の鬼が人を襲って食ったという記述があるが、一つ目という以外に具体的な描写はない。出雲では製鉄が盛んで、職人は火を見続けるため目を患う事があったようで、鬼とはそういう鉄の民のことかもしれない。


 今の鬼のイメージはどこから来たのか? 法隆寺にある四天王像には踏みつけられた魔物「邪鬼」の姿が彫られているが、その姿がまさに鬼。日本人の鬼の姿のイメージは仏教から来ている。インドでは同じモチーフても邪鬼は穏やかな顔をしているが、中国でまがまがしい姿に変貌し、それが日本に伝わって来た。鎌倉時代の絵を見ると、疫病が我々の知る鬼の姿で描かれている。



●魔境・平安京

 平安時代平安京は鬼の徘徊する魔境だった。

 歌人として有名でプレイボーイとして鳴らした在原業平が鬼に遭遇したエピソードがある。

 また「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)」も出現した。夜、たいまつを掲げた列が近づいてくるのでよく見ると、鬼の集団だった、という具合である。百鬼夜行は、天皇の住む大内裏の近く、一条大路、二条大路、に頻繁に出現した。この「鬼」とは、貴族たちから見て、自分たちの側をうろつく怪しい連中、という意味だと思われる。

 この時代の鬼のスターは、酒呑童子(しゅてんどうじ)。この鬼のエピソードは以下の通り。京都で行方不明事件が相次ぎ、陰陽師安倍晴明大江山に住む鬼「酒呑童子」の仕業と突き止める。源頼光(みなもとのよりみつ)とその部下たちは山伏に変装して山に向かうと、立派な屋敷にたどり着き、出てきたのは子供の格好をした身長3メートルの大男だった。

 大男は頼光たちを酒宴でもてなし、身の上話をする。男はかつては比叡山に住んでいたが、伝教大師最澄延暦寺を建てたため追い出されてしまい、放浪の末大江山に移って来たという。頼光たちは男が寝入った後、武装し寝床に乗り込んだ。すると、出会ったのは、身長15メートル、手足と体の色が全て違う五色、角は五本、目は15個ある鬼だった。酒呑童子は頼光たちに退治された。頼光たちは首を切り取って持ち帰ろうとするが、帰途重くて動かせなくなり、途中で埋めた。そこが今の「首塚大明神」だという。

 酒呑童子とは本当に鬼だったのか? その実態は、当時の政治権力、宗教勢力に従わない「邪魔者」を意味していたのだと推測される。



●鬼となる女たち

 「蜻蛉日記(かげろうにっき)」は貴族の妻が書いた日記だが、その中に、夫の浮気を疑う妻が「心の中におにが生まれる」云々と言う記述がみられる。


 「宇治の橋姫」は公家の女性が鬼になるという伝説である。妻は夫に浮気され、浮気相手を憎むあまり、願いをかなえるという京都・貴船神社に丑の刻にお参りし「復讐のため生きながら鬼にしてほしい」と願う。そしてお告げ通り宇治川に21日間浸かり続け、ついに願い通り鬼になった。そして復讐に向かうものの神々に邪魔され、自分を弔ってほしいと願いながら、宇治川の流れに消えたという。


 福島県二本松市の観世寺には人食い鬼婆が住んでいたという岩がある。鬼婆は本名を岩手という。京の都で幼い姫の乳母として仕えていた岩手だったが、ある日姫の声が出なくなり、主から治療に必要な赤ん坊の生き胆を入手してくるように命じられる。放浪して10年後、岩手は身ごもった妻とその夫を家に泊め、妻を殺して生き胆を手に入れた。ところがその女が持っていたのは、岩手が娘に託したお守りで、その女は実の娘が成長した姿だった。実の娘を手にかけたことを知った岩手は狂乱し、人食い鬼婆となり果てる。主君の理不尽な命令に従った末の悲劇だった。


 この時代、弱い立場の女性たちは、最後の手段として鬼になるしかなかったのである。



●江戸時代以降

 江戸時代になると、鬼は完全に物語の中の存在となり、キャラクター化が進んだ。例えば「桃太郎」に出て来る鬼は、完全に現代人がイメージしているものと同一である。

 また、鬼は信仰の対象にもなった。青森県弘前市には「鬼神社」があるが、鬼は豊作をもたらしてくれる存在として崇められている。言い伝えによれば、鬼は水不足で困っていた村人のたちのため、山の水源から8キロもある水路を一日で掘ってくれたという


感想

 今回は鬼特集。日本人と鬼の関りを日本書紀の時代からじっくり教えてくれる勉強ムードの強い回でした。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
MC 青井実 (アナウンサー)
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

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