ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送 NHK BSプレミアム。
【※以下ネタバレ】
1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。
第29話 ひとりぼっちの地球人
あらすじ
ウルトラセブン 4Kリマスター版(29)「ひとりぼっちの地球人」
[BS4K] 2021年10月10日 午前8:00 ~ 午前8:27 (27分)
京南大学が教材用衛星の打ち上げに成功。不審に思った地球防衛軍は、大学教授に化けたプロテ星人が防衛軍の戦略資料を持ち帰ろうとしていることを突き止める。
1967年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の4K化・国内初放送!京南大学が教材用衛星の打ち上げに成功したが、地球防衛軍はそれに対し不審を抱く。ソガは、大学在学中の婚約者を通じて、ある青年が関わっていることを知る。青年は心酔する教授・仁羽に化けたプロテ星人にだまされていた。プロテ星人の目的は、地球防衛軍の戦略資料を持ち帰えることだった。深夜の大学でセブンとプロテ星人が対決する!
登場 … 宇宙スパイ プロテ星人
冒頭。京南大学の建物を一人の女性が歩いていると、部屋の中から物音が聞こえる。女性が中を覗くと異形の怪物の姿がちらと見えたため、慌てて逃げ出す。そのあと部屋の中には一人の男性しかいない。
日本の私立大学・京南大学が人工衛星の打ち上げに成功し、世間で大評判となる。しかし地球防衛軍は、打ち上げに関わった物理学科の仁羽教授は偽物であること、また衛星に地球よりはるかに進んだ科学技術が使われていること、を突き止めていた。
ソガは、調査のため婚約者で京南大学の学生の冴子に会いに行き、丹羽教授が冴子の先輩の一の宮青年と親しくしていることを聞きこむ。冴子はソガに頼まれて一の宮を車で大学の外に連れ出すが、一の宮は丹羽教授が宇宙人であることを知っており、また教授が自分の考案した電送移動機を実現してくれたことから教授を慕っていた。一の宮は冴子を振り切りそのまま立ち去ってしまう。
一方、ソガは大学の研究室で丹羽教授と対面し、衛星から発信された超音波を元に、丹羽の正体がシリウス系第7惑星のプロテ星人だろうと迫るが、攻撃を無力化され、逆に丹羽に眠らされてしまう。丹羽はソガを人工衛星の中に連れてきて記憶を調査し、地球防衛軍が衛星を調べに来る時間を把握すると、味方の宇宙船に人工衛星を回収するように依頼し、電送移動機で地球に戻る。
研究室では一の宮が待っており、丹羽からプロテ星の宇宙船がもうすぐ到着すると聞いて喜ぶ。一の宮は地球人を軽蔑しており、慕っている丹羽と共にプロテ星に行くつもりだった。ところが丹羽から、人工衛星は侵略のため地球防衛軍の基地を調査するスパイ衛星だったと知らされ、愕然となる。
丹羽は一の宮に、見捨てるつもりだった地球などどうでもよいはずと言われるが、裏切られた一の宮は丹羽につかみかかり、丹羽はプロテ星人の姿となって一の宮に迫る。そこにソガを探しに来たダンが到着し、ウルトラセブンとプロテ星人の戦いが始まった。
プロテ星人は透明化や幻を駆使した戦法でセブンを翻弄し、戦いは全く終わる気配を見せない。しかも戦っているプロテ星人は虚像に過ぎず、本体の丹羽は地球から脱出するため、人工衛星に移動しようとしていた。しかし一の宮は、移動機で電送直前の丹羽につかみかかり、二人では再生不能だと言いながら丹羽と共に消える。
セブンはプロテ星人が消えたため宇宙に飛び、宇宙船が持ち帰ろうとした人工衛星を回収し、同じ頃到着したウルトラホーク2号が宇宙船を破壊した。
事件解決後。ソガは一の宮の死を残念がるが、ダンはもしかすると宇宙のどこかに実体化して生きているのかもしれないと慰めるのだった。
脚本:市川森一
監督:満田かずほ
特殊技術:高野宏一
感想
評価は○(大人テイストの秀作)
大人の雰囲気のストーリーに加え、きちんとセブンのアクションシーンもある、なかなか見ごたえのあるエピソードでした。
冒頭から、ソガに19歳~20歳の女子大生の婚約者がいて、それを同僚のアンヌやフルハシが冷やかすという展開は、特撮ドラマの滑り出しとは思えず、一般向けの刑事物に置き換えても通用するようなノリでした。さらに、それ以後も一般ドラマ風の展開が続き、子供向けではないアダルトな雰囲気を漂わせているのが実に良かったですね。
今回は主人公のダンは影が薄く、どちらかというとスポットライトが当たっているのはソガですが、もう一人の主役ともいえる人物がゲストキャラの一の宮青年。天才的な頭脳を持っていますが、あまりに頭が良すぎたのか周囲に全く理解されず、その苛立ちから同胞の地球人を嫌悪し、自分を理解してくれた宇宙人の方を慕っている。東西冷戦時代の話ですから、北の某国のスパイに才能を認められた科学者、という感じでそっくり(昭和が舞台の)現代スパイ物に置き換えても通用しそうな設定です。
そして、ほぼ最後まで地球を見捨てる気でいたのに、相手のついていたウソにショックを受け、最終的にあれほど嫌っていたはずの母国のために命を落とす、というのがなんとも印象的です。丹羽教授を逃がさないため、「残念ながら教授、二人同時では再生不能です」と言いながら電送移動機に飛び込むシーンは、予想外でインパクトがありました。そして、一の宮が開発したのが電送移動機だった、という設定がきちんとこの場面の伏線になっているのも感心させられましたね。
惜しむらくは尺が30分のため、一の宮青年のキャラクターの掘り下げがあまり出来ていなかったことでしょうか。もっとこの人物についての描写が有れば、ドラマはより深みか増したことと思います。
今回の侵略者・プロテ星人/丹羽教授は、今回にしか登場しないのにも関わらず記憶に残る名キャラでした。例えば、
・丹羽がソガに撃たれてもびくともせず、逆に「Vサイン」ポーズの指先から光線を発して昏倒させてしまう。Vサイン攻撃というのが意表をつきすぎてインパクト大。
・プロテ星人の姿を現しても、透明化や幻覚攻撃などでセブンを一方的に翻弄。さらに最後には本体は戦いの場を離れ、自動で動く「抜け殻」だけにセブンの相手をさせて、地球脱出を企みます。宇宙スパイと言いながら、情報収集に長けているだけではなく、戦闘能力でもセブンを圧倒していました。
・普通、地球人を利用する宇宙人は、自分の目的を果たした後は、約束を一方的に破って地球人を始末するというのが基本ですが、丹羽教授はきちんと一の宮との約束を守り、プロテ星に連れて行ってくれるつもりだった模様で、なかなか誠実(?)です。最後の最後、一の宮と取っ組み合いをした後でも「やはり私の星に来たいのか?」と意思確認してくれてチャンスをくれるなど、最後まで一の宮にはきちんと接してくれていました。悪辣な侵略宇宙人が多い中で、その紳士ぶりは評価に値するでしょう。
と、ゲストにも拘らず、かなりのキャラ立ちぶりを見せてくれていました。
お楽しみのセブンとプロテ星人との戦いでは、真夜中の大学構内を舞台に、自在に姿を消し、分身し、エメリウム光線で貫かれてもアイスラッガーで首を落とされても平気、のプロテ星人との戦いが実に盛り上がりました。バトルシーンにはいつもこれくらい力を入れて演出してほしいと思いましたね。
結末もなかなか味があり、ソガが一の宮の死を悼むと、ダンが「死んだとは限らないでしょう。宇宙をさまよっているうちに、元の姿を取り戻して、どっか遠くの星から、この地球を懐かしがって、見ているのかもしれないし。あるいはひょっこり、この学校に戻ってくるかもしれない……」と元気づけます。視聴者の方も、ソガと一緒にそういう可能性があるのかも、とちょっと元気づけられる台詞でした。
最後は丹羽教授の部屋から物音がしたものの実は風のイタズラでした、という爽やかオチで〆ており、最初から最後まで隙無く楽しめる秀作でありました。
プロテ星人
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