【特撮】感想:特撮「ウルトラセブン 4Kリマスター版」第31話「悪魔の住む花」

ウルトラセブン Vol.1 [DVD]

ウルトラセブン 4Kリマスター版 NHK https://www4.nhk.or.jp/P6565/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

1967年10月1日に放送が開始された「ウルトラセブン」。当時のフィルムをデジタルスキャンし、4K・HDRでよみがえらせた4Kリマスター版を、NHKが初めて放送する。

 

第31話 悪魔の住む花

 

あらすじ

ウルトラセブン 4Kリマスター版(31)「悪魔の住む花」
[BS4K] 2021年10月24日 午前8:00 ~ 午前8:26 (26分)


原因不明の病気で倒れた少女が血液を求める奇怪な行動を見せる。体内に侵入した宇宙細菌ダリーが原因だった。ダンはミクロ化し彼女の体内に潜入して退治を試みるが…。


1967年に地上波放送された『ウルトラセブン』を初の4K化・国内初放送!ある花弁に口づけした直後、原因不明の血小板減少のために倒れた少女・香織は、その夜から血液を求める奇怪な行動を見せる。彼女の体内に侵入した宇宙細菌ダリーが血液中のフィブリノーゲンを食い荒らしているのが原因だった。ダンはミクロ化して香織の体内に潜入。ダリーを直接退治しようとするが、人間の体内という「未知の世界」に苦戦を強いられる。


【出演】中山昭二森次晃嗣ひし美ゆり子毒蝮三太夫阿知波信介古谷敏

 
登場 … 宇宙細菌 ダリー

 冒頭。三人の女性が花畑にいる。その内の一人・香織が珍しい花びらを見つけ、口づけした途端、意識を失って倒れてしまう。

 ウルトラ警備隊に病院からアマギ隊員の特殊な血液が必要という連絡が入り、キリヤマは急行するように指示する。また倒れた若い女性の容体が不審ということで、ダンも同行して調査することになった。医者によれば、患者の香織の血液中の血小板が減少しているのに、原因が解らないと言う。ダンは香織が持っていた花びらをどこかで見たような気がしていた。

 深夜。香織は病室から姿を消したため、アマギたちが急行するが、香織は看護婦の首を絞め、さらにアマギの頭を背後から殴りつけて気絶させる。ダンたちは香織かアマギの首から血を吸おうとしたことに気が付く。

 検査の結果、香織の肺の部分に宇宙細菌ダリーが巣くっており、そのため香織が吸血鬼化したことが判明する。香織が口づけした「花びら」は実はダリーの卵の殻だった。しかし現代の医療技術ではダリーを退治する方法は無かった。

 香織は地球防衛軍基地に連れてこられるが、フルハシの見張りの目を盗んで逃亡し、病室のアマギを連れて失踪してしまう。ダンたちは深夜の遊園地で二人がメリーゴーランドに乗っているのを見つけ、眠らせて基地に連れ帰る。

 ダンは香織を救うため、セブンに変身するとミクロ化して香織の体内に突入した。そして肺の部分でダリーを発見するものの、慣れない環境での戦いに苦戦し、ダリーに圧倒されてしまう。しかし医者が薬を注射したことでダリーが弱り、セブンはその隙をついてダリーを退治した。直後香織は目を覚ました。

 最後。花畑にいる香織にダンとアマギが会いに行くが、香織はアマギの事を覚えてはいなかった。


脚本:上原正三
監督:鈴木俊継
特殊技術:的場 徹


感想

 評価は○(アイデアは良いのですが……)

 人体の中を舞台にするという発想は良かったのですが、脚本でそのアイデアを面白い展開に落とし込めておらず、もったいない感が強いエピソードでした。


 宇宙人/宇宙怪獣=巨大、というイメージを覆し、真逆のミニ宇宙生物が敵となる、という着想はなかなか面白いところで、とり憑かれた人間が吸血鬼と化してしまうという設定も悪くありません。

 ちなみに、今回の脚本を担当した上原正三氏が、ズバリ『映画「ミクロの決死圏」(1966年)にヒントを得た』と語っているそうで、

・ダンが「人間の体とはいえども、広大な宇宙とは変わりはない」と口にする
・セブンが体を縮小して人体に突入する
・体内が幻想的な感じで描写されている

 など、明らかにミクロの決死圏のオマージュというか、なんというかを感じさせます。


 しかし、香織が取り付かれた描写で、血を狙ったり、出会う人間を次から次から謎の毒息で昏倒させたりするのは良いのですが、夜中にフラフラ出て行って遊園地でアマギと一緒にメリーゴーランドに乗っているという描写が訳が分からない…… 最後のシーンで、アマギが香織に声をかけたら、香織の方はまるで覚えていなかった、というところと対応しているのだとは思いますが、ヘンテコ展開にしか映らなかったです。


 セブンが香織の体内でダリ―と戦う場面も、今までの戦闘シーン演出のノウハウが使えないからか、パッとしなくてガッカリでした。結局ダリーは壁(?)からぶら下がっているか、床に座り込んで威嚇しているくらいのもので、激烈な格闘シーンというものはなく、最後もセブンは爽快な勝ち方ではなく、「セブンが手から泡を出すと、何故かダリーが溶けてしまう」という釈然としない決着の付け方でした……、「細菌だから石鹸に弱い」とかいう意味でしょうか……?

 ちなみにこのダリー、劇中では「細菌」と呼ばれていますが、資料を見るとスペックは「身長0.1ミリ」とのことで、それは細菌ではなく寄生虫の類では……、と思わせます。実際の姿も虫でしたしね。


 今回のゲストキャラ・香織を演じたのは、後に女優として有名となった松坂慶子。昭和世代にとっては、このエピソードは「あの松坂慶子が子役時代に、こんな特撮番組に出ていた」というので良いネタになりましたが、平成・令和を生きる世代には「松坂慶子? Who?」くらいのものかもしれません。「原節子が」と言われるのと変わりないかも。
 
 脚本の上原正三氏は、監督に「香織役には美少女を」と頼んでいたのに、実際は健康そうな太目の子が演じていたのでがっかりしたそうです(笑)

 
宇宙細菌ダリー
CCP 1/6 特撮シリーズ Vol.074 宇宙細菌ダリー
 
 

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