【SF小説】感想「チャヌカーの秘密洞窟」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 653巻)(2021年11月17日発売)


チャヌカーの秘密洞窟 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-653 宇宙英雄ローダン・シリーズ 653)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150123446
チャヌカーの秘密洞窟 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-653 宇宙英雄ローダン・シリーズ 653) 文庫 2021/11/17
アルント・エルマー (著), クラーク・ダールトン (著), 星谷 馨 (翻訳)
出版社:早川書房 (2021/11/17)
発売日:2021/11/17
文庫:270ページ

【※以下ネタバレ】
 

ブルとスラッチは、惑星チャヌカーに密かに着陸し、この星の秘密を調べるためスパイ活動をしていたが、見抜かれ逮捕されてしまう


レジナルド・ブルとヴィーロ宙航士たちは、15年ぶりに惑星ボンファイアをふたたび訪れた。この惑星では、永遠の戦士アヤンネーのために住民を恒久的葛藤へと駆りたてるヴィレーヤーと、それに対抗する独立主義者ポテアが長年にわたって闘争を続けていた。そんな危険な惑星で、ブルはローダンと待ち合わせをしていたのだ。だが、苦労のすえボンファイアにひそかに到着したローダンをつけねらう者が暗躍をはじめていた…

 

あらすじ

◇1305話 五段階の衆(アルント・エルマー)(訳者:星谷 馨)

 ローダンとブルは情報交換のためそれぞれ惑星ボンファイアを目指し、永遠の戦士側の追跡を振り切って再会に成功した。二人はカルタン人がラオ=シン種族と名乗ってアブサンタ=シャド銀河で活動していることを伝え合った。その後、ローダンはネットウォーカー追跡専門の工作員グループ「五段階の衆/ハトゥアタノ」に捕まるものの、ブルに救出された。ブルは、グッキーが未知宇宙船を見かけたという惑星「チャヌカー」を調査することにした。(時期:NGZ445年12月2日~)

※初出キーワード=五段階の衆/ハトゥアタノ、ハトゥアタニ、惑星チャヌカー


◇1306話 チャヌカーの秘密洞窟(クラーク・ダールトン)(訳者:星谷 馨)

 ブルたちは惑星チャヌカーに密かに着陸したが、この星に秘密基地を作っていたラオ=シン種族に発見され捕らえられた。しかし様子を見に来たグッキーによって解放され、ラオ=シン種族が三角座銀河からやって来たカルタン人であり、アブサンタ=シャド銀河にパラ露を輸送していることを突き止めて脱出した。(時期:NGZ445年12月13日~25日)

※初出キーワード=シャローム星系

あとがきにかえて

・作中の無数の矛盾点についての苦言とどう対応したかの説明
・文中に使われた「このデンマークではなにかが腐っている」「用心はゾウの母」という言葉の説明

感想

・前半エピソード 原タイトル:DAS HAUS DER FUNF STUFEN(意訳:五段階の家)

 永遠の戦士の権力の届かない惑星ボンファイアでの一幕。ローダンとブルが地下組織の支援を受けて敵から逃げ回ったり、ローダンが捕まってブルが助けに行ったり、と色々忙しい回でした。またナックのファラガが「メエコラー」云々と言っていたのは、1290話で炉座の愚者が「メエコラーの矢印」とか言っていたのと繋がってくるわけで、ちょっと面白くなってきた。

 今回の作者のエルマーは、「自分が作家チームに参加する以前のエピソードも熟知している」というアピールなのか、それともファン気質なのか、理由はよくわかりませんが、とにかく昔のエピソードの事を良く持ち出してきますね。P45ではブルがホテルで人名検索する際に「バルディオク」や「パン=タウ=ラ」と入力したと書かれていますし、P131ではなんと懐かしのトマス・カーディフの名前が飛び出してきます。読んでいる方は「なんでまたこんな懐かしい単語を……」と遠い目をしそうになりました。

 今回登場した秘密工作員チームの名前はどうやら「DAS HAUS DER FUNF STUFEN」なので、普通に訳すと「五段階の家」なのですが、文中では「五段階の衆」になっています。いやまあ、その方が解りやすいけど、訳しすぎというかじゃないかなこれ。


・後半エピソード 原タイトル:DAS GEHEIMNIS VON CHANUKAH (意訳:チャヌカーの秘密)

 作者は懐かしのダールトン。618巻/1235話「ネガ・プシの虹」以来の登場です。

 お話は、ブルとグッキーがコンビを組んで情報収集のため謎の施設の調査を行うという、大昔には毎回のようにやっていたのに、1000話台ではもう全く無くなったパターン。グッキーがこの手の任務に従事するなんていったいいつ以来でしょうか? 今回の話もたまたま(?)ダールトンが担当したからグッキーが活躍したものの、他の作家に割り振られていたら、ブルとファジーの二人だけで任務を済ませて、ミュータントの出番なんか無かったと思われます(多分)

 あと、P250で取ってつけたようにグッキーの口からエルンスト・エラートの消息が語られていますが、エラートは1235話で行方不明になってから放置状態だったので、ダールトンがエラートが他の人が使えるようにニュートラルな状態に戻した、ということなのでしょう。



[参考]エスタルトゥの銀河とその奇跡

◆626巻(1252話)
エレンディラ銀河(M-60/NGC4649)…奇跡名「至福のリング」
・シオム・ソム銀河(NGC4503)…奇跡名「紋章の門」
・スーフー銀河(NGC4596)…奇跡名「怒れる従軍商人」
・シルラガル銀河(NGC4579)…奇跡名「歌い踊るモジュールの輪舞」
・トロヴェヌール銀河(NGC4564)…奇跡名「オルフェウス迷宮をめぐるカリュドンの狩り」
・ムウン銀河(NGC4608)…奇跡名「番人の失われた贈り物」
アブサンタ=ゴム銀河(NGC4567)…奇跡名「不吉な前兆のカゲロウ」

◆650巻(1300話)
・銀河系…奇跡名「ゴルディオスの結び目」
・ダータバル銀河…奇跡名「カリュブディスのセイレーン」

◆652巻(1304話)
・パルカクァル銀河…奇跡名「エメラルドの鍵衛星」
・ムジャッジ銀河…奇跡名「閃光のダナイス」

◆653巻(1305話)
アブサンタ=シャド銀河(NGC4568)…奇跡名「ステギィアン・ネットの漁師」
・ウルムバル銀河…奇跡名「陽光好きな黄金雨降らし」
 
 本巻でついに13の奇跡の名前が全て明らかになりました。
 
 

650巻~675巻(「ネットウォーカー」サイクル)の他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

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ローダン・シリーズ翻訳者一覧は以下へどうぞ

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