【歴史】感想:歴史番組「ダークサイドミステリーE+」2022年版「永遠の命!? 吸血鬼伝説の真相 ~人類は天敵に勝てるのか?~」(2022年4月12日(火)放送)

ヴァンパイア 吸血鬼伝説の系譜 Truth In Fantasy

ダークサイドミステリーE+ NHK https://www.nhk.jp/p/ts/ZG5NQK3K3P/
放送 NHK Eテレ。毎週火曜夜10時45分~11時15分放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

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驚きと感動の「闇」が、地上波に登場!


BSプレミアムでシーズン4が4月14日(木)スタートする話題の番組「ダークサイドミステリー」。その名作の数々が、コンパクト30分版に見やすくなってEテレに登場!


背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。こうした事件・出来事を徹底再検証!


ナビゲーター・栗山千明、語り・中田譲治、テーマ音楽・志方あきこのダークなトライアングルで迫ります。

 

永遠の命!? 吸血鬼伝説の真相 ~人類は天敵に勝てるのか?~ (2022年4月12日(火)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー 永遠の命!?吸血鬼伝説の真相 人類は天敵に勝てるか?
[Eテレ] 2022年04月12日 午後10:45 ~ 午後11:15 (30分)


人類の天敵・吸血鬼は実在した?現実に発生!村を壊滅寸前にした襲撃事件の実態は?“女帝”VS吸血鬼、戦いの行方は?永遠の命と死の恐怖の秘密が生み出す怪物の正体は?


永遠に若く美しく…。人間の血で死を超越する魔物・吸血鬼。マンガや映画のイメージと異なり、東ヨーロッパでは本当に吸血鬼が人を襲う事件が続発、記録に残っていた!墓場からよみがえり、人々に死をまきちらす「生きている死体」。立ち向かったのはマリー・アントワネットの母、“女帝”マリア・テレジア。現代まで続く人類と天敵との長き戦いに、終わりは来るのか?永遠の命と死の恐怖の秘密が生み出す、謎の怪物の正体は?


【出演】栗山千明,【語り】中田譲治

 今回は「2019年7月18日放送回」のダイジェスト版。
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【ミステリー】感想:歴史ミステリー番組「ダークサイドミステリー」『永遠の命!?吸血鬼伝説の真相~人類は天敵に勝てるのか?~』(2019年7月18日(木)放送)
https://perry-r.hatenablog.com/entry/2019/07/31/001550

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 今回のテーマは「吸血鬼」。


●実在した吸血鬼

 フィクションの世界で有名な吸血鬼。ところが現実に吸血鬼は存在したことが記録に残されている。

 例えばブルガリアのソゾボルという都市では、14世紀頃に埋葬された50~60代の男の遺体の心臓の部分に鉄の杭が刺さっていた。死者が吸血鬼として復活するのを阻止するため杭を打ち込んだと推測される。


 またドイツの図書館には、18世紀にある村で発生したバンパイア事件に関する軍の記録が残っている。1726年にセルビア南部メドヴェギア村で村人4人が連続して怪死し、しかも全員が一か月前に事故死した男に首を絞められたと証言していた。

 村人がその事故死した男の墓を掘り起こすと「死体は損傷しておらず全く腐っていなかった」「目鼻耳口から新鮮な血が流れていた」「爪が生え変わっていた」という状況だった。村人は男がバンパイアになったと考え、胸に杭を打ち込むと、男は断末魔の叫び声をあげたという。村人は犠牲者たちの死体にも杭を打ち死体を燃やし灰にしてこれ以上の事件を防ごうとした。

 ところが、さらにその後三か月間に17人も死人が出た。村人たちはパニックとなり「バンパイアが家畜も襲って吸血し、その家畜の肉を食ったものがバンパイア化した」とと考えた。村人たちは、怪しい死体を暴いて胸に杭を打つばかりか、頭を切り落とし、死体を灰にして、さらに川に流したと言う。

 この事件は西ヨーロッパに「バンパイア」という未知の怪物を知らしめた。



●「生きた死体」の正体

 18世紀の事件で墓を掘り起こしたところ、死体が腐敗していないなどの奇怪な現象が確認されている。しかし医学に詳しい人物によると、それらは全て科学的に説明が付くという。

・死体が腐っていない → 死体が腐るには空気が必要。そのため、素人のイメージとは異なり、地中に埋められた死体の方が、空気中に放置された死体より8倍も腐敗が遅い。

・死後に髪の毛や髭、爪が伸びている → 心臓が停止しても全ての細胞が一斉に死ぬわけではない。そのため死体の髪の毛などが伸びることは実際に観測されている。

・口などから血が出ていた → 肺の中にあった血が口などから染み出してきた可能性が高い。

・胸に杭を打つと叫び声をあげた → 腐敗時に発生したガスが、肺や消化管の中にたまり、それが杭を打ったタイミングで声帯を通って声を挙げたように見えたのではないか

 等々と推測される。



●土着信仰

 実は「死体が生き返る」という考えは、古くからヨーロッパ各地で土着信仰として広く信じられていた。しかしカトリックが広がるにつれ、死後復活するのはイエス・キリストだけ、という考えが広まり、西ヨーロッパでは「一般庶民が死から蘇る」という発想は消えていった。

 しかし東ヨーロッパはギリシャ正教が信じられた地域で、正教には中央的な権威が無かったことから、キリスト教の合間を埋める形で、土着信仰がずっと生き残っていたのだった。



●バンパイア対スーパー女帝

 バンパイアの存在を知り、人々の間で「パンバイアが本当にいるのか」といった論争が発生した。フランスの哲学者ヴォルテールは、そんな風潮に「18世紀なのに、人はバンパイアのような迷信を信じている」と嘆いている。科学で世の中を解明しようとする啓蒙主義の思想家たちは吸血鬼を迷信と批判した。

 そして、バンパイア論争に政治面から立ち向かったのが、当時の実質的なオーストリアの女帝だったマリア・テレジアだった。オーストリアは敵対していたオスマン帝国から東ヨーロッパを奪取し、領土に加えていた。そして官僚制度で領土を安定して統治するために、吸血鬼の様な迷信は排除する必要があった。

 そのためマリア・テレジアは1755年にモラビア地方に吸血鬼調査隊を派遣、それを指揮したのはオーストリア医学界の権威でマリア・テレジアの侍医だったゲラルト・ファン・スウィーテンだった。

 スウィーテンは、何体もの死体を掘り起こして調査を行い、地中では死体の腐敗は地上よりはるかに遅いことを突き止めた。また吸血鬼の犠牲者が「首を絞められた」と証言していることに注目し、犠牲者は実は胸の病気だったのではないか、と推測した。

 当時は様々な伝染病で人々は原因も解らないまま死んでおり、それを吸血鬼の仕業にしていたのだった。

 スウィーテンは「人は原因の解らない現象に接すると、超自然の力のせいだと考えがちである」と報告した。マリア・テレジアはその報告をもとに、1755年3月「バンパイア 魔法 魔女など迷信に基づく行為を禁止する法令」を出した。

 やがて19世紀に入り医学・生物学・化学が発展すると、「死体が生き返る」といった発想は人々の心から消えていった。



●吸血鬼の大復活

 しかし、19世紀、バンパイアは別の形で蘇ってきた。当時は科学重視の啓蒙主義の反動で、人の感情を重視するロマン主義が流行し、そのため恐怖やサスペンスなどを扱うゴシック小説が流行っていのだった。

 1816年。ポリドリは「ザ・バンパイア」という作品を発表した。内容は「ロンドン社交界に現れた魅力的な貴族ルスブン卿。しかし彼の行く先々で吸血鬼事件が発生し……」というもの。吸血鬼はその後フィクションの世界で進化を遂げ、1847年に「吸血鬼ヴァー二ー」、1872年に美貌の女吸血鬼が登場する「カーミラ」、等が発表された。

 そして1897年にブラム・ストーカーによる吸血鬼小説の決定版「ドラキュラ」が発表され、大ベストセラーとなる。内容は、ルーマニアトランシルバニアからロンドンに来たドラキュラ伯爵が美女をおそっていく、というもの。

 識者によれば、小説のヒットは当時の世相を反映しているという。当時の大英帝国は衰退期に有り「今まで支配していた相手が、自分たち以上の力を持って攻めて来るのでは?」という不安が、トランシルバニアから来たドラキュラ伯爵に反映されているという。


感想

 フィクションの世界でお馴染みのバンパイアの歴史、の回。西ヨーロッパでバンパイアが話題になったのが、、中世ではなく、18世紀というわりと近い時代だったというのがなかなか興味深いなぁと。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ

 
 

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