【歴史】感想:歴史番組(新番組)「ダークサイドミステリー」シーズン4(2022年版)「ヒトラー暗殺計画 ~ワルキューレと栄光なき抵抗者たち~」(2022年4月14日(木)放送)

ドキュメントヒトラー暗殺計画

ダークサイドミステリー NHK https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/
放送 NHK BSプレミアム。毎週木曜夜9時放送。

www.nhk.jp
【※以下ネタバレ】
 

他の回の内容・感想

perry-r.hatenablog.com
 

本当の謎は、人間の闇


シーズン4スタートしました!
今年度はなんと、地上波・Eテレで毎週(火)夜10:45放送の、名作の数々のコンパクト29分版と同時期放送です!
背筋がゾワゾワ、心がドキドキ、怖いからこそ見たくなる。世界はそんなミステリーに満ちている。世間を揺るがした未解決の事件、常識を越えた自然の脅威、いにしえの不思議な伝説、怪しい歴史の記録、作家の驚異の創造力…。
人智を超えた謎に迫る「幻解!超常ファイル」のスピンオフ!
栗山千明中田譲治志方あきこのダークなトライアングルに加え、伊藤海彦アナウンサーも参加!

 

ヒトラー暗殺計画 ~ワルキューレと栄光なき抵抗者たち~ (2022年4月14日(木)放送)

 

内容

ダークサイドミステリー[新]▽ヒトラー暗殺計画~ワルキューレと栄光なき抵抗者たち~
[BSプレミアム] 2022年04月14日 午後9:00 ~ 午後10:00 (60分)


ダークサイドミステリー・シーズン4!第1回は、戦争と虐殺で破滅へ暴走する自国の独裁者を止めようと、命がけで挑んだ人々の物語。無謀な抵抗を決意した苦悩と誇りとは?


第二次世界大戦のさなか、ドイツの独裁者ヒトラーに抵抗したドイツ人がいた。彼らは未来の破滅を阻止しようとわが身を犠牲に戦ったが、戦後の新時代も「裏切り者」と扱われ続けた。いったいなぜ?周囲のヒトラー人気に流されずひとり孤独な戦いに挑んだ庶民。エリート将校ながらあえて反逆の道を選んだ男。最大のクーデター“ワルキューレ作戦”を実行した熱血軍人。暴走する国家を止めようとした人々の、苦悩と責任と誇りに迫る。


【出演】栗山千明,【ゲスト】對馬達雄,根本正一,【語り】中田譲治,【声】森川智之,【司会】伊藤海彦

 
 今回のテーマは「ヒトラー暗殺計画」


●ゲオルク・エルザーの場合1

 1939年9月、第二次大戦が勃発。二ヶ月後の11月8日、アドルフ・ヒトラーとナチ党の幹部たちはミュンヘンのビアホール「ビュルガーブロイケラー」を訪問した。以前からナチスが度々演説に使用してきたこの場所で演説を行うためである。

 午後7時30分ヒトラーの演説が開始された。会場にはナチ党員2000人が集まり、最前列にはナチ党最高幹部のゲッベルスヒムラー・ヘス・ボルマンたちが並んだ。午後9時20分、柱の中に仕掛けられていた時限爆弾が爆発し、多数の死傷者が出た。

 爆発から一時間後、ミュンヘン北西130キロにある町ケーニヒスブロンの家具職人ゲオルク・エルザーが逮捕された。



●当時のドイツの状況

 事件から6年前の1933年にナチスが政権を取り、以後ヒトラーによる独裁体制が確立された。青少年はナチ党の団体「ヒトラーユーゲント」に参加させられ、軍事訓練や思想教育を強制された。労働者は兵器工場に駆り出され、若者は軍隊に動員された。そしてドイツは圧倒的な軍事力を元に、オーストリア併合など領土を拡大していった。国民の大半はヒトラーに従えば幸せになると信じた。



●ゲオルク・エルザーの場合2

 エルザーは他の人々とは意見が異なり、ナチ党政権の支配に怒りを感じていた。そしてナチ党幹部のヒトラーゲーリングゲッベルスを排除しなければドイツに未来はないとの結論に達した。

 エルザーは勤務先の工場から火薬や時計を盗み、時限爆弾を完成させた。さらにビアホール・ビュルガーブロイケラーに客として通い、店の柱にコツコツと穴をあけ、そこに事件爆弾を仕込んだ。

 そして11月8日。時限爆弾の爆発で、死者8人・負傷者63人。しかしヒトラーは無事だった。当日ミュンヘンで霧が出たため、ヒトラーは飛行機での移動予定を列車に切り替え、予定より30分早く演説を終えて幹部と共に会場を去っていたのである。

 逮捕されたエルザ―は残虐な人殺しと非難され、逆に無事生き延びたヒトラーはカリスマ性を高めた。その後エルザ―は1945年4月9日に銃殺された。享年42歳。



ヘニング・フォン・トレスコウの場合

 ドイツ国防軍のエリート軍人ヘニング・フォン・トレスコウ首席作戦参謀もまたヒトラー暗殺を企てた一人だった。トレスコウは貴族で代々軍人の家系の出身だった。

 ドイツは1941年からソビエトに侵攻したが、ヒトラーの戦争計画は強引かつずさんで、東部戦線で戦うトレスコウたちは司令官としてのヒトラーに不信感を抱いていた。さらにナチ党の国家保安警察が組織した特殊部隊「移動虐殺部隊」は、前線の背後で捕虜や民間人を大量虐殺していることを知り憤った末に、ヒトラー暗殺を決意した。

 トレスコウは志を同じくする仲間を見つけたものの、この頃のヒトラーは暗殺を恐れて信頼する者しか側に近づけなくなり、毒殺を恐れ毒見役を12人用意し、移動の際の飛行機も同じ型の飛行機を二機飛ばしてどちらに乗っているのか解らなくする、という徹底ぶりだった。

 1943年3月13日。ヒトラーはトレスコウのいる東部戦線のスモレンスクを視察したあと、飛行機で大本営に戻ることになっていた。トレスコウはヒトラーの側近に友人あての荷物と言って時限爆弾をわたした。爆弾は時計の音でバレない様に化学反応で爆発する仕掛けとなっていたが、結局爆弾は不発でヒトラーは無事だった。不発の理由は飛行機が高空を飛んだことで気温が下がり、化学反応が起きなかったためとされる。


 3月21日。トレスコウは第二の暗殺計画を実行した。ヒトラーがベルリンの兵器展示会を訪問した際、案内役のトレスコウの同志ゲルスドルフが自爆覚悟で暗殺を行う予定だった。ところがヒトラーは気まぐれなのか、案内途中でいきなり展示会を出て行ってしまい、またしても暗殺は失敗した。



●クラウス・フォン・シュタウフェンベルクの場合

 最後にして最大のヒトラー暗殺計画の首謀者となったのが、陸軍国内予備軍参謀長のクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐(36歳)だった。シュタウフェンベルクは名門貴族の出身のエリート軍人だったが、ナチ政権のユダヤ人弾圧や民間人虐殺に怒りを募らせ、ナチ党政権を倒すべきと決意していた。

 シュタウフェンベルクは軍隊内の反ヒトラーグループの中心的存在となり、また反ヒトラー市民グループと連携し、ナチ政権を倒すクーデター計画を立案した。

 元々国防軍には、何者かが反乱を起こした場合に軍がそれを鎮圧する「ワルキューレ作戦」が準備されていた。シュタウフェンベルクたちはそれをナチ政権転覆のクーデターに利用することにした。

 計画は「第一段階:大本営内のヒトラーを爆弾で暗殺する」→「第二段階:ヒトラーの死後の混乱の中、ナチ党が反乱を起こしたと称してワルキューレ作戦を発動」→「第三段階:国内予備軍がベルリンの重要拠点を占拠し、同時のナチ党の幹部を逮捕」という流れだった。


 1944年7月20日シュタウフェンベルクは、ベルリンから700キロ離れたポーランド北東部ケントシンの森の中にある大本営ヴォルフスシャンツェ(狼の砦)に招かれた。シュタウフェンベルクヒトラー爆殺のため爆弾を二個用意していたが、突然会議の開催時刻が30分前倒しになり、爆弾を一個しか準備できなかった。そのため、シュタウフェンベルクヒトラーの足元に爆弾入りの鞄を置くと、すぐさま会議室を離れた。午後0時42分爆弾は爆発した。

 シュタウフェンベルクは午後3時45分にベルリンに到着したが、ワルキューレ作戦が発動されていないことに愕然とする。陸軍総司令部にいた反ヒトラー派は、ヒトラーが無事との連絡を受け、クーデター開始を様子見していたのだった。

 シュタウフェンベルクはすぐさまワルキューレ作戦を発動させるが、すぐにヒトラーが生きていることが明らかになり、クーデターは失敗してしまった。爆弾で死者4人・重傷者7人が出たにもかかわらず、ヒトラーはほぼ無傷だったのである。一説では、シュタウフェンベルクの爆弾入りカバンを他の将校が机の頑丈な足の向こうに移動させてしまい、そのため爆発がヒトラーに向かわなかったとされる。

 この日深夜0時30分シュタウフェンベルクは銃殺された。クーデターに加担したとして600人以上が逮捕され、100人以上が処刑された。この時、トレスコウも自殺した。

 9か月後の1945年4月30日、ヒトラーは自殺した。



●その後

 ヒトラー暗殺計画に関わった者たちは、戦後になっても「国家への反逆者」と見なされていた。7月20日のクーデター事件に関わった者たちが評価されるようになるのは、1950年代に入ってからで、1980年代になってようやく研究が行われるようになった。

 ゲオルク・エルザーはもっと扱いが酷く、彼が勇気ある抵抗者として認められたのはなんと1980~90年代に入ってからだった。


感想

 第四シリーズは、しょっぱなから(ダークサイドミステリーが大好きな)ナチスドイツネタです(溜息) まあナチスネタは何を扱っても暗い話にしかならないから、この番組にはうってつけなのでしょうけど、毎度毎度視聴するのに気力がいります……

 有名な1944年7月の暗殺未遂事件以外もとりあげており、なかなかお勉強になる回でした。あとシュタウフェンベルクの声は森川智之が当てていてカッコよかったです。
 
 

光と闇のナビゲーター 栗山千明
語り 中田譲治
テーマ音楽 志方あきこ
司会 伊藤海彦 (アナウンサー)

 
 

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