【ドラマ】感想:海外ドラマ「刑事コロンボ」第39話「黄金のバックル」

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刑事コロンボ https://www.nhk.jp/p/columbo/ts/G9L4P3ZXJP/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

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第39話 黄金のバックル OLD FASHIONED MURDER (第6シーズン(1976~1977)・第2話)

 

あらすじ

刑事コロンボ(39)「黄金のバックル」
[BSプレミアム]2020年12月23日(水) 午後9:00~午後10:16(76分)


刑事コロンボ』旧シリーズ一挙放送!経営不振に陥った美術館の存続をめぐり、館長の姉が理事の弟と対立。借金を抱えた警備員を利用して弟の殺害計画をたてる。


美術館の館長を務めるルースは、理事である弟のエドワードが財政難の美術館を売ろうとしていることを知る。美術館一筋で生きてきた彼女は、借金を抱えている警備員の男を利用して弟の殺害を決意。多額の保険金がかけられた展示品を盗んでくれれば、逃亡費用と旅券を渡す、と男をそそのかす。その夜、美術館に忍び込んできた男を射殺し、さらにそこへ現れたエドワードを、今度は男の銃で撃ち殺す。

●序盤

 ルース・リットン(犯人)は、一族が運営する私設美術館の館長を勤めているが、経営は赤字続きで、理事である弟のエドワード(被害者1)は美術館の売却を提案してきた。ルースは美術館こそが生きがいで、売却を阻止するためエドワード殺害を企てる。

 ルースは美術館の警備員のミルトン・シェイファー(被害者2)を利用することにする。シェイファーは前科者で勤務態度も劣悪だったが、ルースの姪ジェイニーの不倫相手の弟ということで、ジェイニーの推薦でやむなく雇っている男だった。ルースは、シェイファーが美術品を盗んでいる事実を持ち出し、深夜美術館の展示品を盗み出してくれれば、盗難保険の金が入って美術館が救われるといい、見返りに逃亡のための費用と旅券を渡すと持ち掛ける。

 夜。シェイファーは兄の家の留守番電話に連絡し、途中で銃声を入れて自分が殺されたように偽装して高跳びの準備をする。そのあと美術館に忍び込み展示品を盗み始めるが、そこにやって来たルースに射殺される。同じころ、エドワードも美術館にいて美術品の目録を作っていたが、銃声を聞きつけて駆け付けたところ、彼もまたルースに撃ち殺される。



●中盤

 コロンボは、シェイファーの兄から留守電の内容を聞かされ、とりあえずシェイファーを探し始める。すぐに美術館でシェイファーとエドワードの死体が見つかるが、状況としては盗みに入ったシェイファーとそれを発見したエドワードが相打ちになった様に見えた。しかしコロンボはシェイファーが新品の服や靴を身につけ散髪したばかり、と、すぐに旅行にでも行きそうな姿で盗みに入ったことが気にかかる。

 コロンボは、犯行現場の電気が点いていなかったため、シェイファーとエドワード以外の第三者が電気を消して立ち去った事を見抜く。

 コロンボはシェイファーがカリブ海に旅行に行くつもりだった事を突き止めるが、シェイファーの死体は現金も旅券も持っておらず、旅行にしては不自然だった。どうやら第三者の依頼で盗みを行い、報酬を受け取るはずだったように思われた。

 ルースは、コロンボに、二週間前に美術館の展示品の一つが盗まれていたという話をでっち上げ、エドワードが犯人を知っていたらしいというウソを並べ立てる。その後、姉フィリスの娘ジェイニーの部屋に美術品を隠す。警察は家宅捜索を行ってすぐにジェイニーの部屋から問題の美術品を見つけ出し、ジェイニーを殺人容疑で逮捕する。



●終盤

 コロンボはジェイニーが犯人とは考えておらず、釈放して自宅に送り届ける。そして故エドワードがテープに吹き込んで作っていた美術品の目録を再生する。目録の中には「黄金のバックル」が記録されていたが、それこそジェイニーの部屋で見つかった、二週間前に盗まれたはすの品だった。つまり犯行当夜もバックルは美術館にあり、ルースがコロンボに語った説明は全て嘘となる。それを指摘されたルースはあっさり犯行を認め、コロンボエスコートで屋敷を出ていく。


監督:ロバート・ダグラス
脚本:ピーター・S・フィーブルマン(原案:Lawrence Vail ローレンス・ヴァイル)


感想

 評価は○(まずまず)。

 オーソドックスな展開に余韻の残る結末、と、全体的な雰囲気は悪くなかったが、ストーリーの要素が上手く整理されておらず、散漫な印象も与えてしまった惜しい一作だった。


 今回の犯人ルース・リットンは、若い頃に姉に婚約者を奪われ、その後唯一の心のよりどころにしていた美術館も弟に売却されそうになり、そのため売却を阻止するために殺人に走った、という設定で、境遇としては第19話「別れのワイン」の犯人を連想させ、同情の余地が大いにある人物だった。

 そのためか、捜査に来たコロンボと対峙するシーンでも、心理的な対決といった要素は無く、花粉症に苦しむコロンボカミツレカモミール)のお茶を出してくれるなど、友好的な雰囲気に終始しており、犯人とのこういう和やかな関係は悪くなかった。


 しかし、犯行の部分は結構展開が複雑で、警備員のシェイファーを操って犯行計画に組み込むのはちょっと無理が感じられた。特にシェイファーが美術館に忍び込む前に兄に電話をかけ自分が撃たれたように偽装する部分は、留守電だからこそ成立する工作で、もし兄がリアルタイムで電話を取ってしまったら一巻の終わりである。この工作はルースがアリバイを作るためシェイファーに指示した模様だが、この部分など運頼み過ぎである。

 ただし、犯行計画の綱渡り的なところはともかく、コロンボが事件の真相に迫っていく過程はめっぽう面白い。シェイファーが服や靴や時計を新調し綺麗に散髪している事から旅行を予定していたと気が付き、さらに予防注射の跡に気が付いて目的地が海外だと悟り、奇妙なメモが時計のカレンダーを合わせる備忘録だったと思いつき、部屋の電気が消えていたことから第三者の存在を確信する、等々、断片的な状況証拠を元にみるみる真相に近づいていくのは、実に痛快な展開でだった。


 しかし、終盤になると話が変になってくる。コロンボはルースの美術館での殺人を追っていた筈なのに、いつの間にかルースが元婚約者ピーター・ブラントも(カミツレ茶を飲ませて心臓発作を起こさせて)殺したのでは、という話に拡大していき、さらに姪のジェイニーはルースの実の娘かも、という疑惑まで持ち出してくる。シェイファーとエドワード殺しの事件が収束する段階でこんな話を持ち出してこられて、視聴者的には困惑しきりだった。

 さらにコロンボの推測が正しければ、ルースは「実の娘」のジェイニーに殺人の容疑をなすりつけて警察に捕まるように工作したことになり、あまりにも理解しがたい行動で、この辺りで訳が分からなくなってしまった。しかも最終的にはルースはシェイファーとエドワード殺しについては潔く認めたものの、ピーターの死とジェイニーが実の娘かどうか、という点については何も語らないまま立ち去ってしまうのである。

 今回の話は、この「ピーターの死の真相」「ジェイニーの実母は誰か」という点以外にも、「ジェイニーは妻子ある男性と不倫しており、その男性の弟だからシェイファーを雇った」という設定も含めて、本筋に無関係な要素が多すぎ、肝心の事件に集中しずらくなっていた。この辺りについて、もっとシナリオを見直して洗練した内容にしていれば、作品の評価も上がっていたと思うと、実に惜しい感じではあった。


 作品のサブタイトル「OLD FASHIONED MURDER」は、意訳すると「古風な殺人」。作中でルースが古風云々と言われていたところにかけている(筈)。

 本作の原案は「ローレンス・ヴァイル」という人物が担当しているが、実はその正体は「権力の墓穴」や「逆転の構図」などのシナリオを書いたピーター・S・フィッシャーその人で、話の内容がフィッシャーが書いたものから大きく内容を変えられたので別名義を名乗ったとのこと。また、脚本を書いたピーター・S・フィーブルマンは、実は俳優もやっており、本エピソードでは悪徳警備員ミルトン・シェーファーを演じていた。


その他

 放送時間:1時間16分。
 
 

ピーター・フォーク小池朝雄ジョイス・バン・パタン…加藤道子セレステ・ホルム…堀越節子,ジーニー・バーリン…中島葵,ティム・オコナー…加藤和夫,【演出】ロバート・ダグラス,【脚本】ピーター・S・フィーブルマン

 

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