【ドラマ】感想:NHK番組「未解決事件 松本清張と帝銀事件 ディレクターズカット」(2023年2月25日(土)放送)

Nスペ 未解決事件(NHKオンデマンド)

NHKスペシャル 未解決事件 https://www.nhk.or.jp/mikaiketsu/
放送 NHK BSプレミアム

www.nhk.or.jp
【※以下ネタバレ】
 

あらすじ

未解決事件 松本清張帝銀事件 ディレクターズカット
[BSプレミアム] 2023年02月25日 午後9:00 ~ 午後10:30 (90分)


真犯人は誰だ?占領期の未解決事件に挑んだ国民的作家・松本清張の知られざる闘いを初ドラマ化。“戦後最大のミステリー”帝銀事件の真相に迫る。未公開映像を加えた完全版


社会派ミステリー「点と線」や「眼の壁」で人気作家となった松本清張大沢たかお)は、占領期に起きた未解決事件に着目する。白昼の銀行に現れた“謎の男”によって12人が毒殺された「帝銀事件」だ。逮捕された画家・平沢貞通(榎木孝明)は真犯人ではないと睨んだ清張は、文藝春秋編集長の田川博一(要潤)と共に独自に取材を開始。やがて警察が軍関係者を追っていた事実を突き止め、事件の底知れぬ闇へと分け入っていく―。


【出演】大沢たかお要潤井川遥迫田孝也榎木孝明佐野史郎豊原功補,【作】安達奈緒子,【音楽】川井憲次

 
 1957(昭和32)年。人気作家・松本清張は、新作の題材として1948(昭和23)年に発生した「帝銀事件」を選び、文藝春秋の編集長・田川博一と組んで調査を始める。


 帝銀事件とは、帝国銀行の支店に厚生省の人間と称する男が現れ、行員たちに集団赤痢の予防薬と偽って毒物を飲ませて12名を殺害、現金と小切手を盗んで逃走した、という凄惨な事件だった。警察は犯人として画家・平沢貞通を逮捕し、平沢は裁判で無罪を主張するも死刑が確定していた。


 清張は、事件の疑問点として、行員たちが飲まされた毒が青酸カリとされているが、青酸カリは即効性なので事件の状況と合致しないこと、また犯人がピペットを使って毒物を取り分けたが、ピペットは素人に正確に扱えるものではないこと、を上げる。

 さらに清張は、平沢が逮捕される直前まで、警察は薬物の扱いに長けた医療関係者、特に軍人を容疑者と見なしていたことを突き止める。清張は帝銀事件を担当し、退職した元刑事に話を聞き、警察は旧日本軍の「731部隊」の隊員を追っていたものの、突然その線の捜査が打ち切られたことを知る。

 731部隊は、生物兵器の開発のため、戦争中に大陸で人体実験を行っていた特殊部隊だった。しかし終戦時にその証拠は隠滅され、部隊長だった石井四郎は何の咎めも受けていなかった。さらに清張は警察や新聞社がGHQから事件について圧力を受けていたという証言を得る。

 清張は、731部隊の幹部は人体実験の情報を敵だったアメリカに提供することで処罰を免れたと推測する。そして帝銀事件の犯人はおそらく元731部隊の関係者だったが、GHQ731部隊について注目が集まるのを避けるため捜査や報道に圧力をかけ、平沢を犯人に仕立て上げたと考える。

 清張は田川に、調査した結果をノンフィクションとして発表しようと訴えるが、田川は小説として発表するべきだと頑なに拒否する。田川はもしノンフィクションとして発表した場合、清張に危険が及ぶことを危惧していた。結局、清張は調査結果を1959(昭和34)年に「小説 帝銀事件」という形で発表した。


感想

 NHKのこの「未解決事件」シリーズは今まで未見だったのですが、とんでもなく面白かった! 松本清張が古い資料を見つけ出したり、関係者から話を聞いたりしながら秘められた事実を掘り起こし、事件像を次々と明らかにしていく展開は興奮物でした。あと、NHKの実録系ドラマなのに音楽が滅茶苦茶カッコよかったし。

 これは良いドラマでしたね。

おまけ

 文藝春秋編集長・田川役を演じたのは要潤だったのですが、えっ? 要潤てこんなに演技上手かったの? 2001年放送の「仮面ライダーアギト」での棒演技が強烈に印象に残り過ぎて、こんなに自然に台詞を喋れる要潤の姿が信じられない……(笑) あと音楽がやたら「攻殻機動隊」ぽいなぁと思っていたら、まんま攻殻の音楽の人がこの番組でも音楽担当してました(笑)
 
 

https://www.nhk.or.jp/mikaiketsu/
File.09松本清張帝銀事件
未解決事件 松本清張帝銀事件ディレクターズカット
2023年02月25日(土) 午後9時00分~午後10時30分 BSプレミアム BS4K


“戦後最大のミステリー”と言われる占領期の闇・「帝銀事件」。
その謎に挑んだ国民的作家・松本清張の知られざる闘いに迫る。


作:安達奈緒子  音楽:川井憲次
実録ドラマ出演:大沢たかお要潤井川遥迫田孝也山崎銀之丞千葉哲也
桜木梨奈、久保田かずのぶとろサーモン)、広田亮平、井上賢嗣、大橋彰(アキラ100%
榎木孝明佐野史郎豊原功補 ほか


帝銀事件」が起きたのは、連合国軍の占領下にあった1948年。帝国銀行・椎名町支店に厚生省技官を名乗る男が現れ、「近くで集団赤痢が発生したので予防薬を飲んで欲しい」と銀行員らに液体を飲ませ12人を殺害。逮捕され、死刑判決を受けた画家・平沢貞通は、無実を訴え続け、獄中死した。

実は捜査の当初、警察が追っていたのは「軍関係者」。GHQが警察や報道機関に影響力を持っていた当時、松本清張は丹念かつ緻密な取材で、事件の壮大な「闇」に分け入っていく。そして清張の死から30年。NHKの取材班がたどり着いた、知られざる「真実」とは―。



第1部 ドラマ 松本清張と「小説 帝銀事件
松本清張VS.未解決事件
帝銀事件との知られざる闘いをドラマ化


GHQ占領期の〝闇〟に切り込んだノンフィクションの大作「日本の黒い霧」を書いた松本清張。そのきっかけとなったのが帝銀事件だった。逮捕された平沢貞通には、犯人という明確な証拠や動機はなく、無罪を主張し続けるも死刑が確定。
しかし清張は、警察が当初「真犯人は軍関係者」としながら、捜査線とはかけ離れた平沢に向かっていったことを強く疑問視する―。


清張の死から30年。裁判や捜査資料、関係者を徹底調査して、真相を追った清張の“知られざる足跡”を独自取材し、その闘いをドラマ化する。


<あらすじ> 1957年、「点と線」や「眼の壁」など次々とヒット作を手がけ、日本中に名を轟かせ始めていた松本清張大沢たかお)。次なる題材として注目していたのが「帝銀事件」だった。
逮捕された画家・平沢貞通(榎木孝明)は真犯人ではないと疑いを抱いた清張は、文藝春秋編集長の田川博一(要潤)と共に独自に取材を開始。


やがて警察が軍関係者を追っていた事実を突き止め、底知れぬ闇へと分け入っていく。
事件の核心に迫ろうとする中で清張はノンフィクションの執筆を決意するが、そこに巨大な「壁」が立ちはだかる―。

 

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=36907
帝銀事件」に迫る松本清張 大沢たかお主演でドラマに!
NHKスペシャル 未解決事件 松本清張帝銀事件


第1部ドラマ 事件と清張の闘い 12月29日(木)[総合]後9:00~10:30
【作】安達奈緒子 【音楽】川井憲次
【出演】大沢たかお要潤、井川 遥、迫田孝也榎木孝明佐野史郎豊原功補 ほか

第2部 74年目の“真相”(ドキュメンタリー) 12月30日(金)[総合]後9:00~10:00


日本中に衝撃を与えた未解決事件の謎をドラマとドキュメンタリーで検証・追及するNHKスペシャル「シリーズ 未解決事件」の第9弾。今回は「帝銀事件」とその謎に挑んだ作家・松本清張の知られざる闘いに光を当てます。

日本がGHQの占領下にあった1948年に、帝国銀行・椎名町支店で行員ら12人が毒殺された「帝銀事件」。犯人は逮捕されたものの、いまだ多くの謎が残されており“戦後最大のミステリー”とも言われています。


真実がねじ伏せられたのではないか──。警察の捜査を疑問視した清張は、真実を暴こうと取材を重ねるうちに、事件を覆う巨大な“闇”へと分け入っていきました。第1部では、清張の事件との闘いをドラマ化。これまで描かれなかった実像と事件の謎に迫ります。清張役の大沢たかおさんと、演出の梶原登城ディレクターに役への思いや物語の見どころを聞きました。



ドラマのあらすじ
1957年、作家として勢いに乗っていた松本清張は、作品の題材として「帝銀事件」に着目。逮捕された画家・平沢貞通(榎木孝明)のほかに真犯人がいるのではないかと疑念を抱く。


文藝春秋の編集長・田川博一(要潤)と独自取材に乗り出した清張は、ある事実を突き止めノンフィクションを執筆しようとするが、巨大な「壁」が立ちはだかり……。



松本清張 役・大沢たかお インタビュー

「事件の謎を清張先生自身の視点で
解き明かしていく描き方が実に斬新だなと」

父が松本清張先生のファンで、僕自身も作品を読んだり原作ドラマを見たりする機会が多かったので、いつか作品に出演する機会があればと思っていたんです。

でも、まさか清張先生ご本人を演じさせていただけるとは思ってもみなかったので、最初にお話をいただいたときは驚きました。外見は似ていないし、ましてや清張先生を描く初の映像作品。果たして自分に役が務まるのだろうかと思いながら企画書を読んだのですが、企画のすばらしさに思わず胸が熱くなりました。

帝銀事件については、父から話を聞いたことがあったのでおおよその概要は知っていたものの、詳しい背景までは知りませんでした。清張先生がどんな“闇”を暴こうとしていたのか知りたいという思いも湧きましたし、その謎を清張先生自身の視点で解き明かしていく描き方が実に斬新だなと。これはぜひ挑戦したいと思い、参加させていただいたんです。


若き日の清張をほうふつとさせる大沢さんのビジュアルにも注目。「美術をはじめ、ヘアメイク、衣装、メガネなどの小物にいたるまで、スタッフの皆さんのなみなみならぬこだわりと作品へ熱量を感じて、ありがたかったですね。初めて映像を見たとき、自分だと思わなかったくらいです」と大沢さん。



清張が真実を追い続けた原動力とは?
自問自答しながら演じた日々


清張先生の作品は、罪を犯した人間の善悪よりも、そこに至った背景やその人物の生きざまがきめ細やかに描かれている印象が強く、きっとご自身も人間愛にあふれた人だったんだろうなと想像していました。ただ、実際はどんな方だったのか分からないところからスタートしたので、事前に史料を調べたりお話を伺ったりしてから現場に入りましたが、撮影しながら知ることのほうが多かったですね。

清張先生は、帝銀事件のほかにもGHQの占領下で起きた数々の未解決事件を徹底的に取材して執筆されましたが、その熱量が尋常ではないんです。“闇”の正体に近づきかけては何度も行く手を阻まれながら、絶対に書くことを諦めなかった。その原動力は何だったのか? 何に対してそこまで怒っていたのか? 僕がいちばん知りたかったのはそこで。いつも答えを探しながら演じていたので、撮影が終わるとぐったりするくらいエネルギーを使いました。


平沢犯人説に異を唱える清張は、被害者の夫で新聞記者の竹内(迫田孝也)にも協力を求めるが、竹内の口は重く……。


今回の作品を通して、清張先生からたくさんのメッセージやヒントをいただいた気がしているんです。特に強く感じたのは、松本清張という人が正しいことを正しいと言える社会の在り方を強く願っていたこと。そのメッセージは、今を生きる我々にも投げかけられているのではないかということです。

時代背景は違いますが、現代でも正しいことをストレートに言いづらい風潮がありますよね。僕自身、そういう世の中ってどうなんだろうと疑問を抱くこともあったので、清張先生の姿に自分の思いも重ねて表現しました。

「未解決事件」ですから答えは1つではありませんし、僕も、結局明確に答えを見いだせなかった部分があります。その謎が、翌日放送される第2部のドキュメンタリーでどのように検証されるのか、それを皆さんがどう解釈されるのか気になるところです。ぜひ、答え合わせをしながらご覧いただけたらと思います。




演出・梶原登城ディレクターより メッセージ
1959年、清張は帝銀事件を題材にしたフィクション『小説帝銀事件』を発表した翌年、GHQの占領下で起きた重大事件を考察したノンフィクション『日本の黒い霧』でも帝銀事件を検証しています。


なぜ帝銀事件なのか──。その背景を取材してみると、真相究明にかける清張の執念に改めて驚かされました。「なぜ」の部分を清張自身の視点で掘り下げることで、事件の再現だけでなく重厚な人間ドラマとして見ごたえある作品になるんじゃないかと思い、安達奈緒子さんに脚本をお願いしてドラマ化しました。


帝銀事件をノンフィクションで書くか小説として書くかを巡って激論を交わす清張と田川。
「清張がなぜ、小説のタイトルにわざわざ「小説」とつけて、『小説帝銀事件』としたのか疑問だったのですが、清張を知る方を取材する中で奇跡的に証言を得られたんです。このシーンは、そのエピソードから生まれました」(梶原D)。


ただ、清張の視点で事件を説明するとなると、彼は事件現場には立ち会っていないので映像表現に工夫が必要でした。清張の脳内イメージ、実際のニュース映像、現在軸のストーリーを違和感なく融合させ、事件当時の様子を説明的ではなくエモーショナルに描写するにはどうすれば効果的なのか。スタッフと話し合いながら試行錯誤を重ね、脳内イメージの部分は特に意識して映像を作りました。

また、事実をベースにしたドラマなので、フィクションを超えていけるような生々しさを大切にしたくて、極力テストをせず一発勝負で撮影しています。それぞれのキャストがこん身の芝居をしてくださっていますので、なんといっても俳優陣の熱演がいちばんの見どころです。


登場人物の“目”をクローズアップするカメラワークも印象的。言葉にせずとも、それぞれの心情がまざまざと伝わってくる。


どこか閉塞感漂うこの時代だからこそ、きっと皆さんの心に響くメッセージがあると思うのです。ミステリーならではの緊張感をご堪能いただきつつ、松本清張の魂の叫びから、何か希望の光を感じていただけたら幸いです。

 

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=36988
戦後最大のミステリー「帝銀事件」の新たな真実に迫る衝撃のドキュメンタリー
NHKスペシャル 未解決事件 松本清張帝銀事件

第1部ドラマ 事件と清張の闘い 12月29日(木)[総合]後9:00~10:30

【作】安達奈緒子 【音楽】川井憲次
【出演】大沢たかお要潤、井川 遥、迫田孝也榎木孝明佐野史郎豊原功補 ほか

第2部 74年目の“真相”(ドキュメンタリー) 12月30日(金)[総合]後9:00~10:00


戦後最大のミステリーと言われる占領期の闇「帝銀事件」と、その謎に挑んだ作家・松本清張の知られざる闘いに迫るNHKペシャル「シリーズ 未解決事件」の第9弾。

事件の真相究明に奔走する清張の姿を描いた第1部のドラマ(→第1部の紹介記事は)に続き、第2部のドキュメンタリーでは、6年におよぶ取材と検証で、事件の「謎」に挑みます。

清張の没後30年にあたる2022年。取材班は、彼が暴こうとした“闇”にどこまでたどりついたのか──。取材を担当した中川雄一朗ディレクターと企画の立ち上げからドラマ・ドキュメンタリー双方の制作を担当した新名洋介ディレクターのコメントを交え、第2部の見どころを紹介します。



帝銀事件 とは
事件DATA
発生日時:1948(昭和23)年1月26日
事件現場:帝国銀行椎名町支店(東京・豊島区)
事件の概要:厚生省技官を名乗る男が「近くで集団赤痢が発生したので予防薬を飲んでほしい」と言って行員らに液体を飲ませ、12人を殺害。男は、現金と小切手を盗んで立ち去った。
事件後:同年8月21日、画家・平沢貞通を逮捕。平沢は裁判で無罪を主張するも死刑が確定。1987(昭和62)年に獄中死するまで無実を訴え続けた。


Point1 真犯人はほかにいる!? “平沢=犯人”の矛盾点を検証
帝銀事件の犯人とされている平沢貞通。平沢本人が獄中死した現在も、支援者や弁護団によって再審請求が続いている。
犯人みずからが手本を見せて毒物を飲ませ殺害するという巧妙かつ凄惨せいさんな手口で日本中を揺るがしたこの事件には、いまだ解明されていない多くの謎が残されています。
その謎の1つが、犯人とされた平沢貞通の自白。当初犯行を否認していた平沢は、一転して犯行を自供するも裁判では再び無罪を主張しました。一体なぜ、平沢は供述を二転三転させたのでしょうか? 供述記録を当時は不可能だった技術で徹底解析し、その謎に迫ります。



中川Dの取材メモ
今回、私たちが注目した点は大きく分けて2つ。1つは本当に平沢が犯人なのかどうかという点です。
平沢は、明確な物的証拠がないまま、取り調べでの自白が決め手となり有罪とされました。そこには多くの疑問や矛盾が生じるのですが、取材を進めると、その疑問をより深める資料が新たに見つかったんです。

さらに、74年経った今だからこそ発掘された貴重な資料や音声、映像を手がかりに、犯行に使用された毒物の正体や疑惑の人物などにもフォーカスします。



Point2 GHQの関与はあったのか? 事件の背後に戦争の影
帝銀事件を検証するうえで、もう1つ注目しなければならない大事なポイントは、事件発生当時の1948年、日本が連合国軍の占領下にあり、GHQ連合国軍最高司令官総司令部)が警察や報道機関に絶大な影響力を持っていた時代だったという点です。

当初、警察は軍関係者による犯行と見て捜査していましたが、突如、捜査方針を転換し平沢=犯人へとかじを切りました。この点に疑問を感じ、GHQの関与をいち早く唱えたのが松本清張でした。清張が追っていた警察やGHQの動向に着目しながら、戦後の日本を取り巻く当時の社会情勢に光を当てます。



中川Dの取材メモ
これまでの「シリーズ 未解決事件」の中で帝銀事件は最も昔の事件なので、当時の捜査状況を知る方が少なくなってきていますし、どんな事件だったのか知らない方のほうが多いかもしれません。

そんな中、今も平沢の無念を晴らそうと裁判のやり直しを求めている人々がいます。どう伝えたらこの事件の本質を多くの人に知ってもらえるだろうと考えながら取材を重ねてきました。

今回の取材ですべての真相が明らかになったわけでは、ありません。ただ、日本の戦後社会の起点となる時代に起きたこの事件を検証することで、戦後の日本の闇や、矛盾、問題点が浮き彫りになったように感じます。それは現代にも通ずる部分だと思うので、遠い時代の話ではなく身近な問題として感じながらご覧いただければ幸いです。



新名洋介 ディレクター メッセージ
2016年ごろ、最初に企画を提案したときは、帝銀事件を含め日本の占領期に起きたいくつかの未解決事件に焦点を当てようと思っていたんです。しかしその後、ドラマの演出を担当した梶原登城ディレクターと話していたときに、松本清張自身の生きざまと彼の視点で見つめた帝銀事件をテーマにしたらどうだろうという話になって。没後30年となる2022年の放送に向け制作が始動し、松本家の皆さんや文藝春秋の関係者をはじめ、清張先生をよく知る方々のご協力のもと細部まで取材させていただきました。


未解決事件には未解決のままになっている理由が必ずあるはずなので、今回も何が障壁になっていたのか、“未解決であること”が今の時代にどんな影を落としているのか、という部分にこだわって取材を積み重ねてきました。また、清張作品は、何十年も前に書かれたものなのに色あせることなく現代性を感じさせるテーマが大きな魅力だと思うので、ドラマもドキュメンタリーも現代性を意識して制作しています。


ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、戦争や国の在り方などさまざまな問題について考えさせられる機会の多かった2022年は、まさに清張先生が問い続けてきたテーマとリンクする1年だったのではないでしょうか。年の瀬、この番組が激動の1年を振り返るきっかけになればと願っています。


NHKスペシャル 未解決事件 松本清張帝銀事件
【放送予定】
第1部ドラマ 事件と清張の闘い 12月29日(木)[総合]後9:00~10:30
第2部 74年目の“真相”(ドキュメンタリー) 12月30日(金)[総合]後9:00~10:00

 
 
小説帝銀事件 新装版 (角川文庫)