感想:映画「マン・オブ・スティール」(2013年:アメリカ)


マン・オブ・スティール [Blu-ray]

金曜ロードシネマクラブ http://www.ntv.co.jp/kinro/index.html
放送 日本テレビ 2016年3月25日(金)

【※以下ネタバレ】


2016.3.25 21:20〜23:14
マン・オブ・スティール
愛する地球の人々と生まれた故郷の星…
大切なものを守るため スーパーマンの戦いが始まる!!

あらすじ

 宇宙の彼方のクリプトン星は、資源を掘りつくし惑星は崩壊の危機に陥っていた。軍人ゾッド将軍はクーデターを起こし、友人の科学者ジョー=エルに協力を求めるが、ジョー=エルは協力を拒否し、国の財産「コデックス」を生まれたばかりの息子と共に宇宙の彼方、地球へと送った。ゾッド将軍はジョー=エルを殺すものの、クーデターは失敗に終り、部下共々追放刑に処せられる。その後、時を待たずしてクリプトン星は崩壊してしまった。

 地球ではクラーク・ケントという少年が、自分の常人とは異なる力をもてあまして苦悩していた。そんなある日、クラークは南極で異星文明の宇宙船を見つけ、そこで自分が「カル=エル」という宇宙人であることや、故郷クリプトンの運命を知った。直後ゾッド将軍の宇宙船が地球に現われ、クラークの引渡しを要求する。彼らはクリプトン星の爆発で追放刑から逃れ、宇宙を旅してきたのだった。クラークの体の中には、コデックスという、クリプトン星の種族を復活させる事の出来るデータが眠っていた。ゾッド将軍たちはそれを使って地球にクリプトン星を再興しようとするが、バトルの末にクラークはゾッド一味を全滅させた。最後、クラークは新聞社デイリープラネットに入社した。


感想

 評価は△。(以下結構キツイことを書いてます)


 タイトルからは分かりにくいが、要するに「スーパーマン」の映画の新作である。制作がクリストファー・ノーランだが、この人が関わったバットマン映画も「ダークナイト」とか「ダークナイト ライジング」とかいうタイトルで「バットマン」という言葉をタイトルに使っていない。●●マンという単語をタイトルに使うのが恥ずかしいといった妙なオシャレ感覚から生まれたタイトルなのだろうか。


 宇宙の彼方、崩壊寸前のクリプトン星。科学者ジョー=エルは幼い息子カル=エルを地球に送った。地球で赤子はケント夫妻に拾われ、クラーク・ケントとして成長し……


 という王道スーパーマン・ストーリーで、1978年のクリストファー・リーヴ主演の映画「スーパーマン」と対を成す内容だが、1978年版が完璧なまでの娯楽ヒーロー映画だったのに対し、こちらは薄暗い雰囲気の、スーパーマンの話にエイリアン侵略映画を無理やり混ぜ合わさせたような内容となっており、ヒーロー物の面白さは皆無のとんだ期待はずれ映画だった。


 冒頭のクリプトン星のエピソードで、異様にゴタゴタした衣装のキャラクターによる、ムダにCGを使いまくった見づらい画面での芝居が展開された時点で、かなり嫌な予感がしたのだが、その予感は見事に的中してしまうことに。

 その後、すぐに地球でのクラーク・ケントの物語に移行するのだが、クラークは自分の力をもてあまして苦しむばかりで、ヒーローに期待するような明るさはまるで無く、話に付き合っていると憂鬱な気分になってきてしまって辛い事になってしまった。リーヴ映画が「クラークと列車の駆けっこ」とか明るいストーリーでまとめていたのとは好対照である。ところでクラークの父親ジョナサン役は、なんと懐かしのケビン・コスナーだった。アカデミー監督賞受賞で一時期天下を取ったのに、1995年の「ウォーターワールド」の大失敗でその後B級映画にしか出なくなった、人生のアップダウンの激しい俳優だが、一体どういう縁でこの大作に起用されたのか興味有るところである(少なくともジョナサン役がケビン・コスナーでないといけない理由は一つもなかった)。

 そうこうしているとロイス・レインが登場するが、これがまたクラーク同様に感情移入を拒否するキャラで、初対面の軍人に向かって小馬鹿にするような台詞をはくファーストシーンがいきなり酷いが、宇宙船の中で警備ロボットが近づいてくるのにボケッとカメラを構えていて、その挙句に刺されて怪我をするとか、性格だけでは無く頭の中身もかなり問題がありそうなキャラである。

 その後、おなじみのスーパーマン服を手に入れたクラークとゾッド将軍一派の戦いが始まるが、ジョー=エルがクラークにコデックスを仕込んでいたという事は、ゾッド将軍の指摘したとおり、ジョー=エルは地球人類を滅ぼしてクリプトン星再生を目論んでいたとしか思えず、この時点で誰が正義なのだかわからなくなってくる。そんな重い気持ちのまま、クラーク対ゾッド将軍一派のバトルが延々と続けられても、当然爽快感を感じられるわけもなく……、CG技術が発達したのでフルに使って派手な画面にしました、という事は伝わってきたが、面白いわけでもなかった。

 さらに終盤の、ゾッド一派がテラフォーミングを敢行しはじめ、人類はこのまま滅亡か?みたいな雰囲気になって、スーパーマンが触手と戦いだすとかいうあたりになると、もうスーパーマン映画なのだか「スカイライン -征服-」みたいなエイリアン侵略系破滅映画を見ているのだか良くわからなくなってきた。


 色々有った挙句、スーパーマンは勝利して、とってつけたようにデイリープラネットに入社するのだが……、正直、私としてはありとあらゆる面で1978年の「スーパーマン」の方が、この映画に勝っていると思う……、そういえば2006年の「スーパーマン・リターンズ」もやはりガッカリ映画だったし、21世紀のスーパーマン映画はどうしてこんなことになってしまうのだろうか……



出演
クラーク・ケント/カル=エル>ヘンリー・カヴィル星野貴紀
ロイス・レイン> エイミー・アダムス中村千絵
<ゾッド将軍> マイケル・シャノン(広瀬彰勇)
ジョナサン・ケント> ケビン・コスナー津嘉山正種
マーサ・ケント> ダイアン・レイン(塩田朋子)
ペリー・ホワイト> ローレンス・フィッシュバーン石塚運昇
<ファオラ=ウル> アンチュ・トラウェ田中敦子
<ララ・ロー=ヴァン> アイェレット・ゾラー(泉裕子)
<ネイサン・ハーディ大佐> クリストファー・メローニ(てらそま まさき)
ジョー=エル> ラッセル・クロウ井上和彦


スタッフ
<監督>ザック・スナイダー
<製作/原案>クリストファー・ノーラン
<脚本>デビッド・S・ゴイヤー



世界中の誰もが知っていて“ヒーロー”の代名詞としての役割を担ってきた「スーパーマン」。これまで何度も映像化されてきた物語のシリーズ最新作が地上波初放送だ。描かれるのは、誰もが知るヒーロー“スーパーマン”誕生の秘密。地球から遠く離れたクリプトン星で生まれた子どもは、ある理由で地球に送られる。クラークと名付けられたその子どもは、自らが持つ特別な力に悩み苦しみながらも立派に成長、“守るべきもの”を見つけていく…。鍵を握るのは、クラークの血のつながった父と、育ての父。命をかけてクラークを導いていく2人の父と息子の絆を描く人間ドラマに胸が熱くなる。もちろん、破格のスケールで描かれるアクションシーンも必見。「ダークナイト」「インターステラー」を手掛けたクリストファー・ノーランが製作を担当、今作でも誰も見たことのない迫力の映像を作り出した。さらに!!今作は、放送日と同日に劇場公開される新作「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」につながるストーリーとなっている。「マン・オブ・スティール」を観て劇場に行けば話題作をより楽しめる!「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」公開当日、スーパーマン誕生の物語を目撃せよ!

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