感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第43話(シーズン2 第15話)「焦土作戦」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン2(29~53話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ
perry-r.hatenablog.com
 

第43話 焦土作戦 The Photographer (シーズン2・第15話)

 

あらすじ

一流の写真家として活躍する、諜報機関の手先デビッド。彼が受信する暗号を解読すればペスト菌を持つスパイたちの所在が分かるのだが・・・。


一流写真家として活躍するデビッドは、ここ1カ月で150人という大量のスパイを送り込んだ諜報機関の一員で、本国との暗号の送受信を担当している。その組織のスパイが捕まり、アメリカに肺ペスト菌をばらまこうという計画が発覚、計画阻止に暗号を解く鍵が必須となる。シナモン(バーバラ・ベイン)がモデルとなりデビッドに接近、“焦土作戦”で彼を騙し、細菌テロを阻止できるか!

※DVD版のタイトルは「焼土作戦」。


【今回の指令】
 某国はここ数か月で150人ものスパイをアメリカに送りこんできているが、そのスパイたちが72時間でアメリカの人口を半減させるほどの肺ペスト菌を持ち込んでいることが判明した。そして写真家デヴィッド・レディングも某国のスパイであり、彼の暗号通信を解読すればスパイたちの所在がつかめるはずだが、未だ解読に至っていない。IMFは暗号解読のため、レディングが使用している暗号の「鍵」を入手しなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー、ウィリー
 ゲスト:無し


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 IMFは、レディングにシナモンをモデルとして撮影する仕事を受けさせる。シナモンは、「かつてモデルであり、今は諜報機関に勤務している美人生化学者」という設定で、夫役のフェルプスと共に撮影のためレディングの家を訪れる。シナモンは撮影の際、雰囲気作りだと言ってある化学式をセットの白板に書き付けるが、あとから慌てて化学式は機密情報なので写真を破棄してほしいと頼む。一方フェルプスは、レディングの家の中の銃の弾を全て空砲にすり替える。

 レディングは写真を破棄したふりをして現像し、化学式が肺ペストの培養に関係するものだと知る。レディングはシナモンがまさに自分たちの事を調べている相手だと察し、シナモンとフェルプスを自宅に呼びつけ、銃を突き付けて、知っていることを話せと脅迫する。

 レディングは核開発の研究者だった父親が誰かにはめられ、スパイ容疑で処刑されてしまったので、その恨みで某国に協力していると明かす。そして亡き父の親友アレックスに育てられ、二人で某国のスパイとして働いているのだった。シナモンは某国の肺ペスト持ち込みはアメリカへの攻撃と同じなので、アメリカは某国に先制核攻撃を行う予定だと話してしまい、直後夫ともに射殺される(実際は空砲なので死んだふり)。

 レディングたちは慌てて、某国が核攻撃される前にニューヨークに核ミサイルを撃ち込めば、アメリカは混乱するので時間が稼げる、と判断し、その旨某国に連絡する。しかし通信はバーニーが妨害電波で遮断していた。直後、諜報機関の人間に扮したローランとウィリーがやってきて二人を逮捕するが、レディングは反撃してウィリーを射殺し、ローランを地下シェルターに連行する。

 レディングたちが地下シェルターにこもっている間に、地上ではバーニーたちが偽ラジオ放送で核攻撃が近いと伝え、さらに爆薬で振動を起こし、核攻撃を偽装する。レディングたちはシェルターの潜望鏡で周囲をうかがうと、その周りには廃墟のジオラマが置かれていて、それを見てレディングたちは核攻撃で周囲は焼け野原になったと信じ込む。さらにIMFは偽の暗号通信を送り、レディングたちは解読を始めるが、その解読の様子をローランが全て記憶していた。そしてシェルターを飛び出し、フェルプスたちに解読方法を報告する。

 レディングはローランを追って外に出るが、核攻撃など無かったことを知り呆然とする。フェルプスはレディングに、父親をはめたのは誰かよく考えてみろと言い、レディングは自称父の親友のアレックスを不信の目で見るシーンで〆。


監督: リー・H・カッツィン
脚本: ウィリアム・リード・ウッドフィールド&アラン・バルター


感想

 評価は○。

 IMFチームが核戦争勃発という突拍子もない大芝居でターゲットを騙す話で、中盤まではかなり退屈だったが、終盤の大芝居のシーンは痛快の一言だった。


 今回のエピソードは、中盤までは、IMFチームは、シナモンとフェルプスがモデルとその夫を演じるものの、やったことは相手に情報を与えただけで、最後には射殺されてしまう(実は空砲+血のりで殺されたふり)。その間、他のメンバーといえば、バーニーは台詞もなく陰でちょこちょこと作業しているだけ、ローランとウイリーに至っては出番が全く無し、という状況で、チームのアクティブな活躍が全く無いので、退屈で仕方なく、今回は外れ話かと思わせるのに十分だった。

 ところが残り15分くらいの時点になると、シェルターに立てこもっているレディングたちに対してIMFの計略が炸裂し、ウィリーとバーニーが吹き込んだ偽のラジオ放送で核ミサイル襲来と錯覚させ、庭に仕掛けた小型爆弾を爆発させて振動を起こし核爆発を偽装する、というあたりから俄然面白くなってくる。

 その後、シナモンが大型のヒーターを手にもってシェルターの空気取り入れ口の近くを温め、シェルター内のレディングが「核爆発の熱風が入ってきた……」とか騙されているシーンなど、もうおかしくて仕方なかった。

 そしてとどめで、レディングがシェルター内から潜望鏡を上げて周囲を見渡してみると、辺りは地面が焼け焦げ、木は灰になってくすぶり、山の向こうは真っ赤に燃えているので、あまりの惨状に言葉を無くして黙り込んでしまう。しかし、種明かしをすると、それは潜望鏡の周りをぐるりとパネルで囲ってそこには燃えている山の絵が描いてあるだけ、さらに地べたに作り物の焼け焦げ光景のジオラマを置いているだけ、という結構ちゃちな仕掛けで、それにあっさり騙されているレディングたちの姿はもう傑作の一言だった。


 最後は地上に飛び出してきたレディングたちが、周囲が全く正常なことに気が付いて唖然とするシーンも愉快でよかったが、さらにブリッグスがレディングに「誰が父親をはめたのかゆっくり考えてみろ」と言って、レディングがアレックスをじーっと見つめて、アレックスがうろたえるシーンなど、なかなかいい感じの締めくくり方だった。いつもはIMFチームが車で逃げ出すシーンが定番だが、たまにはこういう終わり方も悪くない。


 ちなみに暗号の解読方法は、日付と電話帳の併用で、以下の通り。

1)まず紙に暗号解読の変換表を作る。「PHOTOGRAPHERBCDEF...(中略)...XYZ」と書き付け、各文字に数字を割り振る。(G=5, R=6, A=7, E=8, B=9,..., Z=26、といった具合。最初の方は画面に映らず)


2)当日の日付は1967年8月23日なので、電話帳の「823」ページを見る


3)暗号の一文字目は「J」。電話帳の一番目の番号は「279-1098」なので、先頭の数字は「2」。変換表でJの二つ前の文字は「F」。つまり通信内容は「F」。


4)暗号の二文字目は「L」。電話帳の二番目の番号は「758-8598」なので、先頭の数字は「7」。変換表のLの七つ前は「B」。つまり通信内容は「B」。

といった具合。まあ、第二次大戦中のドイツ軍ですら機械式の暗号変換を行っていたことを思うと、1967年にこんなアナログな暗号変換というのは現実にはあり得なかろうが、ドラマのギミックとしてはなかなか面白かった。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で廃屋風の建物に乗り付け、二階に上ってあるボタンを押す。すると壁が上にずれて、オープンリール式テープレコーダーと、張り付けてある大きめの封筒が現れる。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこの録音は自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。その男はデヴィッド・レディングといって、我が国一流の写真家であるが、またここ数カ月の間に合衆国へ150人という大量のスパイを送り込んだ某諜報機関の手先でもある。昨日そのスパイの一人が捕まったが、72時間以内にわが国の人口を半減するほどの恐るべき肺ペスト菌を彼らが持ち込んでいるという以外、何の情報も掴めない。レディングが発信し受信する暗号を解読できれば、スパイたちの所在を突き止めることもできるが、現在のところ、まだ解読するまでに至っていないのだ。

 そこで君の使命だが、大事に至らぬうちに一刻も早く暗号解読の鍵を手に入れることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音は自動的に消滅する。成功を祈る。


シーズン2(29~53話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

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